🇬🇧 Eric Clapton (エリック・クラプトン)
レビュー作品数: 2
スタジオ盤
1974年 2ndアルバム
エリック・パトリック・クラプトン、1945年3月30日生まれ。イングランド出身のミュージシャンで「スローハンド」のニックネームで知られるほか、ジェフ・ベックやジミー・ペイジと並んで3大ギタリストと呼ばれます。クラプトンは大の親日家で、海外アーティストとしては日本武道館公演の最多記録(日本人含めても歴代3位だそうです!)を持つほか、プライベートでも来日する彼はトンカツが大好物なのだとか。
そんなクラプトンはヤードバーズ、クリーム、ブラインド・フェイスやデレク・アンド・ザ・ドミノスといったキャリアを経て1970年よりソロ活動へ移行します。その後ヘロイン中毒に悩まされることになりますが、4年ぶりとなるスタジオ作品を制作。プロデューサーにはトム・ダウドが就きました。タイトルは滞在したコテージの住所だそうですが、ファンが押し寄せたため住所を変えることになったのだとか。
アルバムは「Motherless Children」で開幕。タッタカタッタカ軽快なドラムにオルガンの音色、陽気なベース…そしてクラプトンはブルージーなギターを弾きながら明るい歌を披露します。本作では数少ない疾走曲なので爽快です。続く「Give Me Strength」は穏やかでまったりとした1曲。アコースティックで優しい空気が流れています。「Willie And The Hand Jive」はジョニー・オーティスのカバー。ファンク色の強い1曲で、リズミカルでノリの良い演奏に乗せて優しく歌います。「Get Ready」もファンクっぽいリズムを持ちますが、静かで落ち着いた雰囲気です。イヴォンヌ・エリマンとデュエットを繰り広げる、大人びた楽曲です。「I Shot The Sheriff」はレゲエの神様ボブ・マーリーのカバー。ファンキーなギターやオルガン・ピアノの味付け、歌心のあるコーラスなど、原曲を上回るくらい魅力的なアレンジに仕上がっています。心地良い気だるさを感じられる名曲です。
アルバム後半は「I Can’t Hold Out」で幕を開けます。エルモア・ジェームスのカバー曲で、渋くブルージーなロックンロールです。続いて「Please Be With Me」はスコット・ボイヤーのカバーで、カントリー調のバラード。アコースティックな音色がまったりとしていて、クラプトンの優しい歌にも癒されます。「Let It Grow」はメロディアスなバラードで、ビートルズっぽいですがクラプトンのオリジナル曲です。囁くように甘い歌はポップで、ギターが歌を引き立てていて美しい。ラストの盛り上げ方は感動的です。「Steady Rollin’ Man」はロバート・ジョンソンのカバー。ファンク色が強く、リズミカルな演奏が強調されていてダンサブルな印象です。最後は軽快な「Mainline Florida」。躍動感があり、ラスト曲よりもアルバム前半に向いていそうな楽曲ですね。ご機嫌なコーラスワークに明るいオルガンなど楽しげな雰囲気に溢れています。
ゆったりとしていて優しい楽曲が並び、良くも悪くもギターではなく歌で聴かせる作品です。その中ではボブ・マーリーのカバー「I Shot The Sheriff」とバラード「Let It Grow」が突出している印象です。
1977年 5thアルバム
エリック・クラプトンの愛称「スローハンド」がそのままタイトルになった本作はエリック・クラプトンの名盤と名高い作品です。クリーム時代に激しい演奏を繰り広げ、ライブ中にギターの弦がよく切れてしまっていました。そして弦を張り替えている間、観客がゆっくり手拍子をして待っていたので、いつしか「スローハンド」というニックネームが付いたそうです。あまりに速い演奏で逆にゆっくり弾いているように見えることからスローハンドと呼ばれる…という定説は誤りだそうです(私は長らく勘違いしていました)。
ローリング・ストーンズとの仕事で知られるグリン・ジョンズのプロデュース。「Wonderful Tonight」はクラプトンのバラードの中でも人気の高い1曲です。
オープニング曲は「Cocaine」で、他にも名曲はありますがこれが突出して魅力的です。実はJ・J・ケイルのカバー曲。クラプトンの歌声もギターも渋いですが歌メロはキャッチーで、リズミカルな演奏とともに耳に残ります。続いて人気曲「Wonderful Tonight」。妻パティ・ボイドに捧げたラブソングですが、クラプトンの浮気が原因で1989年には離婚することに…。スライドギターがまったりと優しい雰囲気を作り、また歌メロもメロディアスです。「Lay Down Sally」はアップテンポでノリの良い1曲。マーシー・レヴィ、イヴォンヌ・エリマンといった女性コーラスが、クラプトンの渋めの声にうまくフィットし、軽快なリズムに乗せて高揚感を煽ります。「Next Time You See Her」はスライドギターやオルガン、アコギが明るく心地良い曲調を作り出します。メロディも明るいのですが、クラプトンの歌声は渋く落ち着いていますね。「We’re All The Way」はメロウで穏やかな楽曲です。
レコード時代のB面、アルバム後半は「The Core」で幕開け。9分近い楽曲で、ファンクとロックを掛け合わせた、躍動感の強い楽曲です。共同作曲者であるマーシー・レヴィとデュエットします。グルーヴ感のあるファンキーなリズムを軸に据えて、中盤ではスリリングなギターソロを披露。元キング・クリムゾンのメル・コリンズのサックスソロまであったりと、聴きごたえのある良曲ですね。「May You Never」は軽快で晴れやかな雰囲気ですが、優しい歌は消え入りそうな感じ。「Mean Old Frisco」は渋くブルージーな楽曲で、アーサー・クルーダップのカバーです。とても気だるげなロックンロールです。ラスト曲「Peaches And Diesel」はインストゥルメンタル。まったりとしてメロディアスなギターがとても心地良い雰囲気を作り出します。聴いていると癒される佳曲です。
クラプトンの名盤と名高い作品です。クラプトンは単曲では好きな楽曲がいくつもあるのですが、アルバムトータルだと個人的にイマイチな作品も多く…そんなクラプトンのキャリアの中では完成度も高い傑作だと思います。
関連アーティスト
スローハンドのニックネームはこの頃生まれました。
クリーム解散後、ジンジャー・ベイカーらとともに結成。
名曲「Layla (いとしのレイラ)」を生み出した1作限りのバンド。
大親友で、ビートルズ時代から交流があります。
クラプトンの友人で、互いのライブを観に行くくらいに親密でした。
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