🇯🇵 SYNC.ART’S (シンクアーツ)

レビュー作品数: 7
  

同人作品:東方アレンジ

天つ風

2008年

 SYNC.ART’Sは五条下位の主催する同人音楽サークルで、2004年頃から活動を始めています。サークルメンバーは楽曲アレンジを手掛ける五条下位のみで、サークルとしては固定のボーカリストを持たないものの、多数の女性ボーカリストを起用し、レギュラー参加しているメンバーも多いです。加えて非常に多作で、東方ボーカルアレンジの古参サークルとして人気を博しています。
 東方Projectオンリー同人誌即売会 第5回 博麗神社例大祭にて頒布された本作は東方風神録の楽曲を中心としたボーカルアレンジアルバムで、ハードロック色の強い作品に仕上がりました。BB(E.Gt)、流歌(A.Gt)ほか多数のゲストが参加しています。ジャケットイラストは綾瀬はづき作。

 オープニングを飾る「風乱舞」は「信仰は儚き人間の為に」をアレンジした楽曲で、冒頭はシンセが出張っていますが、そこからメタリックなハードロックを繰り広げます。櫻井アンナがボーカルを担当、骨太な演奏に合わせて力強いボーカルスタイルで聴かせます。間奏ではハードロックらしい長尺ギターソロに浸れます。
 続く「夜陰口遊は」は「夜雀の歌声 ~ Night Bird」をヘヴィメタルにアレンジ。ボーカルを担当する美里のか細く繊細な歌声はメタリックな演奏とはミスマッチですが、ミステリアスなメロディラインのおかげか、演奏に埋もれることなく意外と存在感があります。
 「神さびた古戦場 ~ Suwa Foughten Field」をアレンジした「嵐の中で当人しか知りえないもの」は遊女がボーカルを務めます。冒頭こそ神秘的な雰囲気ですが、リズムチェンジを駆使しながら徐々にパワフルでメタリックな楽曲へと変貌。ザクザク切り込みギュインギュインと唸る演奏と、それ以上にパワフルなボーカルが強いインパクトを与えます。
 「Crash soul」は「六十年目の東方裁判 ~ Fate of Sixty Years」をメタリックにアレンジ。ドスの効いたアクの強いボーカルは葉山りくで、リズミカルかつメランコリックな演奏をねじ伏せてパワフルに歌います。
 「稲田姫様に叱られるから」をアレンジした「深炎の秋方」は坂上なちが歌います。冒頭から畳み掛けるような歌でインパクトを与えつつ、メロディアスな歌へ。メタリックな演奏は時折リードギターが悠々としたギターソロを披露します。
 続く「創世に消ゆ」は「御柱の墓場 ~ Grave of Being」のアレンジで、結月そらがボーカルを担当。ハードロック色は息を潜め、特に穏やかな前半は郷愁を感じさせます。中盤からはリズム隊がダイナミックになりますが、変わらず激しさは控えめで一息つけますね。
 「アルティメットトゥルース」をアレンジした「paramita」も、前曲同様の穏やかでノスタルジックな雰囲気を引き継ぎます。桃梨の歌声は優しくも、原曲譲りのメランコリックなメロディに切なくなりますね。演奏もコーラスワークも幻想的で幽玄な世界に浸れます。
 そして「風息」は「妖怪の山 ~ Mysterious Mountain」をアレンジ。野瀬冬弥が滑舌良い歌を歌います。若干クラシカルでゲームのBGM風ですが、サビメロからはメタリックな演奏が表出。間奏ではここぞとばかりのギターソロ。笑
 ラストは「フォールオブフォール ~ 秋めく滝」をアレンジした「憂流迦-Ulka-」で、葉山りくと遊女がデュエット。キラキラしたシンセを散りばめつつも、重厚かつ疾走感のあるハードロックを繰り広げます。歌は低音キーが多くかつヘヴィな演奏なので、パワフルなボーカリストを起用することでバランスを保っている感じです。

