🇬🇧 Teenage Fanclub (ティーンエイジ・ファンクラブ)
レビュー作品数: 6
スタジオ盤
1990年 1stアルバム
ティーンエイジ・ファンクラブは、スコットランドのグラスゴー出身のオルタナティヴロックバンドです。ノーマン・ブレイク(Vo/Gt)、レイモンド・マッギンリー(Gt/Vo)、フランシス・マクドナルド(Dr)の3人が、前身となるザ・ボーイ・ヘアドレッサーズを結成。1989年に前身バンドが解散となり、しばらく後にこの3人が再結集。ジェラルド・ラヴ(B)を加えて、同年中にティーンエイジ・ファンクラブを結成することとなります。
後に良質なメロディのギターポップを奏でることになる彼らですが、最初期となる本作ではグランジに影響を受けたノイジーな演奏を繰り広げます。なおレコーディング後に、学業を優先するためフランシスが脱退、ブレンダン・オヘア(Dr)を後任に迎えています。
アルバムはインストゥルメンタル「Heavy Metal」で幕開け。ざらついたノイジーなギターをかき鳴らしながら、その隙間からリードギターが垣間見える感じで、ノイズ要素が強いです。続く「Everything Flows」は比較的単調で、かつノイジーなギターを鳴らしています。そんな轟音な演奏にボーカルが埋もれ気味ですが、哀愁ある雰囲気は中々良い。そして表題曲「Catholic Education」。弾けるような疾走感があり、ノイジーな演奏で駆け抜けます。ドタバタとしたドラムが爽快ですね。「Too Involved」は歪ませたギターで迫力があるものの、でも歌は落ち着いていて癒やされるという、ギャップを感じます。そして意外とリズミカルです。「Don’t Need A Drum」は単調かつノイジーな演奏が、ゆったりと気だるげなムードを作ります。オルガンの味付けが、単調な楽曲と相まってトリップ感を生む感じ。かと思えば「Critical Mass」で、躍動感のあるギターが目を覚まさせます。歯切れよく、程良い疾走感もあって気持ちの良い楽曲です。「Heavy Metal II」は7分に及ぶ長尺のインスト曲で、歪んだギターが鈍重な雰囲気を作り出します。中盤にドラムが変化を作り出す場面は良いのですが、単調で代わり映えしない展開がしばらく続くので、冗長な感は否めません。終盤はブルージーなギターで少し緩急つけて終了。続いて「Catholic Education 2」。ノイジーで疾走感ある楽曲を繰り広げ、弾けるような爽快感です。「Eternal Light」は歌はヘタウマな感じですが、程良い哀愁を誘うノイジーな演奏が魅力的。「Every Picture I Paint」は焦燥感を掻き立てる、テンポの速い演奏がスリリングです。でも歌はアンニュイで癒やしを与えてくれるというギャップ。ラスト曲は「Everybody’s Fool」。メリハリのある迫力ある演奏と裏腹に、ヘタウマな歌は気が抜けるような感じです。
ノイジーなギターをかき鳴らしますが、アメリカのグランジとは違って毒気やヒリツキは薄く、爽やかさがあります。
1991年 2ndアルバム
契約履行のために僅か1日で録音され、発売日当日に廃盤になったという曰く付きのアルバムです。翌月に名盤『バンドワゴネスク』をリリースすることになりますが、同作のレコーディングの余り時間で即興的に演奏された楽曲が本作に収められたようです。ドン・フレミング、ポール・チゾムとバンドの共同プロデュース作。
アルバムは1分半の「Heavy Metal 6」で幕開け。ノイズにまみれたサウンドをバックに囁くような声で、シューゲイザー的な側面も見せつつ次曲へ。続いて6分に及ぶ「Mudhoney」。暴力的なギターを唸らせる、メタリックでスリリングなインストゥルメンタルです。破壊力のある演奏にぶちのめされますね。「Interstellar Overdrive」はピンク・フロイドのカバー。ディストーションを効かせた歪んだギターが、怪しげな楽曲を展開します。続いて「Robot Love」は爆音で暴れ回る演奏に、シャウトが強烈なノイズとして覆い被さります。疾走感もあってとてもスリリング。そして「Like A Virgin」はマドンナのカバー。ノイズまみれのヘヴィな演奏ですが、本作では唯一の「歌もの」楽曲です。原曲のメロディの良さもありますが、甘い美声で歌うんですよね。魅力的なカバーです。