🇯🇵 ゆらゆら帝国 (ゆらゆらていこく)

レビュー作品数: 7
  

スタジオ盤

3×3×3

1998年 4thアルバム

 ゆらゆら帝国(略称:ゆら帝)は日本のロックバンドです。活動は長く、1989年に坂本慎太郎(Vo/Gt)を中心に結成し、翌年には亀川千代(B)が加入。1991年にはインディーズ1stとなる『ゆらゆら帝国』をリリースし、メンバーチェンジを繰り返しながら活動を続け、1997年には現メンバーとなる柴田一郎(Dr)が加入しました。坂本、亀川、柴田のスリーピースバンドとして2010年の解散までこのラインナップで活動を続けることになります。
 本作はメジャー進出後の1stアルバムで、インディーズ含めると通算4枚目となります。

 オープニングを飾る「わかってほしい」。ノイジーな爆音イントロと、スッカスカの歌パートのあまりのギャップに驚かされます。シンプルな演奏とヘタウマな歌は1970年代、昭和の香りが漂いますが、この独特のノリが気持ち良い。続いて「昆虫ロック」。亀川のベースラインが心地良いですが、これも時代にそぐわないオールドロック的なアプローチを行っています。「ユラユラウゴク」は9分に及ぶ楽曲です。坂本のスライドギターがまったりとしたムードを演出。起伏の少ない展開で、ノスタルジックな歌がゆらゆら揺さぶるような感覚です。後半からキーンと高音ノイズが耳をつんざくものの、楽曲は変わらずまったりしています。「ドックンドール」はシンプルなリフにベースとドラムが心地良いノリを生み出し、そして1970年前後のロックのような懐かしさを覚えます。ポップだけど脱力気味な歌もゆるくて魅力的。「発光体」はメジャーデビューシングル曲で、騒がしくノイジーなロックンロールです。荒々しいギターに、大きく動くグルーヴィなベースが特徴的ですね。続いて「つきぬけた」は僅か1分の超高速なガレージロック。パンキッシュで荒々しく、スカッと爽快です。「アイツのテーマ」は、「バットマンのテーマ」とか、昔のヒーローものを連想させるような古臭くも躍動感ある演奏が繰り広げられます。でも歌われている内容は消極的な君についてで、演奏とはギャップがありますね。タイトル曲「3×3×3」は、淡々と反復する演奏に、渋い声によるポエトリーリーディングで始まります。渋い歌声が近くで、シャウト気味の歌声が遠くから聞こえ、そして淡々とした演奏は徐々にノリが良くなっていき、いつの間にか強いトリップ感を生み出しています。「タートル・トーク」はややサイケ感のあるインストゥルメンタル。リズミカルなドラムに歌うようなベース、まどろむようなギターが幻覚的で心地良い世界へ連れて行ってくれます。そして9分超の楽曲「EVIL CAR」。ゆったりとして陽炎のように揺らめくような演奏と、渋いボーカルスタイルで歌を聴かせます。3分半くらいからテンポアップして、サイケや黎明期ハードロックのように混沌としてノイジー、そしてスリリングな演奏を延々展開します。騒がしいギターの後ろで淡々と同じフレーズを繰り返すベースが中々心地良い。終盤に落ち着いた演奏と渋い歌が戻ってきて終了。最後は「パーティはやらない」。スローテンポで、メロウで落ち着いた演奏と歌には渋い哀愁が漂います。最後に転調してメロディアスな印象で終わります。

 サイケだったり古いロックンロールを奏でたりとレトロ全開で、平成の作品なのに昭和の香りがプンプン漂います。中々個性的です。

3×3×3
ゆらゆら帝国
 
ミーのカー

1999年 5thアルバム

 メジャー2作目となる本作は72分の大ボリュームですが、タイトル曲「ミーのカー」が実に25分半にも渡る大作です。前作よりもガレージロック色を増し、ヒリヒリとしたスリリングな楽曲を繰り広げます。