 ギュインギュイン唸るコテコテのハードロックを展開。楽曲テイストは比較的一貫性がありますが、ボーカリストが楽曲毎に異なり、個人的には楽曲により好き嫌いが分かれる印象です。

 
ソラとトキと二色のチョウ

2008年

 夏のコミックマーケット74で頒布された本作は、ZUN’s Music Collection(秘封倶楽部)の楽曲アレンジが並びます。前作のようなハードロック色を部分的に残しつつ、今作はダンスアレンジが中心です。BB(Gt)やTAM(Vn)、その他多くのゲストが参加しています。

 「二色蓮花蝶 ~ Red and White」をアレンジした「BICHROME」で幕を開けます。1990年代的なシンセサイザーと打ち込みのビート、そこにザクザクとメタリックなギターが切り込みます。中々にダンサブルで心地良いアレンジですが、『天河-tenga-』再録時にはヘヴィメタルに振り切ったアレンジがされます(個人的には後者の方が好き)。ボーカルを努める桃梨の歌声には儚さや哀愁が漂います。
 続く「OVER Providence」は「大空魔術 ~ Magical Astronomy」のアレンジ。スコンと抜けるドラムが爽快ですが、メタリックな演奏で奏でられる楽曲にはシリアスな雰囲気が漂い、ボーカルの珠梨の歌はメランコリックで哀愁が感じられます。間奏では速弾きなどギターソロを楽しませます。
 「G Free」をアレンジした「Gravity of Love」は、同人サークルSilver ForestよりNYO(Arr)とさゆり(Vo)がゲスト参加。センチメンタルなメロディラインと、大仰なダンスアレンジがややミスマッチな感じ。ボーカルは憂いたっぷりです。
 続いて「幻想機械 ~ Phantom Factory」をアレンジした「Star&doll」。同人サークルShibayan Recordsのshibayan(Arr)が参加し、クラフトワークのように無機質でリズミカルな反復をするテクノ/テクノポップを展開します。ボーカルも加工して機械のよう。ダンス楽曲の多いアルバム内にありながら若干異彩を放ちますが、単曲としては良質です。
 「Light travel distance」は「車椅子の未来宇宙」をダンスアレンジ。あどけなさと小悪魔的なあざとさを併せ持つ坂上なちの歌声は、重低音の効いた演奏にも負けず存在感があります。メランコリックかつ小気味良いサビの歌唱は、コーラスも相まって中毒性があり癖になりそうです。
 続いて「少女秘封倶楽部」をアレンジした「Rondo of fantasy」。ピアノは哀愁たっぷりですが、打ち込みのリズムビートは力強くてダンサブルです。美里の儚げなボーカルは、バックで薄っすら鳴るピアノに支えられて透明感があります。
 「天空のグリニッジ」をアレンジした「魅せる時」はゴシック風の怪しげな雰囲気が漂います。かと思えばツインギターがハモるメタリックな演奏に変貌。櫻井アンナが力強くおてんばな雰囲気の歌声で、耳に残るメロディラインを歌い上げます。魅力的な1曲です。
 ラスト曲「揺らめく水面に落ちる月」は「向こう側の月」のアレンジ。ヴァイオリンやピアノをバックに、結月そらがしっとりと歌い上げます。メロディアスで神秘的な雰囲気が漂う美しい楽曲です。

 若干大仰というか時代を感じさせるアレンジのダンスチューンが並びますが、メロディアスな歌メロとボーカルがよく合っていて良曲が多いです。

 
HEART CHAIN

2009年

 第6回 博麗神社例大祭で頒布された本作は東方地霊殿メインのハードロック/ヘヴィメタルボーカルアレンジがなされています。BB(Gt)、流歌(B)、TAM(Vn)といったお馴染みの顔ぶれが演奏をサポート。ジャケットアートは安定の綾瀬はづき作。

