🇬🇧 Chris Squire (クリス・スクワイア)

レビュー作品数: 1
  

スタジオ盤

Fish Out Of Water (未知への飛翔)

1975年 1stアルバム

 イエスのベーシストとして知られるクリス・スクワイア(フルネームはクリストファー・ラッセル・エドワード・スクワイア)。1948年3月4日生まれ、2015年6月27日没(享年67歳)。メンバーチェンジの多いイエスにおいて、結成から亡くなるまで唯一在籍し続けたオリジナルメンバーでした。クリスの命日である6月27日に本作レビューを追加します。
 イエスの『リレイヤー』発表後、メンバーそれぞれソロアルバムを出そうという企画が持ち上がり、その第2弾としてクリスのソロがリリースされました。長いキャリアにおいてソロは本作と2007年の2nd『Chris Squire’s Swiss Choir』のみで、イエスや周辺のプロジェクトが主な活動でした。ちなみにタイトルにもある「Fish」とはクリスの愛称で、メンバーと部屋をシェアして暮らしていた頃、常に長風呂で占拠していたことから「Fish」と呼ばれるようになったのだとか。

 オープニング曲は「Hold Out Your Hand」。イントロからバリー・ローズの弾くオルガンが重厚な雰囲気を作ります。そしてクリスの歌が始まると爆音ベースがブイブイと響き渡り、ベーシストとしてのクリスを堪能できます。でも穏やかなメロディや、イエスではコーラスでも重要な役割を担うクリスの歌はとても聴きやすく、単なるベーシストではなく作曲や歌においてもイエスで貢献していることがよくわかります。そのまま続く「You by My Side」はピアノ主体のまったりとした楽曲。フルートとピアノが優しく穏やかな空間を生み出し、クリスの歌もセルフで何重にも重ねて優しいメロディを届けてくれます。心が温まる1曲です。終盤のストリングスの演出も結構感動的。そして「Silently Falling」は11分半に渡る大曲。オーボエやフルートなど木管がクラシカルな雰囲気ですが、歌が始まると躍動感ある演奏に変わり、爆音で唸るベースと哀愁のメロディが際立ちます。リズムチェンジも多用していますね。新旧イエスメンバーのビル・ブラッフォードやパトリック・モラーツも参加した豪華な顔ぶれで、中盤からはドライブ感のある演奏バトルを繰り広げるのでとてもスリリング。瞬間最大風速で言えばイエスに勝るとも劣りません。終盤はまた哀愁が漂い、クリスの「Silently falling… Silently falling…」の切ない連呼がじんわりと胸に染み入ります。寂寥感に満ちてドラマチックですね。
 アルバムは後半に突入。「Lucky Seven」はビル・ブラッフォードのドラムとメル・コリンズのサックスでジャジーなキング・クリムゾンといった趣です。アンドリュー・ジャックマンによる落ち着いたエレピも良いですね。メロウな演奏によく合うクリスの優しい歌も心地良いですが、歌とは対象的にベースはブンブンと唸りを上げています。笑 ラスト曲「Safe (Canon Song)」は15分近い大作。序盤の盛り上がりは結構壮大ですね。ハープやフルートなどの優美なオーケストラをイエスのリズム隊が支える構図。演奏パートはやや冗長ですが、そんな中で爆音ベースが際立ちます。中盤からはサイケっぽく混沌としており、カオスで暴力的に変わりゆくオーケストラにビートルズの『サージェント・ペパーズ〜』やピンク・フロイドの『原子心母』のような感覚も。緊張を高めて鳥肌もののクライマックスを迎えると、1分ほどの余韻を残して終了。

 イエスメンバーのソロ作品はいくつか聴きましたが、その中では間違いなく本作が一番良いです。ベーシストとしてのクリスを堪能できるだけでなく、楽曲の構成力やメロディの良さ、そしてコーラスワークにおいてもイエスで重要な役割を果たしていたことがよくわかる作品に仕上がっています。

Fish Out Of Water
(2CD Remastered & Expanded)
Chris Squire

関連アーティスト

 本家バンド活動。ベーシストとして活躍、唯一在籍し続けたオリジナルメンバーです。

 
 イエスのバンド仲間達。
 
 元ジェネシスのスティーヴ・ハケットのいくつかのソロ作品にゲスト参加しています。
 
 スティーヴ・ハケットと一作限りのコラボレーション。
 
 
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