🇬🇧 Badfinger (バッドフィンガー)
レビュー作品数: 1
スタジオ盤
1970年 3rdアルバム
バッドフィンガーは英国のロックバンドです。ウェールズ出身のピート・ハム(Vo/Gt/Key)とイングランド出身のトム・エヴァンス(Vo/B)を中心に結成されました。結成は古く、1961年からアイヴィーズ名義で活動。後にビートルズのアップル・レコードから1stアルバムを出すも、泣かず飛ばずな状況。そこでバンド名をアイヴィーズからバッドフィンガーに改名し、ビートルズの弟分的な存在として再デビュー。
本作はバッドフィンガー名義では2作目、バンド通算では3作目の作品となります。本作からは「No Matter What」(邦題「嵐の恋」)がヒット、私もこの曲で彼らを知りました。この時点のメンバーはピートとトムに加え、ジョーイ・モーランド(Vo/Gt)、マイク・ギビンズ(Dr)。プロデューサーにはジェフ・エメリックとマル・エヴァンズ。
アルバムは軽快な「I Can’t Take It」で幕開け。ノリノリなリズムが気持ち良いロックンロールで、メロディもキャッチーで聴きやすいです。「I Don’t Mind」はゆったりとした楽曲。気だるげな雰囲気が漂う中で、間奏のピアノが綺麗でアクセントになっています。「Love Me Do」はビートルズの同名曲…ではなくバッドフィンガーのオリジナル曲。イントロからドラムが高揚感を煽り、ノリの良いロックを展開します。歌声がポール・マッカートニーっぽい。「Midnight Caller」はアコギとメロディアスな歌によりしんみりと哀愁が漂います。ビートルズっぽい雰囲気ですね。そして名曲「No Matter What」。ヘヴィなイントロから耳に残りますね。私は岡本仁志(GARNET CROW)のカバーを先に聞いていたので、それと比べると躍動感が薄い気がしてしまいますが、そうは言ってもこの楽曲の魅力はメロディの良さ。口ずさみたくなるようなキャッチーな歌は素晴らしいです。ヘヴィなオルガンも良いです。続く「Without You」は名バラードで、後にハリー・ニルソンがカバーしたことで注目を浴びることになりました。大人しめな演奏に乗る哀愁の歌メロが切なさを誘いますね。渋くて味のある良曲です。
レコードでいうB面、アルバム後半は「Blodwyn」で始まります。アコギが小気味良くてリズミカルなポップ曲です。牧歌的でほのぼのとしています。「Better Days」はノリの良い演奏と少し気だるげな歌が印象的なポップ曲。ギターソロが良い。「It Had To Be」は少し影がありますね。渋い歌メロにブルージーなギターソロも味があります。「Watford John」はノリノリなピアノが特徴的な、少しハードなロックンロール。リズミカルな演奏と力強い歌唱で楽しませてくれます。「Believe Me」はビートルズの「I Want You」に似たメロディで、件の楽曲から粘っこさを取り除いてポップにしたような雰囲気です。盛り上がる場面は結構ドラマチックで魅力的。ラストの「We’re For The Dark」はアコギ主体の演奏で幕開け。素朴なサウンドは歌を引き立てますが、途中からベースやストリングスなどの楽器が加わって徐々に盛り上がっていきます。歌うようなベースが中々良い。
ビートルズの弟分と言われるだけあって、全編を通してビートルズに似た雰囲気が漂います。佳曲がいくつかありますが、「No Matter What」が突出していて、個人的にはこの楽曲目当てのアルバムです。
本作で人気を獲得してその後も活動を続けたものの、マネジメントの問題で財政難に陥り、レーベルとの訴訟問題にも発展。1975年には貧困に絶望したピートが、1983年には権利問題の訴訟疲れのためトムがそれぞれ自殺するという、悲劇的なかたちでバッドフィンガーは終焉を迎えます。
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