 アルバムは「少女さとり ~ 3rd eye」をアレンジした「癒えぬ痕」で幕開け。ストリングスが荘厳な雰囲気を作り出し、櫻井アンナがよく通る声でオペラ風に歌い上げます。コーラスワークはダークで幻想的ですが、明るい歌声は暗い楽曲には若干ミスマッチな感じ。中盤からはヘヴィなギターや叩きつけるようなドラムが加わって、メタル感が大きく増します。
 続く「閉塞ディペンデンス」は「ハートフェルトファンシー」をアレンジした楽曲で、リードギターが高らかに鳴ってハードロックを宣言。メタリックなバンドサウンドに鍵盤も加わった分厚い演奏で、アンニュイでメランコリックな美里のボーカルが対照的ですが、哀愁の歌は魅力たっぷりです。
 「Green Grass Garden」は「緑眼のジェラシー」のアレンジ。イントロこそシンセやピアノがどうしようもない悲壮感を醸し出しますが、歌が始まる直前でハードロックに転換してテンポアップ。躍動感のある演奏に、坂上なちのアニメ声のような歌声が印象的。原曲のような悲壮感は払拭されていますが、程よく哀愁をたたえつつも疾走感があって爽快です。間奏の泣きのギターも良いですね。
 「ヴワル魔法図書館」をアレンジした「Ever since…」はmikoがボーカル担当。全編英語詞ですが発音はカタカナ英語で、可愛らしい声による語感の良さを楽しむ感じでしょうか。ダークゴシックな風味も取り入れつつ、キレの良いヘヴィメタル曲に仕上げています。
 続いて「エクステンドアッシュ ~ 蓬莱人」をアレンジした「銀のめぐり」。冒頭からギターがグワングワン唸りを上げます。カッコ良さに色気が混じった3Lによるボーカルは、力強いハードロックサウンドによく映えます。時折タッタカタッタカと、ヘヴィながらリズミカルな演奏も気持ち良いです。
 「廃獄ララバイ」をアレンジした「tod und feuer」は趣向を少し変えて、ダンサブルなアレンジに。ですがダークかつ奥行きのあるサウンドは他の楽曲とも似た雰囲気で、アルバムの流れに違和感はありません。シンセサイザーの音や桃梨の歌はエコーがかかったように空間にぼんやり広がりますが、重低音を響かせるリズムビートはメリハリがあってトリップ感を生み出します。
 最後に「エネルギー黎明 ~ Future Dream…」をアレンジした「この荒廃した輪廻に」。静かな空間にヴァイオリンやピアノが響き、しっとりとした雰囲気。結月そらの少し癖のある歌声は小悪魔的で、静かな演奏と相まって存在感があります。そして後半に向かうにつれてバンド演奏が徐々に前面に出て、盛り上がっていきます。ラストに音を間引く演出も良いですね。

 ダークやメタリックといったトーンで一貫したアレンジのおかげで、アルバム全体に統一感があります。完成度の高い一作です。

 
White Magic

2009年

 冬のコミケC77で頒布された本作は東方星蓮船を中心としたアレンジです。ボーカリストとして仲村芽衣子が初参加、またアルバム全体では美里がボーカルを務める楽曲が半数を占めます。BB(Gt)、ひさし(B)、TAM(Vn)が演奏参加するほか、同人サークルAlstroemeria RecordsよりMasayoshi Minoshima、LC:AZEの琉姫アルナの2名がアレンジャーとしてゲスト参加しています。

