🇬🇧 The Verve (ザ・ヴァーヴ)

レビュー作品数: 1
  

スタジオ盤

Urban Hymns (アーバン・ヒムス)

1997年 3rdアルバム

 ザ・ヴァーヴはイギリスのロックバンドで、1990年に結成しました。ブリットポップ全盛期にサイケデリックロックを奏でて独自の立ち位置を築きますが、セールス的には振るわず、1995年に解散。そして1997年に再結成を果たして、本作『アーバン・ヒムス』をリリースします。12週連続全英1位を獲得する大ヒットとなりますが、次作が出ることなく1999年には再び解散してしまいました。
 メンバーは、リチャード・アシュクロフト(Vo/Gt/Key)、ニック・マッケイブ(Gt)、サイモン・トング(Gt/Key)、サイモン・ジョーンズ(B)、ピーター・サリスベリー(Dr)の5人組。特にリチャードはオアシスのギャラガー兄弟と親交が深く、双方が楽曲を捧げています。

 彼らの代表曲「Bitter Sweet Symphony」でアルバムは幕を開けます。ストリングスが印象的な楽曲ですが、ローリング・ストーンズ「The Last Time」の無断サンプリングで、著作権問題で訴えられることになりました。ひたすら反復するストリングスに、リチャードの気だるい歌唱が乗り、サイケデリックな陶酔感を生み出します。なお、イギリスの心理分析の調査で「聴いていると悲しくなる曲」第1位に選ばれたのだとか。続く「Sonnet」はカントリーやブルース風味の落ち着いた演奏に、甘くメロディアスな歌が乗ります。メロディがとても魅力的な楽曲で、リチャードの歌は感傷的な気分を誘います。「The Rolling People」は泥臭さ全開で、サイケデリック的な混沌とした雰囲気もあります。ただ、リチャードの気だるげな歌はねちっこくないので、ドロドロした演奏の割には不思議と清潔感があります。「The Drugs Don’t Work」はアコギとストリングスを用いて、静かで湿っぽいバラードを展開。そして美しいメロディで盛り上げていきます。続いて6分半に及ぶ「Catching The Butterfly」は陶酔感の強い楽曲です。幻聴のようなノイズに、リズム隊が生み出す強いグルーヴが、心地良くもトリップ感に満ちた世界へと誘います。「Neon Wilderness」は、エフェクトで靄のかかったようなギターとボーカルが、シューゲイザーのようなサイケのような不思議な感覚を生み出します。そして「Space And Time」はメロディ重視のバラード。浮遊感のある演奏と、気だるく憂いのある歌唱が心地良さを生み出します。「Weeping Willow」は陰りのあるバラードで、リチャードの気だるい歌唱にやるせなさが漂います。「Lucky Man」はアコギを用いて柔らかいバラードを展開。途中からストリングスや泥臭いギターが加わって、楽曲を盛り上げていきます。「One Day」はドリーミーで落ち着いた演奏に乗る、憂いのあるバラードです。気だるいトーンで反復していきます。そして「This Time」はヒップホップ的、あるいはマッドチェスター的なダンサブルなリズムを取り入れ、アルバムの中でやや毛色が異なります。「Velvet Morning」はアコギを用いた穏やかな楽曲で、優しいメロディで盛り上げます。そしてラスト曲「Come On」。泥臭くてグルーヴ抜群の演奏で始まり、ハードなギターで引き締めつつも混沌とした楽曲を展開。ちなみに、コーラスにはオアシスのリアム・ギャラガーが参加しているのだとか。そして6分半ほどの空白を経て、隠しトラック「Deep Freeze」。やや実験色を伴ったヒーリング系のインストゥルメンタルです。

 「Bitter Sweet Symphony」のイメージで聴くと、バラードアルバムというよりむしろ泥臭くてサイケデリックなアルバムで驚かされます。収録時間が長くて、若干中だるみする印象は否めません。

Urban Hymns
20th Anniversary
The Verve
 
 

関連アーティスト

 リチャード・アシュクロフト(Vo/Gt/Key)とギャラガー兄弟が親友で、交流も深い。

 
 
 類似アーティストの開拓はこちらからどうぞ。