🇯🇵 X JAPAN (エックスジャパン)
レビュー作品数: 6
スタジオ盤
1988年 1stアルバム ※X名義
X JAPANは日本のヘヴィメタルバンドで、ヴィジュアル系の先駆けとなりました。1992年にX JAPANに改名するまで、結成~デビュー後しばらくはX名義で活動していました。
幼稚園からの幼なじみであるYOSHIKI(Dr/Pf)、TOSHI(Vo)を中心に、1982年に千葉県の安房高校在学中にXを結成。メンバー変更を経てTAIJI(B)、HIDE(Gt)、PATA(Gt)が加わり、メジャーデビュー時のラインナップが揃います。暴れたり過激なパフォーマンスで多くのライブハウスから出禁をくらうほどの悪評でしたが、テレビ出演をキッカケに知名度が広がり、インディーズとなる本作『Vanishing Vision』は初回プレス1万枚を完売。日本のインディーズ作品では史上初となるメジャーチャートにランクインを果たすことになります。全体的に荒々しいですが、ヘヴィでカッコ良い楽曲に溢れています。
アルバムはインスト曲「DEAR LOSER」で開幕。ダークサイケな雰囲気で怪しげですが、途中からメタリックなバンド演奏が加わり、次曲への高揚感を煽ります。YOSHIKIのドラムがど迫力。そして始まる「VANISHING LOVE」はスラッシュメタル曲。ツーバスをはじめ超高速で畳みかける強烈なエネルギーにぶっ飛ばされますが、暴力的な演奏とは対照的に、TOSHIがシャウト気味に歌うメロディは結構メロディアスなんですよね。そして間奏ではHIDEとPATAがハモる凄まじいギターソロ。全編を通してとてもカッコ良い名曲です。「PHANTOM OF GUILT」は妖艶でダーティな雰囲気の1曲。若干間延びしている感はありますが、リズミカルな演奏はノリが良いです。「SADISTIC DESIRE」は開幕から強烈なドラミングと絶叫をぶちかます、ハードなロックンロール。ギターリフは這うようにヘヴィですが、シャウト気味の歌がかなり高音なので良い対比になっています。「GIVE ME THE PLEASURE」はTAIJIのファンキーなベースがとにかく強烈。英語詞の朗読はあるものの実質インストゥルメンタルで、最初はメタリックですが途中フュージョンのような感じの演奏を展開します。そして名曲「I’LL KILL YOU」。音質の悪さが荒々しさを引き立てるスラッシュメタルです。ツーバスに鋭利なギターリフが超高速で畳み掛けてきます。速すぎて焦燥感を煽りまくるので、非常にスリリング。ハイテンションで叫ぶ「I’ll kill you!」は一緒に連呼したくなりますね。笑 続く「ALIVE」は一気に雰囲気を変え、YOSHIKIのピアノソロから始まるバラードです。イントロはベートーヴェンの「月光」からの引用。TOSHIのかすれ声が哀愁を引き立てるメロディアスな歌は、Xの楽曲群でもトップクラスの高音キーを誇ります。途中のギターオーケストレーションも美しいですね。後半は加速したりテンポを落として歌を引き立てたりと、強い哀愁漂うドラマチックな名曲です。そして「KURENAI」はXの代表曲ですね。なおここでは全編英語詞ですが、TOSHIの英語力の問題があったか、次作で日本語詞の有名な「紅」として再収録されることになります。イントロから美しいアルペジオを聴かせ、そして一気に加速。スリリングなメタル曲へと変貌します。個人的には次作「紅」の方が好みですが、ドラムについては本作に軍配が上がるかも。「UN-FINISHED…」は美しいピアノを中心にメロディアスな歌をしっとりと聴かせます。ですがラストでばっさり切られて消化不良な終わりとなる、タイトルどおり未完成な楽曲。次作『BLUE BLOOD』で「UNFINISHED」としてリメイクすることになります。
音質は悪いですが、強烈な暴力性と美しい旋律が同居し、Xの核となる部分が詰まっています。これを洗練させて大傑作『BLUE BLOOD』を生み出すことになります。
1989年 2ndアルバム ※X名義
YOSHIKI(Dr/Pf)、TOSHI(Vo)、HIDE(Gt)、PATA(Gt)、TAIJI(B)のラインナップで制作された、Xのメジャーデビュー作品です。フルオーケストラを導入した作品で、本作からは数多くの代表曲が生まれました。ミリオンヒットがまだ珍しい時代、同年だけで60万枚以上を売り上げるという異例の大ヒットとなりました。極めて高い完成度を誇り、海外のヘヴィメタル名盤と比較しても全く見劣りしない大傑作です。本作の大ヒットによりメディア露出も増えて絶好調なXでしたが、そんな矢先ツアー中にYOSHIKIが倒れ、YOSHIKIの抱える持病が本作以降の制作に影響することになります。