 オープニングを飾るのは「感情の摩天楼 ~ Cosmic Mind」をアレンジした「Emotional Rule」。軽快なドラムを皮切りに、シンセにより装飾された疾走感あるハードロックに仕上がりました。そしてロックサウンドによく合う、仲村芽衣子のクールで力強い歌声に魅せられます。カッコ良い名曲です。
 続く「Let me be with you」は「魔法少女達の百年祭」をダンスチューンにアレンジ。キラキラシンセとグルーヴ感のあるリズムビートをバックに、mikoが幼さのあるふわふわした歌声で歌います。キレのある演奏と甘々な歌声のギャップが浮遊感を生み出します。
 「When Leaving」はMasayoshi Minoshimaが「亡き王女の為のセプテット」をアレンジ。アンビエントな感覚も取り入れたメロウなエレクトロニカで、ボーカルを務める美里の歌はアンニュイで気だるい感じ。原曲から大きく変えたアレンジで、原曲の良メロディが改変されているのは個人的には少し残念。
 「ラストリモート」をアレンジした「Re:Production」は、キレッキレのクラブミュージック風に仕上がっています。原曲譲りのメランコリックなメロディラインが美里の焦がれるような歌唱とよく合っていて魅力的ですが、演奏がイケイケなので歌メロの哀愁をかき消してしまっています。もう少しダークに沈んでも良かったかも。
 「Forever cherryblossom」は「幽雅に咲かせ、墨染の桜 ~ Border of Life」を原曲に、五条下位と琉姫アルナによる共同アレンジ。坂上なちがボーカルを担当します。冒頭こそ神秘的なオーラを纏いますが、そこからビートを効かせたダンスチューンへと変貌。
 そして「人恋し神様 ~ Romantic Fall」をアレンジした「紅染-benizome-」。美里の歌うノスタルジックなメロディラインをフィーチャーした落ち着いたトーンの演奏で、ヴァイオリンが美しいですがダンスビートとの組み合わせは意外というか。
 続く「二人繋ぐ道」でもヴァイオリンが活躍します。「空の帰り道 ~ Sky Dream」をアレンジした楽曲で、ドラムがしっかりと支えるゆったりとした演奏は、結月そらの優しい歌声やヴァイオリンの音色とも相まって郷愁を感じさせます。
 最後に「春の湊に」をアレンジした「眠りし宝」が続きます。美里の歌う楽曲で、歌声を加工した遊び心溢れるダンスチューンに仕上がりました。ただ、この手のダンスチューンはワンパターンというか正直お腹いっぱいな感じもします。

 ダンスチューンが多く並ぶもののやや冗長な感があり、そんな中でロックアレンジ「Emotional Rule」が光ります。原曲のイメージとは異なるアレンジも多いです。

 
天河-tenga-

2010年

 夏のコミケC78で頒布。何作か聴いた中では個人的に最高傑作である本作は「有頂天変 ~ Wonderful Heaven」の最強アレンジである「Sword of Valiant」を収録。イベント限定CDに収録された楽曲等をリアレンジ・リミックスして収録、全11曲とボリューム満点です。仲村芽衣子ボーカル楽曲が半数を占めるのも個人的に嬉しいところ。BB(Gt)、hisashi(B)、TAM(Vn)といったお馴染みの顔ぶれに加え、鷺(Sax)が演奏をサポートします。