 「うそが本当に」でアルバムの幕開け。シンプルなサウンドに鉄琴のようなキラキラした音を乗せ、呟くように静かに歌います。ややダウナーで素朴な楽曲です。続く「ズックにロック」は2ndシングルで、ガレージロックのようにノイジーなロックンロールを繰り広げます。坂本慎太郎の荒っぽいギターと、亀川千代の骨太なベースを中心に、ヒリヒリとしたスリリングな演奏を披露。歌も時折ヤケクソなシャウトがあったり激しいです。「アーモンドのチョコレート」はリズミカルな演奏でノリが良いですが、ギターはカミソリのように鋭利で、若干の音質の悪さがキレを鋭くしています。カッコ良いですね。「午前3時のファズギター」はサイケのような気だるい演奏に、低音の渋い声で呟くように歌います。そして間奏では豹変し、恐ろしくノイジーで暴力的なギターをかき鳴らしますが、さながらストゥージズのよう。「ボーンズ」はレトロで哀愁が漂う名曲です。渋くてメロディアスな楽曲は胸に染み入りますが、歌詞は不気味です。「人間やめときな’99」はサイケやガレージロックのような楽曲で、坂本の荒くつんざくようなギターがスリリングです。また、行進するかのように力強い柴田一郎のドラムは時折激しく荒れます。暴力的でカッコ良い。「ハチとミツ」はシンプルなロックンロールですが、スカスカな音ゆえに鋭いギターや心地良いベースがよく響きます。「悪魔がぼくを」は1999年の作品とは思えない古臭さがありますが、ヘヴィかつ気だるい独特のノリが心地良い。続く「太陽のうそつき」はインディーズ時代の楽曲を再録。荒っぽいギターによるシンプルなリフが印象的で、そして奇妙に色っぽく「太陽のうそつき 青空のうそつき」と歌う独特の展開も耳に残ります。まったりとメロウな「星ふたつ」は7分半に渡る楽曲です。起伏は少ないですが、全編を通して幻覚的に揺らめくギターの音色に癒やされます。綺麗な楽曲の次は、黎明期の原始ハードロックのような泥臭い「19か20」。これも7分近くあります。ブルージーでハードなギターを軸に据えた渋くヘヴィな楽曲で、うねるベースやヘヴィなドラムも炸裂、投げやりな歌い方もカッコ良い。中盤から更にヘヴィさを増し、スリリングな楽曲で楽しませてくれます。そして最後に25分を超えるタイトル曲「ミーのカー (LONG VERSION)」。シンプルかつ若干サイケな感覚を持つギターに心地良く低音を奏でるベース、淡々とリズムを刻むドラム。これらが単調に反復する演奏で別世界へと連れ去ろうとするので、ピンク・フロイドの「Echoes」を武骨にサイケに仕立てたような印象を抱きました。淡々とした演奏が主体で、歌はあるのですが耳馴染みの良い効果音のように演奏に埋もれています。派手さはないし楽曲の緩急もあまりないのですが、長さが不思議と苦にならず、終始心地良いトリップ感で楽しませてくれます。15分過ぎからドラムがいなくなり、歌をひたすら反復。サイケデリックな酔いそうな感覚を見せた後、淡々とした演奏と歌が戻ってきますが、歌は英語詞に変わっていたり、ギターがより幻覚的な音色を見せたりと変わっています。そして終盤に向けて徐々に緊張を高め、緊張を少し緩めて浮遊感漂う幻覚を見せます。

 1970年の作品と言われても違和感のない作風で、相変わらず癖が強いですが、明るくノリの良いロックンロールが増えて取っつきやすさが増しました。

ミーのカー
ゆらゆら帝国
 
ゆらゆら帝国III

2001年 6thアルバム

 ミニアルバム『太陽の白い粉』を挟んで発表された通算6枚目のフルアルバムですが、メジャーとしては3作目となるため『III』のタイトルが付いています。サイケデリックなジャケットアートがカッコ良いですね。前年にはフジロックフェスティバルにも参加しました。