オープニング曲はインストゥルメンタル「PROLOGUE (〜WORLD ANTHEM)」。フランク・マリノ&マホガニーラッシュというバンドのカバーです。壮大な雰囲気で、メロディアスなギターが美しい。そのまま途切れず続く「BLUE BLOOD」は暴力的なスラッシュメタルで、前作の「Vanishing Love」を洗練させたような1曲。ザクザクと鋭利なギターリフと銃弾の雨のように叩きつけるツーバスがあまりに強烈で、そして速い。演奏は煽り立てるように攻撃的ですが、TOSHIの歌やHIDEとPATAのハモるギターはメロディアスなんですよね。「WEEK END」はヘヴィで哀愁に満ちています。YOSHIKIのドラムが力強くリズムを刻み、TOSHIの歌はかすれ声もあってより切なく哀愁を引き立てます。メランコリックな歌が魅力の1曲ですが、テクニックで魅せる間奏のギターソロも中々に印象的です。「EASY FIGHT RAMBLING」はリズミカルな1曲。サビ以外のメロディは弱いですが、サビメロはかなりキャッチーで、ノリの良いコーラスと一緒に叫びたくなりますね。アメリカンなハードロックというか、カラッとして爽やかです。そして個人的にXで一番好きな楽曲「X」。超速のイントロからとてもカッコ良くて、細かくザクザク刻むギターやバタバタとダイナミックなドラムなど、アグレッシブな演奏に圧倒されます。歌メロもキャッチーですね。そしてサビでの「X 感じてみろ X 叫んでみろ X 全て脱ぎ捨てろ」の「X」に合わせて手をクロスしジャンプする「Xジャンプ」と呼ばれるコールも生まれました。東京ドーム公演では観客のXジャンプのせいで、文京区に震度3の地震が起きたという伝説も。笑 ハイテンションでとてもノリの良い超名曲です。続く「ENDLESS RAIN」では一転、YOSHIKIが美しいピアノを披露するメロディアスなバラードです。TOSHIの歌はしっとりとしており、かすれ声が切なさを引き立てます。そして彼らを引き立てるオーケストラ等の演出も良い。とても美しいメロディをゆったりと聴かせ、速い楽曲が多い中でその美しさが一際輝きます。そして彼らを代表する有名曲「紅」。陰鬱なアルペジオの前にストリングスが美しく引き立てます。拙い発音の英語詞ではなく日本語詞がしっくりきますね。憂いのある雰囲気から一転、嵐のように暴力的で速いメタル曲へと変貌。緊迫感に溢れてとてもスリリングですが、加速しても歌はメロディアスなんです。ギターソロはじめ間奏も聴きごたえがありますね。続くインストゥルメンタル「XCLAMATION」はエスニックで怪しげな雰囲気を醸し出します。ツインギターがメロディアスですね。そして1分半あたりから突如始まるTAIJIのスラップベース、そこから野性味のあるハードロック演奏を展開します。フェードインで始まる「オルガスム」は出だしから超ハイテンションで、YOSHIKIのドラムが高速で煽り立ててきます。煽り運転をされているような、焦燥感煽られっぱなしの演奏はとてもスリリングです。「CELEBRATION」はアメリカンハードロック的なワイルドな感じのイントロで始まった後、鈍重なリフをザクザクと響かせます。他はほぼ全て名曲ですが、これだけは印象が弱いです…。続く「ROSE OF PAIN」は12分近い大作。パイプオルガンが不気味に鳴り響いた後、オーケストラがメタリカの「Battery」でも始めるんじゃないかってフレーズを奏でます。重厚感がありどっしりと聴かせますが、2分半過ぎから少しテンポアップ。3連符でリズミカルに演奏しながらメロディアスな歌を壮大に展開します。狂気的なピアノも加わり、6分辺りで一区切りつけるとそこからは疾走メタル曲へと変わります。高速で煽り立てながらも、TOSHIの歌は変わらずメロディアスです。スケール感のある大作でした。ラスト曲は「UNFINISHED」。YOSHIKIの弾くピアノとTOSHIの歌だけで始まりますが、途中加わるバンド演奏がしっとりとした歌を引き立てます。そして後半加わるストリングスも、とても美しい。
「紅」や「ENDLESS RAIN」、そして「X」といった数々の名曲が収録されています。ジャパメタ最高峰の傑作名盤ですので、メタルファンは必聴です。
1991年 3rdアルバム ※X名義