 「妖怪の山 ~ Mysterious Mountain」をアレンジした「風の投影」で幕開け。ダンスアレンジでありながら、メタリックなギターが楽曲を引き締めます。そして自信に満ちた歌声の仲村芽衣子と、アンニュイで色気のあるlily-an(Liz Triangle)がデュエットを繰り広げますが、個人的には東方アレンジ界隈で大好きなボーカリスト2人のデュエットなのが嬉しい。原曲譲りの哀愁のメロディを活かしつつカッコ良く仕上がりました。
 続く「Abusolute Demolition」は「U.N.オーエンは彼女なのか?」のアレンジで、原曲の不協和音を活かしつつ、テンポの速いダンスビート(ドラムンベースとかジャングルと呼ぶのでしょうか?)が焦燥感を煽り立てます。また、愛原圭織のロリ声はフランドール・スカーレットのイメージにピッタリです。不穏ながら強い中毒性のある良曲です。
 そして本作のハイライトとも言える素晴らしい名曲「Sword of Valiant」。「有頂天変 ~ Wonderful Heaven」をダンスミュージックに仕立てました。仲村芽衣子による、ファルセットを用いずに高音キーをパワフルに歌い上げる歌唱スタイルは、比那名居天子の自信たっぷりなキャラクターイメージを投影しているかのようで本楽曲の大きな魅力です(これでぶちのめされて彼女のボーカル曲が大好きになりました)。そして焦燥感を煽る高速リズムビートもスリリングかつ躍動感に溢れていて魅力的です。
 「二色蓮花蝶 ~ Red and White」をアレンジした「BICHROME -Another color-」は『ソラとトキと二色のチョウ』の再録で、ダンスチューンだったものをヘヴィメタルにアレンジ。ザクザクと切り込むギターがメリハリをつけ、かつ若干テンポを上げてスリルを増しています。サビメロでの畳み掛けるようなスラッシュメタル演奏は凶悪でカッコ良い。桃梨のメランコリックな歌声も、攻撃的な演奏と対照的でよく映えます。これも本作における素晴らしい名アレンジの一つですね。
 続く「闇と光の間の」は「少女綺想曲 ~ Dream Battle」のアレンジ。結城京華のハスキーな歌声が、メロディアスな歌メロの哀愁を引き立てます。バックで奏でるヴァイオリンも哀愁を引き立てていて美しいです。
 タイトルが物騒な「薔薇薔薇人体模型」は「ブクレシュティの人形師」をゴシック風味のハードロックにアレンジ。ダークな雰囲気を纏いつつも、ドラムをはじめとして躍動感も併せ持っています。櫻井アンナの歌はハキハキとして力強く、ノイジーで激しい演奏にも張り合っています。吐息に混じる色気にも魅了されます。
 「運命のダークサイド」をアレンジした「wandering girl」は、坂上なちと美里がデュエット。薄暗くメロディアスな演奏に、幼く儚い印象ほ歌声で憂いを感じさせます。終盤になるとベースやドラムも際立って、リズミカルで小気味良い印象へと変わります。
 続いて「感情の摩天楼 ~ Cosmic Mind」をアレンジした「Emotional Rule -dark white-」は『White Magic』の再録で、ロックアレンジだったものをダンスチューンに変更。リズムビートがより強烈になり、若干テンポも上がったのか更にスリリングになりました。仲村芽衣子の歌は憂いを見せたかと思えばパワフルに歌い上げたりと、表情豊かなボーカルは強烈な演奏にも負けず存在感を見せます。
 そして「千年幻想郷 ~ History of the Moon」をアレンジした「ツキヨニサラバ」、これもまた名曲です。原曲踏襲のメロディアスな旋律を歌う、仲村芽衣子の力強いボーカル。特にサビメロがカッコ良くてノックアウト。ダンサブルなサウンドが歌メロを引き立てて、ヘヴィなギターがメリハリをつけます。
 「夢現の海空」は「最も澄みわたる空と海」をアレンジした楽曲で、ほぼコーラスワークだけのメロディアスな楽曲です。櫻井アンナ、遊女、坂上なち、結月そら、仲村芽衣子、lily-anが参加。
 そしてEx Track扱いですが、実は大本命の名曲「Sword of Valiant -Dark Power-」。個人的には東方アレンジ楽曲で一番好きな1曲です。アレンジを変え、ピロピロギターが唸りを上げて、メタリックなベースがゴリゴリと響く凶悪なヘヴィメタル曲に変貌。演奏だけでなく歌詞も変えていますが、黒岩サトシによる歌詞はブロント語(2ちゃんねる発の独特な構文)がふんだんに使われているそうな。仲村芽衣子の高音気味の力強いボーカルは、重低音を轟かせる激しい演奏にもよく映えますね。最高にカッコ良いです。

 再録曲も多いですが、元々良アレンジだったものがリアレンジによって更に磨きがかかっています。隙のないスリリングな名盤です。

 
もっとらぶれすっ!

