🇬🇧 Anthony Phillips (アンソニー・フィリップス)
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ジェネシス紹介動画&メンバーソロ
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スタジオ盤
1977年 1stアルバム
イングランド出身のミュージシャン、アンソニー・エドウィン・フィリップス。1951年12月23日生まれ。プログレバンドジェネシスの初代ギタリストとして活躍。2nd『侵入』で脱退してしまうものの、バンドの方向性を決定づけるのに貢献しました。脱退理由は、一説によるとステージ恐怖症だとか。
12弦ギターを弾きこなすフィリップスは、ソロ作でも初期ジェネシスに似たファンタジックな世界観を見せてくれます。またマイク・ラザフォードやフィル・コリンズ、スティーヴ・ハケットの実弟ジョン・ハケットなど、ジェネシス人脈のミュージシャンが参加。残念ながらパンク全盛期の市場では受け入れられず、セールス的に成功しなかったようですが、初期ジェネシスの延長にある作風は魅力的です。
僅か1分のインストゥルメンタル「Wind – Tales」で幻想的なハーモニーを聴かせた後、続くは「Which Way the Wind Blows」。牧歌的で繊細なギターが柔らかい音色を奏で、優しく歌うボーカルはフィル・コリンズ。初期ジェネシスの楽曲と並んでいても全く違和感のない作風です。「Henry: Portraits from Tudor Times」は組曲で、オリジナルは全6部で12分、2015年の『Definitive Edition』では全7部14分にアップデートされています。私の手持ちは14分のものでした。華やかなファンファーレで幕を開けた後、繊細で憂いのあるアコギが心地良く響きます。中世的な雰囲気からトラッドっぽい雰囲気に変わりまったりと展開しますが、6分手前あたりからジャカジャカとギターをかき鳴らして躍動感が生まれます。そしてアコースティック主体のサウンドをエレキギターとメロトロンが呑み込み、壮絶な演奏に加えて変拍子まで展開され、とてもスリリングに。10分手前くらいで静寂が訪れ、再び繊細な音色に戻ります。ラストに、序盤に流れたファンファーレが流れ、そこに賛美歌のようなコーラスが加わっています。ファンタジックで聴きごたえのある組曲でした。「God If I Saw Her Now」はヴィヴィアン・マコーリフとフィル・コリンズがデュエット。繊細なアコースティックサウンドに合わせて歌も繊細です。
アルバム後半は1分に満たないインストゥルメンタル「Chinese Mushroom Cloud」で開幕。短いながら、本作でも飛び抜けてダークな雰囲気を見せます。続く表題曲「The Geese and the Ghost」は2部構成の組曲で、15分超のインストゥルメンタル。序盤からアコギが折り重なって、とても美しい音色でファンタジックな世界観を作り出します。5分過ぎた辺りからフルートやオーボエ等の木管楽器が牧歌的な音を奏で、優しくほのぼのとした雰囲気に。そして8分を境に雰囲気が変わるので、パートが変わったことがわかりますね。幻想的な音色はそのままに、しかし煽るような速いテンポで焦燥感を掻き立てます。美しいのですが同時にスリリングでもあり、リズムチェンジを駆使して壮絶に盛り上げ11分半過ぎた辺りで緊張感はピークに達します。そこからは落ち着きを取り戻し、憂いを帯びた美しいメロディを奏でます。そして心地良くアコギをジャカジャカ鳴らし、ラストに向けて緊張を増しながら終焉。続いてピアノがノスタルジックな音色を奏でる「Collections」へ。フィリップスがボーカルを取ります。途中ストリングスが加わり、昔の映画のようなレトロな雰囲気が漂います。そのまま続くラスト曲「Sleepfall: The Geese Fly West」はインストゥルメンタル。幻想的で美しい音色はドリーミーな感覚を誘います。
初期ジェネシスの作風そのままの良作です。フィリップスだけでなく、本作の作曲や演奏にも大きく貢献したマイク・ラザフォード、彼ら2人が初期ジェネシスの中世的で繊細なアコースティックパートを支えてくれていたのだと実感できます。
関連アーティスト
アンソニー・フィリップスの古巣。2nd『侵入』まで在籍。
パブリックスクール時代の学友にして、ジェネシス在籍時のバンド仲間達。
アンソニー・フィリップス脱退後のジェネシスメンバーで、ソロ作品で交流があります。
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