🇺🇸 Beatallica (ビータリカ)

レビュー作品数: 2
  

スタジオ盤

Sgt. Hetfield's Motorbreath Pub Band (サージェント・ヘットフィールズ・モーターブレス・パブ・バンド)

2007年 1stアルバム

 ビートルズ・ミーツ・メタリカ。両バンドのトリビュートバンドです。米国出身で、元々はインターネットで音源を無償公開しており、メンバーは匿名で活動していました。そこにビートルズの版権を持つSony/ATV Music Publishingがビートルズの著作権侵害として、ウェブサイトの閉鎖、さもなくば法的措置に訴えると通告。これに対してビータリカのファンが猛抗議し、そこにメタリカのラーズ・ウルリッヒが顧問弁護士を仲介役に立てて鎮火に回り、最終的にビータリカは黙認されることになりました。そのうえアルバムリリースまでこぎつけたのですから大したものです。なおビートルズの版権元はこのような対応を取りましたが、メタリカ側はと言うと、ラーズ・ウルリッヒ、ジェイムズ・ヘットフィールド、カーク・ハメットがビータリカのファンを公言するという寛大な対応でした。
 さて本作のメンバーは、Jaymz Lennfield(Vo/Gt)、Grg Hammetson(Gt/Vo)、Kliff McBurtney(B/Vo)、Ringo Larz(Dr)。日本語表記が見当たらなかったのですが、英語の方が誰をもじったのかよくわかりますよね?笑 ビートルズとメタリカのメンバー名から拝借した芸名で活動しています。ボーカルは本家ジェイムズ・ヘットフィールドそっくりの声質で、語尾の「~~ウーオァ」とか「~~エーァ」とか、誇張したような歌い方がいちいち笑わせてきます。

 表題曲「Sgt. Hetfield’s Motorbreath Pub Band」で開幕。ビートルズをメタリカ風に演じるというスタイルで、ビートルズのあの名曲を、引きずるようなリフや、野太いボーカルで歌い倒します。続く「Revol-Ohh-Tion」はスラッシュメタル風「Revolution」ですね。ヘヴィな高速リフに圧倒されます。「Blackened The U.S.S.R.」はタイトルからも分かるとおり、「Blackened」のリフが出てくる「Back In The U.S.S.R.」。元ネタ曲が大好きなので、メタリカ風アレンジにワクワクします。「Sandman」はイントロはまんま「Enter Sandman」ですが、歌になると妙にノリ良くご機嫌な雰囲気に。よく聴くと「Taxman」と掛けているのだとわかります。「Helvester Of Skelter」はビートルズで最もヘヴィな楽曲「Helter Skelter」を更に重たくアレンジしています。サウンドは重厚ですが、意外とコーラスは美しいんですよね。ノリノリのスラッシュメタル曲「A Garage Dayz Nite」を爽快にぶちかました後、バッキバキのリフで圧倒する「Anesthesia (I’m Only Sleeping)」で楽しませてくれます。「Leper Madonna」もヘヴィながらご機嫌なノリを生み出すリフが爽快。本作中最も重たい「Ktulu (He’s So Heavy)」は絶望感溢れるダークな雰囲気。原曲「I Want You (She’s So Heavy)」も粘っこくヘヴィな楽曲でしたが、ヘヴィメタルの鈍重でズシンとくる一撃の重さが非常にスリリングなアレンジです。ドラムが特に重たい。一転して「For Horsemen」はポップで甘いメロディ。…を、スラッシュメタル風にアレンジして、野太い声で歌う。真面目なんだけど、そのギャップに笑ってしまいます。「Hey Dude」はアコギの美しいアルペジオで始まります。メロディは「Hey Jude」ですが、ボーカルを聴くとメタリカそのものです。序盤は大人しいですが、後半に向けてどんどん重厚になっていく。これがなかなか感動できるんです。そしてラスト1つ手前に「Sgt. Hetfield’s Motorbreath Pub Band (Reprise)」と、テンポアップしたリプライズを入れるところに原作リスペクトを感じます。最後に「…And Justice For All My Loving」で超速スラッシュの「All My Loving」を聴かせて終了。