2011年 ※SYNC.ART’S×リル・プラクティカ名義

 第8回 博麗神社例大祭にて頒布された本作は同人サークル リル・プラクティカの桃梨(Vo)をフィーチャーした、2007年頒布の『らぶれす Loveressive』を全曲再レコーディング+新曲追加した作品です。綾瀬はづき作の可愛らしいジャケットイラストに見られるように、ポップさ5割増な仕上がりです。同人サークルtakrockers!!よりBB(Gt)、hisashi(B)、mochi(Dr)、TAMUSICよりTAM(Vn)が演奏参加。

 「妖々夢 ~ Snow or Cherry Petal」をアレンジした「春光 -Promise of Spring-」で幕開け。1分強の短い楽曲で、多重コーラスをバックに、儚げな歌唱で幽玄な雰囲気を作り出します。
 続いて「恋色マスタースパーク」のアレンジ「ミセリコルディア -Misericordia-」。躍動感のあるポップロックな演奏に乗せて、霧雨魔理沙をイメージしたのか少し男勝りな雰囲気の歌唱に変えています。合いの手で入るセリフが可愛らしい。
 「Rendezvous」は「狂気の瞳 ~ Invisible Full Moon」のアレンジ。原曲の不穏さは全く無くて、ポップな演奏は明るく柔らかな日差しを浴びるかのような印象。桃梨の少女のような歌唱と結月そらのハスキーボイスが絡み合う、優しい楽曲です。
 桃梨と遊女の歌う「想ひそめしか」は「広有射怪鳥事 ~ Till When?」のアレンジ。アコースティックな演奏とメランコリックな歌によってシリアスな雰囲気が漂い、アルバムにアクセントを加えます。「このまま貴女が 還らずとなったら 過ぎ去るこの世は 意味を無くすでしょう」が切なくなります。キュッキュ鳴るアコギの弦の音が心地良いですね。
 続く「sympacy dolls」もアコギが憂いを加えます。「ブクレシュティの人形師」のアレンジで、全体的に原曲踏襲。哀愁の歌は儚く消え去りそうですが、サビメロでは力強く歌い上げて緩急をつけます。美しい楽曲です。
 またポップな雰囲気に戻す「ファンシーエディタ」。「おてんば恋娘」のアレンジで、スカのリズムを取り入れてノリノリです。カラフルなシンセサイザーが彩り、ベースはゴリゴリとリズムを刻みます。チルノをイメージしたか、桃梨の歌唱はおてんばで無邪気な感じ。楽曲によって歌唱法を変える豊かな表現力には感服です。
 ダーティなスラッシュメタルを繰り広げる「メイビーラヴロック!」は「もう歌しか聞こえない」のアレンジ。激しい演奏に魅せられるんですが、クールかつ少し色っぽい歌唱も中々に魅力的です。
 そして「幽霊楽団 ~ Phantom Ensemble」をアレンジした「こい☆れぽ」。プリズムリバー三姉妹をイメージしたのか、桃梨、遊女、葉山りくの3人で歌います。ダンサブルなサウンドに乗せて、代わる代わる恋バナを繰り広げる歌詞は少し気恥ずかしい感じもします。
 「猩々緋」は「紅楼 ~ Eastern Dream…」のアレンジ。桃梨の大人びた歌唱は民謡のようで、クールかつ艶っぽいです。楽曲はダークなエレクトロニカといった感じで、ノリの良いビートと霧のようなエフェクトで幽玄な雰囲気。後半は愛原圭織にバトンタッチして、ロリータボイスを披露します。
 ここからはExtra Track。「grown baby’s breath」は「幽霊楽団 ~ Phantom Ensemble」をアレンジした楽曲で、ヴァイオリンの優しい音色に乗せてアンニュイな歌を聴かせます。そして場面転換し、ワルツを刻み出すとベルが鳴ってクリスマスソングのよう。
 ラストを飾る「こい☆れぽ-Rock With You-」は「こい☆れぽ」をロック演奏にリアレンジ。キレや激しさが増してより賑やかになりました。スペイシーなシンセサイザーも楽曲を盛り上げます。