レコーディングのために渡米したX。当初2枚組予定で制作が進められていましたが、レコーディングの最中にYOSHIKIが頸椎椎間板ヘルニアを発症してしまい、高速ナンバーが叩けないなど大幅なレコーディング遅延に。YOSHIKIは2枚組に拘ったものの、レコード会社の説得についに折れ、いくつかの楽曲は収録を断念することになります(そのうちの「ART OF LIFE」はミニアルバムとして単発でリリース)。
納得のいく形でリリースできなかったものの、初動で60万枚以上、最終的にはミリオンセラーを達成した作品となりました。ジャケットに写るのはYOSHIKI。
インストゥルメンタル「Es Durのピアノ線」で幕開け。YOSHIKIのピアノにストリングスが絡んで、ため息が出るほど美しい演奏を展開しますが、ピーンと一音響き渡ると不協和音で崩れ落ちます。そして「Silent Jealousy」のピアノイントロにそのまま繋がるという、X定番の組曲形式のオープニング。ピアノイントロの後はスリリングなメタル曲を展開します。煽り立てるようなドラムが強烈。メロディアスなTOSHIの歌を終えると間奏はクラシカルで、ピアノの美しい旋律にオーケストラ、その後ツインギターの奏でるクサいメロディ。メロディックスピードメタルですね。7分超もある上に演奏は大仰…ですが、ドラマチックな演出は胸に響くんです。「Miscast」はダーティなギターリフがとにかくカッコ良いハードロック曲。歌メロはそれほどでもないですが演奏は魅力たっぷりで、また野太く漢臭いコーラスもノリノリで中々良い。間奏のギターソロはディープ・パープルっぽいですね。「Desperate Angel」はアメリカンな雰囲気のハードロック曲。勢いに満ちていますが、カラッとして陽気な雰囲気です。「White Wind From Mr.Martin ~Pata’s Nap~」はPATAの奏でるアコースティックな小曲。ヘヴィメタルとは無縁の、優しく牧歌的な雰囲気です。続く「Voiceless Screaming」はアコースティックバラード。まったりとして優しいアコギ演奏が魅力的ですが、TAIJIが大半のパートを弾いています。そして喉を潰して発声禁止だった体験を描いた、悲哀に満ちていて切ないTOSHIの歌がたまりません。そして「Stab Me In The Back」は高速スラッシュメタル曲。重たく鋭利なリフと、ツーバスドコドコな超速ドラムが畳み掛けてきます。焦燥感を煽るスリリングな演奏に、野太いコーラスで一緒に叫びたくなります。しかしこの楽曲のレコーディングがYOSHIKIの体調悪化の原因となってしまったようです。続く「Love Replica」はサイケデリックな浮遊感に溢れる1曲。ワルツを刻むメロディは中世的な雰囲気ですが、歪んだギター音に、ポツポツと呟くような英語の朗読が幻覚的に揺さぶりをかけてきて、とにかく不気味な印象を抱きます。「Joker」はアメリカンハードロック。キャッチーでノリの良い1曲です。ラストは「Say Anything」で、9分近い大作です。美しいオーケストラのイントロを終えると、ピアノ伴奏をバックにTOSHIがメロディアスなバラードを歌います。英語発音の悪さがやけに気になりますが笑、美しいメロディは壮大な演奏に引き立てられて中々に感動的です。
これまで以上にYOSHIKI以外のメンバーの作曲が増えたことで全体的にバラエティに富んでいますがメロディアスな曲は減少。またYOSHIKIの持病の関係で高速ナンバーが減り、前2作ほどのスリルは無くなりました。
本作のあとTAIJIが脱退、後任にHEATH(B)が加入します。
1993年 ミニアルバム
世界進出を目指したXはワーナーと契約、それを機にX JAPANに改名しました(米国にXという同名バンドが存在していたため)。また、脱退したTAIJI(B)の後任としてHEATH(B)が加入しています。
さて本作は、当初『Jealousy』に収録されるはずだった「ART OF LIFE」が収録されています。「ART OF LIFE」は29分に渡る長大な楽曲で、収録曲は1曲だけ。それでも累計60万枚以上を売り上げ、収録曲が1曲のみのCDアルバムでは日本一売れた作品となりました。