 オープニングを飾る「でっかいクエスチョンマーク」はガチャガチャとした坂本慎太郎のギターと、シンバルが騒がしい柴田一郎のドラムなどによって、ノイジーかつ躍動感に溢れる演奏が繰り広げられます。歌もパワフルですが、激しくて心地良い演奏がより前面に出ている印象。爽快なノリですが7分もあります。「ラメのパンタロン」は無音の瞬間を作り出すことによってキャッチーなリフを引き立てます。スッカスカな音はガレージロックリバイバルに乗ったかのようですが、ゆらゆら帝国はブームと関係なしにガレージロックにも取り組んでいましたね。途中からノイジーで騒がしくなるものの、ノリノリなロックンロールで爽快です。続く「幽霊の結婚式」はゆったりとした楽曲で、1970年頃のような音を奏でるギターが心地良いムードを作り出します。「待ち人」はギターはカラッとしていますが、歌メロには少し哀愁が漂って渋い感じ。サビメロを彩るコーラスに歌謡曲っぽい昭和感が漂います。「ゆらゆら帝国で考え中 (Album Version)」は3rdシングルで、疾走感のあるパンキッシュなロックンロール。柴田のドラムがタッタカタッタカと焦燥感を煽り立て、時折早口な歌でまくし立てるかのよう。中々カッコ良いですね。「男は不安定」は亀川千代によるひたすら反復するベースが中毒性を生み出し、坂本のギターもサイケデリックで強烈なトリップ感があります。でも抑揚の少ない歌はドライというか、毒性の強い演奏にはやや浮いている印象で、ミスマッチな感じがこの楽曲をまた印象づけているのかもしれません。そして音を間引いて「砂のお城」。呟くような静かな歌に、音数少ないシンプルな演奏で哀愁を醸し出します。そして中盤くらいから音像のぼんやりした演奏が、ゆらゆらとサイケデリックな感覚を生み出しています。「頭異常なし」はギターとベースによる骨太なリフがカッコ良い、ハードなサウンドで気だるいノリのロックンロール。裏声のようなコーラスやオーケストラのような味付けがサイケ感を強めます。次曲と合わせてT・レックスっぽい。「頭炭酸」は耳に残るシンプルなリフがカッコ良い1曲。「うーうー 頭炭酸」の歌もやけに耳に残りますね。ラスト曲「少年は夢の中」はダウナーなコーラスにどことなくジョン・レノンを思い起こしましたが、坂本の昭和感のある歌を聴くとゆらゆら帝国でした。オルガンによる味付けもレトロな感覚を刺激します。

 相変わらずサイケやパンキッシュなガレージロックもあれば、グラムロックもあったり、オールドロックのオンパレード。耳に残るリフも多くて中々良いです。

ゆらゆら帝国III
ゆらゆら帝国
 
ゆらゆら帝国のしびれ

2003年 7thアルバム

 前作から2年ぶりとなる本作は『ゆらゆら帝国のめまい』と同時リリースされました。ガレージやサイケといったこれまでのような楽曲も一部に残しつつ、ガラリと変わって加工された音響系の楽曲が増えました。