 桃梨の豊かな表現力を堪能できる、バラエティ豊富な作品です。甘々な楽曲の合間に見せるシリアスで大人びた楽曲にドキッとします。

 
Angelic Meister

2018年

 博麗神社例大祭15で頒布された本作は、副題に『SYNC.ART’S feat. Meiko Nakamura Toho Best Album 2009-2012』と銘打たれており同人サークルAdresseの仲村芽衣子が歌うボーカル曲をフィーチャーしたベスト盤です。また、仲村が歌う名曲「Sword of Valiant」(原曲「有頂天変 ~ Wonderful Heaven」)を意識したか、ジャケットアート(ののこ作)には比那名居天子が描かれています。
複数バージョン存在する「Emotional Rule」と「Sword of Valiant」は、それぞれのバージョンを融合させたアレンジが施されています。

 オープニングを飾るのは「感情の摩天楼 ~ Cosmic Mind」のアレンジ「Emotional Rule -dark white 2018-」。ロック風とダンス風のアレンジが存在しますが、後者の色合いが強いです。リズムトラックをはじめダンスチューンに仕上げつつ、ヘヴィなギターをアクセントとして入れています。テンポが速くてノリが良く、仲村のよく通るボーカルも相まって爽快。
 続く名曲「ツキヨニサラバ」は「千年幻想郷 ~ History of the Moon」のアレンジ。原曲のメロディアスな旋律を活かした仲村のボーカルが魅力たっぷりで、パワフルなサビメロは特にカッコ良いです。力強くビートを響かせるダンサブルな演奏は、ハードなギターでメリハリをつけます。
 「虎柄の毘沙門天」をヘヴィメタルにアレンジした「Radiant Silver」。メタリックにギターやゴリゴリのベースが緊迫した空気を作り出し、シリアスで焦燥感のある歌もピリピリした雰囲気。スリリングでカッコ良いです。
 「Nemesis」は「神さびた古戦場 ~ Suwa Foughten Field」のアレンジ。激しいトランスに重低音を響かせるギターが絡んだ楽曲は高い緊張が張り詰めますが、サビメロは開放感があります。
 「妖怪の山 ~ Mysterious Mountain」をアレンジした「風の投影」は、Liz Triangleのlily-anとデュエットをしています。東方アレンジ界隈でも個人的に大好きなボーカリスト2人が並ぶのが嬉しいところで、力強い歌声で勝ち気な感じの仲村と、大人びた色気ある歌声のlily-anとの個性の違いをメロディアスな旋律で堪能できます。ハードロック風味のダンサブルな演奏が歌を引き立てていますが、間奏ではアツいギターソロを聴かせます。
 続いて「キャプテン・ムラサ」をユーロビート風にアレンジした「騒天航路」。タイトル通り騒々しい楽曲で、大音量のシンセサイザーを鳴らし、強烈なリズムビートを刻みます。歌声は相変わらず力強いですが、ファルセットを用いずに高音キーが続いて若干苦しそうな場面も。
 ギターのハモリで幕を開ける「Magus Light」は「メイガスナイト」のヘヴィメタルアレンジ。力強いボーカルはメタリックな演奏を完全に従えていて、特にサビメロの豪快さは圧巻です。
 続く「後姿の時雨てゆくか」もヘヴィメタル風で、原曲は「万年置き傘にご注意を」。和風なメロディラインと艷っぽくも可愛らしさを感じる歌唱が魅力的です。演奏は疾走感溢れるゴリゴリのメタルで、爆音ベースにザクザクギター、シンバル炸裂のドラムとスリリングな演奏を繰り広げます。名曲だと思います。