表題曲「The King」は爆音で叩きつけるドラムをはじめとしたヘヴィで短い演奏を、何度も何度も繰り返す実験的な楽曲です。「Opal Inquest」はゴリゴリの重低音をかき鳴らしながら、金属がキリキリ鳴る耳障りなノイズが全編を支配します。でもノイズの不快さを上回るほど、演奏はスリル満点です。「The Ballad Of Bow Evil (Slow And Fast)」はブレンダン・オヘアが叩きつけるような爆音ドラムで威圧しながら、スローでブルージーな演奏を挟んで緩急つけるスリリングなインスト曲です。原始ハードロックのようなブルース色の強さと、破壊的なサウンドを同居させて混沌とした雰囲気を醸し出します。終盤は加速して、スリリングな演奏にぶちのめされます。カッコ良い…!そして最後は小曲「Heavy Metal 9」。ノイズまみれのヘヴィな演奏で覆い尽くしつつ、ハミングのような歌(?)が入って幻覚的な雰囲気を醸し出します。
ほとんどがインストゥルメンタルですが、暴力的な演奏はスリリングでカッコ良いです。そして「Like A Virgin」のカバーでは魅力的な美声を聴かせてくれます。
1991年 3rdアルバム
ドン・フレミング、ポール・チゾムとバンドの共同プロデュースとなる本作は、ティーンエイジ・ファンクラブの名盤として高い評価を受けています。グランジ/オルタナティヴロックの世界的なブームが巻き起こって後押しとなり、本作でチャート入りを果たしました。1stレコーディング後を継承したラインナップで、ノーマン・ブレイク(Vo/Gt)、レイモンド・マッギンリー(Gt/Vo)、ジェラルド・ラヴ(Vo/B)、ブレンダン・オヘア(Dr)のメンバー構成です。
オープニング曲は「The Concept」。イントロこそ歪みまくったギターを鳴らしますが、気だるげな歌が始まると哀愁漂うメロディアスな印象へと変わります。そして後半には場面転換し、恍惚に浸るような歌とスローな楽曲でまったりとした雰囲気に。「Satan」1分強の短いインストゥルメンタル。実験的なノイズに始まり、そこから焦燥感のあるヘヴィでスリリングな演奏を繰り広げます。「December」はメロディアスな良曲です。ギターは歪んだ音を奏でつつ、ベースが心地良い重低音を刻みます。そして何と言っても哀愁のある歌メロがたまりません。ポップセンスが光ります。続いて名曲「What You Do To Me」。甘い歌声によるポップなメロディと、ノイジーな演奏の対比が気持ちの良い、パワーポップです。同じフレーズを繰り返して、明瞭かつ中毒性もありすね。「I Don’t Know」はノイジーながら美しくもあるギターの旋律、そして寂寥感のあるメロディを歌う甘い歌声に魅せられます。優しくて心地良い楽曲です。そして「Star Sign」では1分以上幻覚的なノイズを鳴らして実験的な楽曲かと思わせますが、歌が始まると一転。弾けるような清涼感あるサウンドと高いテンションで高揚感を煽りつつ、甘く優しい歌声に魅せられるんです。「Metal Baby」はどこかノスタルジーを誘うポップなメロディが良いですね。そして歌のポップさに比べると鋭利なギターや騒がしいドラムがメリハリをつけます。続く「Pet Rock」は後半に向かうにつれて賑やかに、ノイジーになっていく楽曲です。短いですが歌メロはポップな印象。そして「Sidewinder」は甘く優しい歌メロを、一部アコギを用いた柔らかみのある演奏で引き立てます。ギターが優しいのでリズム隊も目立ちますね。「Alcoholiday」はコーラスワークが美しいですね。歌メロが諦めのような切なさと優しさに溢れています。そして終盤のリードギターに胸がキュッとなります。「Guiding Star」は雰囲気を変え、アコースティックで静かな演奏とストリングスによって歌をフィーチャーしています。ラスト曲「Is This Music?」はインストゥルメンタル。ノーマンとジェラルドがギターとベースの役割を交換しているそうで、他の楽曲と異なり、ギターが高音キー主体で高らかにメロディを鳴らしています。
ノイジーなギターと、対照的な甘い歌声が心地良い、良質なメロディの宝庫です。
1993年 4thアルバム
前作で勢いづいたティーンエイジ・ファンクラブの4作目。全英14位を獲得し、自身初のトップ20入りを果たしました。アンディ・マクファーソンとバンドの共同プロデュース作。