 オープニングを飾る「ハラペコのガキの歌」はこれまでと違ったエレクトロニカ的なアプローチを見せます。無機質なドラムループにシンプルな音を鳴らすキーボード、女性コーラスなどを活用して音響的な楽曲を展開。相変わらず癖があって独特な坂本慎太郎の歌声がギャップを感じさせますが、中毒性の強さは変わらず。「時間」はタッタカ駆け足なイントロも束の間、歌が始まるとスローテンポで渋くメロウな楽曲へと変貌。これまでの楽曲のように昭和感の溢れる作風ですが、女性コーラスが加わったことで洗練された印象です。語り口調になるパートで歌われている内容が哲学的です。続く「侵入」は9分超の楽曲で、柴田一郎が静かな空間にドラムを淡々と刻みます。極端に音数が少なく、起伏もほとんどない楽曲ですが、絶妙な音選びが不気味な空気を醸し出していて、ホラーのように焦燥感を掻き立てます。後半に出てくるハミングも不気味。終盤は意図的にパターンを外したドラムで違和感を残して終了。そして「誰だっけ?」は本作で最もダークかつスリリングな楽曲で、ヒリヒリとした緊張感に満ちたサウンドを展開。疑問を投げ掛け続ける歌詞に焦燥感を煽られ続け、ノイズが恐怖を掻き立てます。「傷だらけのギター」は一転してノリの良い、これまでのようなオールドロック風の楽曲です。耳に残る坂本のギターリフは勿論ですが、亀川千代のベースや柴田のドラムも躍動感があって魅力的です。古臭くて、そしてカッコ良い。リズミカルな「夜行性の生き物3匹」はハードなロックンロール。リズムの取り方がどこか祭囃子のような和風な趣も感じさせます。間奏ではキンキンとした荒いギターを聴かせます。7分超えの「貫通(アルバムバージョン)」はエフェクトをかけたボーカルが幻惑的で時に色っぽく、そしてベースやドラムが幻覚的な世界へと連れ去ります。浮遊感のある楽曲に心地良く浸っていると、突如強烈なノイズを立てるギターによって電撃が走るかのように痺れさせられます。中盤の演奏パートはギターを爪弾く音やパーカッションに強めのエフェクトをかけて、摩訶不思議な体験ができます。「機械によるイジメ(インストゥルメンタル)」は淡々としたドラムに乗せて、アンビエントのような優しい響きと不快なモスキート音を組み合わせて、ゆったりと不思議な感覚を与えるポストロックな楽曲です。ラストは7分に渡る「無い!!」。優しくて寂寥感のあるサウンドが胸に染み入ります。歌からもノスタルジックな雰囲気が漂い、しんみりと聴かせてくれる1曲です。

 前半は閉塞感に満ちた息の詰まる楽曲が揃っており、「誰だっけ?」で緊張は頂点に。「傷だらけのギター」でこれまでの作風に戻して安心感を与えつつ、後半も実験的な楽曲で不思議体験をさせてくれる、魅力的なアルバムです。

ゆらゆら帝国のしびれ
ゆらゆら帝国
 
ゆらゆら帝国のめまい

2003年 8thアルバム

 『ゆらゆら帝国のしびれ』と同時リリースされた作品で、ジャケットも対のようになっていますね。こちらは歌ものが中心となっていて、ゆったりと聴かせる楽曲が多いです。ちなみに元々『しびれ』『めまい』というタイトルにしようとしていたところ、『めまい』は他のアーティストとタイトル被りしそうだから「ゆらゆら帝国の」と付け加えたそうです。

 亀川千代のベースのみで始まる「バンドをやってる友達」。女性ボーカルを起用していますが華やかさはなくて、メロディアスな旋律を淡々と歌います。演奏もシンプルさを極めていますが、ベースが心地良く響いて安らぎを覚えます。続く「ドア」はイントロから哀愁たっぷりでとても渋いです。平成も半ばに差し掛かっているのに、まるで昭和の楽曲をカバーしたかのような錯覚。坂本慎太郎の歌唱も昭和感を増長しますが、でもこの哀愁が中々良いですね。「恋がしたい」はファンクを取り入れたギターがノリノリですが、渋いトランペットが入るとジャジーな感覚も生み出します。この楽曲も女性ボーカルを起用して、浮遊感のあるメロウな歌を展開。「通りすぎただけの夏」は隙間のあるイントロに郷愁を覚えます。そしてスカスカな演奏とは対照的に、ハミングにリバーブをかけているのか楽曲全体を歌で包み込むような感じ。ノスタルジックで切ないです。続いて「とある国(インストゥルメンタル)」。アコースティックな楽器編成にマンドリンのような楽器を響かせ、メランコリックで幽玄な印象を生み出します。途中からシンセストリングスが加わり、美しさを引き立てたり不協和音を加えたり。独特の世界を見せてくれます。終盤に柴田一郎のドラムが前面に出てきて、楽曲をまとめにかかります。そのまま続く「からっぽの町」は古びたロックを展開。つんざくようなギターに躍動感あるリズム隊、そして坂本のメランコリックな歌は哀愁を誘います。「ボタンが一つ」は変に感情込めずに歌った方が良いだろうということから、歌詞の意味が分からない子どもに歌わせてみたそう(ちなみにエンジニアのお子さんなのだとか)。僅か3分足らずですが、独特の存在感を放つ楽曲です。「冷たいギフト」は演奏はややヘヴィですが鉄琴が和らげ、そしてメロディはメランコリックで歌をしんみりと聴かせます。ベースラインが中々心地良い。ラストは7分超えの「星になれた」。しっとりとした楽曲で、哀愁漂う歌をメロウな演奏で聴かせます。間奏はとてもドラマチックに盛り上げ、美しくて切ない。メロディアスな良曲です。