 タイトルをもじっただけでなく、リフも組み合わせて良いとこ取りしたり、ビートルズとメタリカ両バンドへの愛が溢れた作品になっています。キワモノではありますが完成度は非常に高く、笑い飛ばしながらもその出来には感服です。

Sgt. Hetfield’s Motorbreath Pub Band
Beatallica
 
Masterful Mystery Tour (マスターフル・ミステリー・ツアー)

2009年 2ndアルバム

 ビータリカのアルバム第2弾。よくぞリリースしました。ちなみに、私は未聴ですが3rdアルバムまでリリースしています。凄い。
 本作は『マジカル・ミステリー・ツアー』と『メタル・マスター』をパロったジャケットアートだけでも爆笑ものですね。作品序盤はこれら2作品を意識させる楽曲の並びとなっています。前作に比べるとビートルズよりもメタリカ色の方が強くなっている気がします。
 なお2008年にGrg Hammetson(Gt/Vo)が脱退してGrg Hammetson III(Gt/Vo)が加入。ちなみに2006年までいた初代はKrk Hammetson(Gt/Vo)。メタリカはクリフ亡き後のベーシストが安定しませんが、ビータリカはリードギターが安定しないようです。

 オープニング曲「The Battery Of Jaymz And Yoko」はタイトルにもあるとおり、メタリカの超名曲「Battery」が軸になっており、そこに「The Ballad Of John And Yoko」の歌メロ要素を加えたようなアレンジになっています。始まりは普通に「Battery」なので、途中からメロディが変わるまでビータリカによるパロディだと気づかないかもしれませんね。続く表題曲「Masterful Mystery Tour」は、「Master Of The Puppets」と「Magical Mystery Tour」ですね。どちらの原曲も大好きなのでワクワクして聴いています。やはり歌メロはビートルズ、イントロや間奏はメタリカという趣で、ヘヴィなサウンドから突如ポップな歌メロが飛び出す展開には笑ってしまいます。続く「Fuel On The Hill」は「Fuel」の色合いが強いかな。強烈な重低音を響かせます。「And I’m Evil」はラストの「Die die die!」の連呼が耳に残ります。続いて「Everybody’s Got A Ticket To Ride Except For Me And My Lightning」はタイトルが長いですが、3曲の融合。ツーバスの連打だったり、ヘヴィなサウンドが強調されており、メロディはビートルズですがポップ色は控えめでシリアスな印象です。「Running For Your Life」は自然に馴染んでいて、メタリカの新曲のように聞こえるため普通にカッコ良い。「The Thing That Should Not Let It Be」も普通に良い曲なのです。自然に融合を果たして名曲になっているという。ヘヴィなサウンドと野太いボーカルとは対照的にコーラスワークは美しい。「Hero Of The Day Tripper」は「Day Tripper」のキャッチーなメロディが活きています。ヘヴィなアレンジが中々良い。ここまでカッコ良い楽曲が続きましたが、続く「Got To Get You Trapped Under Ice」には私がビータリカに求める楽曲がありました。跳ねたリズムに乗せて、「Got To Get You Into My Life」を野太い声と合いの手で歌う、楽しそうな楽曲です。間奏の速弾きギターが強烈な「I’ll Just Bleed Your Face」に続き、「I Want To Choke Your Band」(=首絞めたい)とタイトルから笑わせてくれます。原曲の「I Want To Hold Your Hand (抱きしめたい)」をヘヴィなサウンドでアレンジした楽曲で、こういう楽曲は大好きです。最終曲「Tomorrow Never Comes」もタイトルだけで笑えますね。音が鈍重なのでサイケデリックな浮遊感は薄いですが、フワフワしたギター音が入ってサイケ感を少しだけ出しています。

 ビートルズ色が少し薄れてメタリカ色が増したような印象で、ある意味自然に聴かせる楽曲が増えました。個人的にはパロディ全開の前作の方が好みですが、ジャケットアートについてはこちらに軍配が上がります。

Masterful Mystery Tour
Beatallica
 
 

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