なお、ブレンダン・オヘアが翌年1994年に脱退してしまうため、ブレンダン在籍時最後の作品となりました。
オープニングを飾る「Hang On」は、イントロがT・レックスの『20th Century Boy』にそっくり(かなりノイジーで鈍重なギターですが…)。歌が始まると、ポップで甘い歌声とノスタルジックなメロディの癒やし系楽曲へと変わります。後半は郷愁を誘うフルートを軸にストリングスが絡み、サイケデリックな感覚を醸します。続く「The Cabbage」は歪んだギターがヘヴィな音を奏でつつ、ブレンダンの力強いドラムが躍動感を生みます。歌は憂いを帯びつつも爽やかですね。「Radio」は晴れやかで弾けるような躍動感・疾走感があり、甘い歌声と合わさってとても爽快です。「Norman 3」は制作時の仮タイトルがそのままタイトルになったのだそうで、タイトルどおりノーマン・ブレイクの作。美しいメロディと寂寥感のある歌声が哀愁を誘い、同じフレーズをしつこいくらいにひたすら反復するので、嫌でも耳に残ります(でも良いメロディで憎めない)。ジェラルド・ラヴの骨太なベースも気持ち良いですね。そして「Song To The Cynic」はノイジーさ控えめで、まったりとした空気の中で優しくポップな歌を披露します。コーラスを効果的に使用した極上ポップソングに癒やされます。「120 Mins」はアコースティック色の強い楽曲で、レイモンド・マッギンリーの作。穏やかで落ち着いています。そして「Escher」では少し怪しげなフレーズから力強い演奏を繰り広げます。コーラスワークを駆使した歌も中々良いですが、特にアクセントとして加わるオルガンが良い味を出しています。「Commercial Alternative」は哀愁の美メロを歌いながら、ギターもノイズ控えめで比較的クリーンな音色で美しいメロディを引き立てます。「Fear Of Flying」はざらついた質感のギターが優しいメロディを奏でるというギャップ。アンニュイなイケボが特徴的で、落ち着いた優しい楽曲ですね。「Tears Are Cool」はアコースティック風味の優しいサウンドが心地良い1曲。後半から歪んだ音が出てくるものの、全体的に落ち着いています。そして「Ret Liv Dead」ではノイジーなギターを唸らせます。でもコーラスを駆使した歌は美しいんですよね。短いインストゥルメンタル「Get Funky」は、ベースソロから始まるリズミカルでダンサブルな楽曲。グルーヴ感があり、途中から手拍子も加わってノリが良いです。最後はゆったりテンポの長尺曲「Gene Clark」。重厚だけど単調なリズムに乗せ、ノイジーなギターが楽曲をリード。3分半を過ぎた辺りから歌が始まり、甘い歌声で癒やしてくれます。
程良くノイジーさを残しつつ、メロディの良さが引き立つアレンジに仕上がりました。寂寥感のあるポップな良曲の宝庫です。
1995年 5thアルバム
脱退したブレンダン・オヘア(Dr)に代わり、ポール・クイン(Dr)を新たに迎えたティーンエイジ・ファンクラブ。デヴィッド・ブランコとバンドの共同制作となる本作は、『バンドワゴネスク』と並んで高い評価を得ている作品です。全英7位を獲得しました。
アルバムは「About You」で幕開け。歪みの少ないギターとキャッチーなコーラスワーク、そして優しい歌とメロディに癒やされます。続く「Sparky’s Dream」は本作のリードシングル。ジェラルド・ラヴの甘い歌声と極上のポップメロディが、どこか懐かしさのある心地良い空気を醸し出して、優しい気分にさせてくれます。「Mellow Doubt」はアコギをバックに、ノーマン・ブレイクのアンニュイな歌がしみじみとしています。途中からリズム隊が加わるものの、感傷的で切ない雰囲気。「Don’t Look Back」はノスタルジックでポップなメロディがとても魅力的。サビでは力強いリズムと美しいコーラスワークが対照的です。そして「Verisimilitude」は透明感のあるギターと憂いのある歌メロで、切なくも魅力的なギターポップを展開します。派手さはありませんが、同じフレーズを何度も反復して耳に残る中毒性があります。「Neil Jung」はニール・ヤングをもじったもの。憂いのあるイントロがスピッツっぽいと思いました。