 女性ボーカルや子どもが歌ったりと様々な試みがなされています。バンドサウンド的な躍動感には欠けますが、メロディアスな楽曲が揃っています。

ゆらゆら帝国のめまい
ゆらゆら帝国
 
Sweet Spot

2005年 9thアルバム

 前作のあと、ライブ盤『な・ま・し・び・れ・な・ま・め・ま・い』とベスト盤『1998-2004』をリリース。本作はオリジナルアルバムとしては2年ぶりのリリースとなります。その間にレーベル移籍を挟んでいますが、ゆらゆら帝国の持つ独特のスタイルは変わっていません。

 オープニング曲「2005年世界旅行」は7分半近い楽曲です。効果音も駆使して宇宙を漂うかのようにスペイシーで、そして淡々と同じフレーズを刻む柴田一郎のドラムが中毒性を生みます。ですがダウナーな歌も影響してか、浮遊感を持ちつつも神秘的でどこか不穏な空気が支配します。続く「ザ・コミュニケーション」は坂本慎太郎による怪しげなリフと歌が印象的。プリミティブなドラムも怪しさを掻き立てます。変な楽曲ですが、耳に残るひねたキャッチーさを持っています。中盤の演奏パートはスカスカ具合が古いサイケっぽい感じ。「ロボットでした」は亀川千代のベースが怪しげに蠢きます。ブラックミュージック的なグルーヴを持った楽曲や歌に浸っていると、中盤からはノイズ混じりのメロトロンのような音が不協和音を奏でて、どこか別の世界へと連れ去るかのよう。強いエフェクトをかけて、悲鳴のような猫の鳴き声のような音を立て…そしてメインメロディが戻ってきます。不思議な感覚です。そしてアクセントとなる「急所」はパンキッシュに弾けたロックンロールです。オープニング3曲が怪しさ全開でしたが、これは切れ味鋭く比較的ストレートでわかりやすいです。「タコ物語」はとてもスッカスカで変な楽曲です。シンプルなギターリフは変なのに耳に残るし、スカスカ故に「生き物さ」を連呼する歌も妙に癖になる。そして歌詞を読むと下品。笑 「はて人間は?」は3分に満たない楽曲で、リズミカルで跳ねるような躍動感に満ちています。でもそこまで明るい訳ではなく陰りがあります。「貫通前」は柴田のドラムがダイナミックに響く、破壊力に満ちたパワフルな疾走曲です。ガチャガチャ鳴るギターもさることながら、炸裂するシンバルやドラムが全て持っていくので爽快です。そして表題曲「スイートスポット」。即興的なピアノから始まる楽曲です。スカスカなのにスペイシーな楽曲は初期ピンク・フロイドのような実験性があり、でも女性コーラスを交えた歌はメロウで、歌ものとしても聴かせてくれます。「ソフトに死んでいる」はドラムとベースがパワフルな重低音をズンズン響かせ、幻覚的なギターとは対照的。強烈なエネルギーに満ちていますが、聴いていると気が狂いそうになります。ラスト曲「宇宙人の引越し」は、紙を引き裂くような強烈なノイズがリズムを刻み、まるでクラウトロックのよう。不快なノイズは耳を背けたくなりますが、でも歌はしっとりとしていてゆったりと聴かせるというギャップに満ちています。