流麗なピアノと、ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団のオーケストラで幕を開けます。TOSHIの歌はメロディアスですが堂々としていますね。そして3分辺りからバンド演奏が加わり、壮大な雰囲気になったところで束の間、急加速。強烈なスラッシュメタルへと変わります。ですがオーケストラと歌メロは美しくてメロディアスなので、攻撃的な演奏とは対照的ですね。5分過ぎた辺りから一瞬晴れやかな雰囲気を見せますが、6分辺りからは再び緊迫。ツインギターが美しいハーモニーを奏でますが、HIDEがリードギター、PATAがリズムギターという役割分担で、ツインギターもHIDEのギターを重ねたのだそう。9分手前からテンポを落とし、メロディアスな歌をじっくり聴かせますが、1分足らずで再び加速。どんどん緊張感を高め、リズムチェンジを交えながら圧倒的な勢いで聴かせ切ります。13分手前でTOSHIの歌が入るまで、約3分間の凄まじい演奏に聴き入ってしまいます。
15分辺りからは空気がガラリと変わり、YOSHIKIによる長尺のピアノソロパートに。元々はクラシック畑のYOSHIKI、ピアノソロも難なく聴かせますね。しっとりとした美しい演奏で始まりますが、18分辺りから狂気に満ち溢れた不協和音の嵐で、聴いていると気が狂いそうになります。20分過ぎから主旋律は美しさを取り戻しますが、それに茶々を入れるかのように狂った旋律を並行して弾くという狂いっぷり。破滅的だけども美しいんです。ピアノソロのバックでオーケストラが静かに鳴り始め、23分半頃にオーケストラがメインになると、間もなくスラッシュメタルが復活。ザクザクと鋭利な演奏と、そしてメランコリックで美しい歌メロにオーケストラが、ラストに向かって壮大に盛り上げていきます。HIDEのクラシカルなギターソロをオーケストラが彩り、テンションを高めきったところでテンポを落とし、壮大な大サビをじっくり聴かせて終わります。余韻も素晴らしい、スケールの大きい名曲でした。
長いのですが、それも納得の圧倒的スケール感。特にYOSHIKIの狂気じみたピアノソロが凄まじいです。
1996年 4thアルバム
本作はX JAPANの世界デビュー作品となるべく制作が進められていましたが、TOSHIの英語発音の問題とYOSHIKIの持病の悪化で世界デビューは断念することになりました。更にレコーディングの長期化で資金不足に陥り、アルバム用のストックを次々シングルカット。ようやく出来上がった本作は10曲中6曲がシングルというベストアルバム的な作品となってしまいました。
アルバムは表題曲「DAHLIA」で開幕。疾走感に溢れる壮大なメタル曲で、YOSHIKIの高速ドラムに圧倒されます。TOSHIの歌は強めのエフェクトが掛かっていますが、サビではエフェクトを取り除いて哀愁漂う美しいメロディを聴かせます。サビメロのバックで、アメリカ交響楽団による優雅なオーケストラ演奏が美しさを引き立てています。音質がイマイチなのが残念。ノイズ音で始まる「SCARS」は這うような重低音を響かせドロドロとしており、そしてノイジー。ですが速めのテンポもあってノリの良い1曲です。HEATHのベースがカッコ良い。「Longing 〜跡切れたmelody〜」はメロディアスなバラードで、TOSHIが切なく歌います。バックのオーケストラやピアノが楽曲の美しさを引き立て、また間奏のギターソロも魅力的です。続く「Rusty Nail」は本作のハイライト。「WEEK END」の第2章として制作された楽曲です。影のある演奏に儚さを感じる哀愁のメロディがとても魅力的。間奏にエッジの効いたスリリングな演奏を聴かせますが、全体的にPOP色が強まり、メタルを聴かない人にも受け入れられる楽曲に仕上がっています。「White Poem I」はボーカル以外全てYOSHIKIが演奏しています。打ち込み主体の実験的な楽曲で、強いノイズがかかり、うねるような重低音が響き渡ります。ピアノバラード「CRUCIFY MY LOVE」を挟んで、10分半に渡るバラード「Tears」。ピアノとオーケストラをバックに、TOSHIが哀愁のメロディを歌います。そして2番からは力強いバンド演奏が加わって、美しい楽曲をドラマチックに引き立てています。「WRIGGLE」はHEATH作のインダストリアルなインスト曲。異彩を放っていますが、ノイジーなサウンドはとてもダンサブルでカッコ良いです。ヘヴィなリズムギターはPATAによるもの。続く「DRAIN」もインダストリアルなダンスナンバーで、こちらはHIDEの作。ノイジーな打ち込みサウンドにTOSHIの悲痛な感じの歌がクールな印象です。ラストは有名曲「Forever Love (Acoustic Version)」。TOSHIのアカペラで始まります。アコースティックと銘打ってますがフルオーケストラ演奏。笑 ヘヴィメタルバンドの面影は全くありませんが、歌メロがとても美しい。そしてオーケストラは優雅です。