そしてノーマンの哀愁漂う歌は、熱く込み上げてくるものがあります。美しくて涙を誘う名曲です。「Tears」は少し趣向を変えて、ピアノをバックに歌います。落ち着いたシンプルな楽曲は、途中からバンド演奏やストリングスが加わって盛り上げていきます。「Discolite」は冒頭こそマッタリしていますが、ポールの力強いドラムを中心に高揚感を煽り立て、躍動感のある楽曲へと変わっていきます。このワクワクする感覚がたまりません。続いて「Say No」はアコギを軸とした優しい演奏と、コーラスワークを駆使した甘くポップな歌に癒やされますね。終盤だけエレキギターで緩急つけます。「Going Places」は透明感のあるギターに浸っていると力強いベースでアクセントをつけます。落ち着いた楽曲に、ジェラルドの甘い歌声が乗り、ドリーミーな感覚を誘います。「I’ll Make It Clear」は爽やかながら、諦めのような寂寥感が漂います。間奏の切ないリードギターも魅力的。「I Gotta Know」はスローテンポで歌は落ち着いていますが、演奏はメリハリつけています。そして最後に2分に満たない小曲「Hardcore/Ballad」。速いテンポで粗っぽい演奏が始まったかと思えば30秒足らずで終わり、アコギ弾き語りのスローテンポな楽曲へ。対象的な2曲による組曲(?)ですね。
ギターから荒さは薄れ、切ないメロディが活きる良質なギターポップを展開します。ポップなメロディの宝庫で素敵です。
1997年 6thアルバム
全英3位とチャートアクション的には最高位を獲得も、米国では成功を得られませんでした。メンバーは前作に引き続き、ノーマン・ブレイク(Vo/Gt)、レイモンド・マッギンリー(Gt/Vo)、ジェラルド・ラヴ(Vo/B)、ポール・クイン(Dr)。
オープニングを飾る「Start Again」へイントロから爽やかなコーラスワークへと繋いで、清涼感に満ちています。主張しないものの、オルガンやアコギの味付けが魅力的ですね。そして「Ain’t That Enough」は本作の先行シングル。透明感のあるコーラスワークに、優しいサウンドが気持ち良いですが、諦めのような切なさを内包しています。「Can’t Feel My Soul」はアコースティックな感覚を持ち合わせつつ、ドラムが勢いをつけています。爽やかな楽曲に優しい歌唱が、何故か涙を誘います。続く「I Don’t Want Control Of You」はフォーキーなイントロから、コーラスを駆使した爽やかで美しい歌が始まります。懐かしい雰囲気に満ちていますね。終盤の転調もいい感じ。「Planets」はアコギが主体の落ち着いた楽曲で、優しくフォーキーな雰囲気。途中からストリングスを加えて楽曲を美しく彩ります。「It’s A Bad World」はベースが心地良い重低音を鳴らします。ギターも心地良い音色で癒やしてくれますが、サビではヘヴィに変貌してメリハリをつけます。「Take The Long Way Round」は躍動感のある演奏に乗せて、コーラスワークを駆使した優しい歌を歌います。続く「Winter」は、爽やかですが哀愁のあるメロディが良い。所々分厚いコーラスで歌を引き立て、優しさに溢れています。「I Don’t Care」は素朴でアコースティックな始まり方ですが、途中から力強いドラムを中心に躍動感のあるアグレッシブな楽曲へと変化。爽やかなようでいて、でもどこか哀愁が漂います。「Mount Everest」は陰りのあるスローテンポな楽曲。ダウナーでありながら、リズミカルな心地良さもあったりします。「Your Love Is The Place Where I Come From」は音数少なめの、素朴でシンプルなアコースティック演奏で歌を引き立てます。後半はエレキ色を増します。最後の「Speed Of Light」はリズミカルなドラムがリード。スペイシーなシンセで遊んでいますが、コーラスを駆使した歌は変わらないので、アルバムの中で浮くこともなく馴染んでいます。終盤の電子ピアノの音色が美しい。
全体的に爽やかながらも哀愁を内包していて、寂しい気持ちを誘います。アコースティック色が強まり、ざらついた感触が無くなった代わりに美しいメロディを堪能できます。
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