 「リアルパッセージ」は「レトロスペクティブ京都」のヘヴィメタルアレンジで、イントロがクサい。笑 歌メロは哀愁に満ちていてメロディアスですが、ドライブ感の溢れる演奏が牽引し、サビに向けて勢いを増していきます。
 「風説の行方」は「妖怪の山 ~ Mysterious Mountain」が原曲。メタリックな演奏は力強いですが、同楽曲をアレンジした「風の投影」とは違って仲村の歌唱は儚げでアンニュイな印象。サビメロは早口気味ですが、力を抜いたふわっとした歌唱で耳心地が良いです。
 続いて「聖徳伝説 ~ True Administrator」をダンスチューンに仕立てた「幾千年の眠りより」。シンセサイザーの音色が時代を感じさせます。メランコリックな歌は憂いたっぷりで、サビでは焦がれるような雰囲気。
 「Bad Apple!!」をアレンジしたスリリングな楽曲「to be continued」。グルーヴ抜群のベース、そしてノリの良いシンセでダンスチューンかと思わせて、スラッシュメタルばりのザクザクした金属質でヘヴィなバンドサウンドを聴かせます。キャッチーなメロディラインを囁くように歌う仲村の声には色気がありますが、サビメロでは突き抜けるようなパワフルな歌唱が垣間見えます。カッコ良い1曲です。
 「秘かに契る気高き御霊」は「幽雅に咲かせ、墨染の桜 ~ Border of Life」をトランス風にアレンジ。若干ヒステリック気味な歌唱は他の楽曲にはない歌い方ですね。但しメランコリックな歌メロとノリノリの演奏がミスマッチな印象。
 一転してしっとりとした雰囲気に変える「鮮紅輪廻」は「ほおずきみたいに紅い魂」のアレンジです。ピアノと、TAMの弾くヴァイオリンが静かに美しい音色を聴かせ、仲村のメロディアスな歌をフィーチャー。サビメロでは力強く歌い、バンド演奏がドラマチックに盛り上げます。ラスサビの転調も美しい。
 「春還」は「春色小径 ~ Colorful Path」と「花は幻想のままに」の混合アレンジ。時代を感じるシンセがカラフルに彩り、そこから重低音を聴かせたメタリックな演奏が始まります。ゴリゴリベースが特にスリリングですね。哀愁あるサビメロをパワフルに歌い上げる仲村のボーカルの裏で、ギターも高らかに唸っています。
 続いて「信仰は儚き人間の為に」をアレンジした「Fantastic Night」。力強いビートが脈打つダンサブルな楽曲で、メロディアスな旋律とは対照的に、パラパラ(古っ)でも踊れそうなくらい演奏はノリノリ。激しい演奏に負けず、サビメロでは突き抜けるように力強い歌唱を見せます。
 そして最後に「有頂天変 ~ Wonderful Heaven」をアレンジした「Sword of Valiant -Dark Power 2018-」。仲村の自信に溢れるパワフルな歌唱は比那名居天子のキャラクターイメージにピッタリ。主張の激しいメタリックなピロピロギターと歌詞はDark Powerバージョン、ダンサブルなリズムトラックはノーマルバージョンですが、Dark Powerバージョンの毒気が若干薄まった感じ。2つの融合ではなく、それぞれのバージョンで両方の名曲を堪能したかったというのが本音です。笑

 個人的に東方Projectへの熱が冷めてしまった時期を経て、再燃した頃合いにタイミング良く巡り合ったのが本作でした。仲村芽衣子の歌声が好きで、当時これが聴きたかったんだという選曲、待ってましたという感じで即座に購入。激しい演奏にも渡り合えるパワフルで勝ち気な高音ボーカルが魅力的でHR/HM楽曲にもよく映えますが、後半の楽曲では肩の力を抜いた歌唱も聴かせます。キャッチーな名曲が多くて良質なベスト盤です。

 
 
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