 実験的なアプローチを行いつつも、やみつきになる楽曲が散りばめられています。序盤よりも中盤以降の方が取っつきやすい印象です。

Sweet Spot
ゆらゆら帝国
 
空洞です

2007年 10thアルバム

 本作はゆらゆら帝国のラストアルバムにして、最高傑作との呼び声高い作品です。テーマとして「空っぽの感覚」を突き詰め、シンプルなサウンドで一貫したコンセプトで奏でられる楽曲群は、彼らの原点であるサイケデリック色を出しつつもミニマルな反復が取り入れられています。メンバーはメジャーデビュー以来変わらず、坂本慎太郎(Vo/Gt)、亀川千代(B)、柴田一郎(Dr)のラインナップ。

 オープニングを飾る「おはようまだやろう」はイントロから音像のぼやけた幻覚的に揺らめく感覚が漂い、サックスが渋く味付け。アンニュイに歌う坂本の歌はメロウで優しく、ですがセンチメンタルに浸れます。女性コーラスも心地良い浮遊感がありますね。続く「できない」は柴田のリズミカルなドラムで幕を開けます。ノリが良いようでいて、ギターとベースの無機質な反復は不安も掻き立てます。「あえて抵抗しない」も前曲と似たようなリズミカルかつ無機質な反復が特徴的で、続けざまに流れるので中毒性もありますね。小気味良いドラムにブンブン唸るベース、微睡むように幻覚的なギターが合わさって心地良さを生み出します。「やさしい動物」は、ブルースのような泥臭さとサイケな感覚が混ざった気だるさがあり、歌も心なしかソウルフルな気もします。大きな盛り上がりもなくひたすら反復するのですが、これが地味に中毒性を持っているんですよね。「まだ生きている」はややテンション低めなビートルズといった趣で、気だるげにポップな楽曲を展開。後半、間奏で少しだけ激しい側面が垣間見えてハッとさせられます。6分半を超える「なんとなく夢を (Album Version)」はメロウで昔懐かしい雰囲気が漂う楽曲で、優しい歌には哀愁が漂います。ベースラインが良い感じ。「美しい (Album Version)」はシングル曲ですが、シングルにするには派手さに欠ける印象。ですが淡々と反復して中毒性のあるこの楽曲は、他のアルバム曲ともよく馴染んで心地良く浸れます。そのまま続く「学校へ行ってきます」は、冒頭テンションの低い「行ってきます」がシュール。歪んだフルート(?)の音が幽霊でも出そうな空気を醸し、飛び交う不快なノイズが不気味な感覚を煽り立てます。実験的でアヴァンギャルドな楽曲なので、本作においては異様な存在感を放ちます。続く「ひとりぼっちの人工衛星」は前曲がぶっ飛んでいることもあってか、とてもまったりとした印象を受けます。浮遊感のある演奏に「静まれ 嵐 静まれ 暴力 静まれ 意味のない 争い」というメッセージが響きます。ラストに控えるのは表題曲「空洞です」。これが名曲なんです。怪しげなリフとパーカッションでエスニックな雰囲気を醸したかと思えば、小気味良いリズムと気持ちの良いグルーヴに乗せて「俺は空洞 でかい空洞」と哀愁の歌メロを繰り広げます。切ないのですが、口ずさみたくなるようなキャッチーさがあり、やみつきになりますね。メロウなサックスや、メロトロンのような音色にも心安らぎます。

 派手さも盛り上がりもありませんが、全編通して揺さぶられるような感覚が心地良く、また空虚感や哀愁が切なく沁みる作品です。

 ゆらゆら帝国は2009年に結成20周年を迎えたものの、翌年2010年には「完全に出来上がってしまった」と、本作の先に新しいことを見出せなくなったことを理由に解散しました。

空洞です
ゆらゆら帝国
 
 
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