メロディが美しいバラードが多く、メタルを聴かない人向けのX JAPAN入門盤になりそうですね。しかし疾走メタルナンバーがほとんどないためX時代に比べると若干物足りなく、作風も迷走している感があります。
本作のあと1997年にTOSHIが脱退、同年中にX JAPANは解散しました。再結成を画策するも翌1998年にHIDEが急逝したため断念。ライブ盤等をリリースしつつ10年後の2007年に再結成を果たすことになります。亡きHIDEのポジションは空けたまま「6人目」としてSUGIZO(Gt)が加入、念願の世界進出も果たすことができました。2010年のツアーではTAIJIも復帰しますが翌年急逝するという悲しい出来事もありますが、その後も精力的に活動を続けています。
編集盤
1993年
本作はX時代のシングルベストで、1stシングル『紅』から6thシングル『Say Anything』まで、カップリング曲も含めてリリース順に並んでいます。メンバーはTAIJI脱退前のラインナップで、YOSHIKI(Dr/Pf)、TOSHI(Vo)、HIDE(Gt)、PATA(Gt)、TAIJI(B)。
アルバムは代表曲「紅 (シングル・ロングヴァージョン)」で幕開け。憂いのあるアルペジオに乗せて、TOSHIのメロディアスな歌がしんみりとした雰囲気を作ります。そこから一気に加速し、鋭利なギターや焚きつけるようなドラムなどスリリングなメタル曲に。実にカッコ良いですね。ラストにライブ音源をくっつけており、サビを観客と合唱しています。続く「20th CENTURY BOY (Live)」はT・レックスのカバー曲。地を這うように重厚でメタリックなアレンジになっていますが、TOSHIの高音域の歌が良く通ること。「ENDLESS RAIN」はピアノ主体の名バラード。メロディがとても美しい曲で、スラッシュメタルにしてもバラードにしてもYOSHIKIの書く楽曲はメロディが魅力的です。HIDEの作曲したギターソロパートも美しいんです。「X (Live)」はライブで更に勢いが増しています。TOSHIが会場を煽った後に始まる、YOSHIKIのマシンガンのようなドラムの連打、TAIJIの唸るベースが非常にカッコ良い。そしてラストの「We are X」のコール&レスポンスが最高です。「WEEK END」はダーティなイントロがクールですね。陰のあるメロディアスな歌が切なく、でも「Week End」の連呼は耳に残ります。後半はストリングスやピアノが加わり、美しくも悲壮感のある雰囲気に仕立て上げています。続いて「ENDLESS RAIN (Live)」。HIDEとPATAのハモるギターが美しく感傷的に楽曲を引き立てています。哀愁漂う歌メロは会場も合唱していますが、女性ファンの比率がかなり高そうです。イントロで美しいピアノソロを聴かせる「Silent Jealousy」は、本編はアグレッシブな疾走メタルです。間奏は笑ってしまうくらいクラシカルで大仰で、メロディアススピードメタルでしょうか。続いて「Sadistic Desire」はストレートな疾走曲。メロディは弱いですが、タイトな演奏はノリが良いです。「Standing Sex」は『Silent Jealousy』収録予定だったものの間に合わず、シングルとしてリリースされました。ノリノリの疾走曲で、野太いコーラスが印象的。そしてなんといってもHIDEのキレッキレのギターソロが凄まじいです。「Joker」はアメリカンなロックンロール。明るくキャッチーで、ノリの良い1曲です。そして「Say Anything」は9分近い大曲で、スケール感のあるバラードです。オーケストラやピアノをバックに歌うTOSHIの歌メロは美しくて感傷的。ひたすら繰り返しながら盛り上がっていく展開はドラマチックです。最後は「Silent Jealousy (Live Version)」。静かなイントロを終えた後の爆発力はスタジオ盤の数倍以上で、とてもスリリングです。TOSHIの声も良く出ているし、TAIJIのベースラインもカッコ良い。そして恐ろしい勢いのYOSHIKIのドラムが素晴らしいです。
X JAPANの入門盤に向いた1枚です。スタジオ録音とライブ録音が混在しているので統一感はありませんが、ライブテイクはどれもハイテンションで、Xのライブの魅力も知ることができますね。
関連アーティスト
キッスとYOSHIKIがコラボし、YOSHIKISS(ヨシキッス)として2019年の紅白へ出場。
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