🇬🇧 Depeche Mode (デペッシュ・モード)

レビュー作品数: 14
  

スタジオ盤①

ヴィンス・クラーク在籍時

Speak & Spell (ニュー・ライフ)

1981年 1stアルバム

 イングランド出身のシンセポップバンド、デペッシュ・モード(略称DM)。日本では知名度は低いものの欧米では絶大な人気を誇り、全世界で1億枚以上を売り上げ、ニューウェイヴ界隈のバンドでは大成功したグループです。2020年にロックの殿堂入りを果たしました。
 ヴィンス・クラーク(Key)とアンディ・フレッチャー(Key/B)が学生時代にバンドを結成。その延長でしばらく活動したのち、マーティン・ゴア(Gt/Key)を加えて1980年に「Composition Of Sound」を結成。そこにデイヴ・ガーン(Vo)を招いて、この4人でバンド名を新たにデペッシュ・モードとしてバンドのスタートを切りました。なおバンド名はフランスのファッション雑誌『Dépêche mode』からの引用で、英語では「fast fashion (最先端の流行)」と訳されます。
 本作はヴィンス在籍時唯一のアルバムで、11曲中9曲はヴィンスによる作。ダニエル・ミラーとバンドの共同プロデュースとなります。全英10位という幸先の良いスタートとなりました。

 邦題ではタイトル曲となった「New Life」で幕開け。レトロゲームのようなチープなシンセがピコピコと鳴り、跳ねるようにノリノリでダンサブルなサウンド。キャッチーでポップなデイヴの歌も良いですね。続く「I Sometimes Wish I Was Dead」もレトロゲームを想起させる高音が心地良い。リズムビートはグルーヴ感満載です。「Puppets」はリズムビートが強調されていてダンサブルですね。間奏ではメランコリックなメロディでしんみりとさせます。「Boys Say Go!」はキャッチーでキレのある楽曲です。この楽曲でボーイ・ミーツ・ボーイを歌ったりボンデージ風の衣装に身を包むなど、彼ら自身もそうだったのかもしれませんが、デペッシュ・モードはゲイ・コミュニティからも高い支持を得ています。「Nodisco」は少し陰のある雰囲気。シーケンサーを用いてピコピコ感が強いサウンドと、メロディアスな歌のミスマッチ感が心地良かったりします。「What’s Your Name?」はとてもノリノリでポップな楽曲。「やあ君はなんて可愛らしい少年だ」と、これもゲイっぽい歌ですね。
 アルバム後半は「Photographic」で幕開け。リズミカルですが若干緊張が張り詰めた雰囲気です。そんな緊張を茶化すかのように、時折チープな鍵盤の音が鳴って楽しませてくれます。続く「Tora! Tora! Tora!」は次作以降の作曲を主導するマーティンの作。反復するシーケンサーが無機質な感じで、その後加わるシンセがチープながらもダークな雰囲気に満ちています。歌にも哀愁が漂っています。「Big Muff」もマーティン作。勢いのあるノリノリなインストゥルメンタルで、跳ねるように爽快なダンスビートにちゃっちいシンセがトリップさせてくれます。「Any Second Now (Voices)」は静かで落ち着いた雰囲気ですが、場違いなピコピコ音が楽曲を盛り上げます。そしてラスト曲「Just Can’t Get Enough」はバンドのヒットシングルです。明るくポップな曲調に、ひたすら「I just can’t get enough」を反復する歌は口ずさみたくなるくらい耳に残りますね。名曲です。

 テクノポップサウンド全開。チープなピコピコサウンドが好きな人にはたまらない、ポップセンス溢れる名盤です。

Speak & Spell
Depeche Mode
 

ヴィンス・クラーク脱退とインダストリアルの昇華

A Broken Frame (ア・ブロークン・フレイム)

1982年 2ndアルバム

 前作で大きく貢献したヴィンス・クラークが、プロモーションとツアー活動への不満から脱退。デペッシュ・モード最初の危機が訪れます。アンディ・フレッチャー(Key)、マーティン・ゴア(Key)、デイヴ・ガーン(Vo)の3名体制となってしまいますが、前作で作曲を行ったマーティンがペンを取り、ポップセンスは引き継ぎつつ陰のある楽曲で人気を獲得、結果として全英8位となり前作以上に成功することとなります。またここではサポート扱いとして、後に正式加入するアラン・ワイルダー(Key)も参加しています。前作同様にダニエル・ミラーとバンドの共同プロデュース。

 「Leave In Silence」は低く唸るようなコーラスで始まり、そこからダンサブルな演奏が展開されます。アンビエント風の静かなサウンドや霊的な雰囲気のコーラスに、跳ねるようなリズムビートというチグハグな感じが妙に心地良い。終盤はシンセホーンが華やかなのに力がない演奏を展開。「My Secret Garden」はグルーヴ感抜群の楽曲です。デイヴのダンディで耽美なボーカルが幻覚的に広がり、それをグルーヴィな重低音で拡張。聴いていると酔いそうなサウンドが展開されます。「Monument」はエスニックで神秘的な雰囲気と無機質さを同居させた不思議な楽曲です。ひたすら反復するため中毒性がありますね。「Nothing To Fear」はダイナミックなシンセドラムがカッコ良いインストゥルメンタル。憂いに満ちたメロディラインが美しく切ないです。楽器は時代を感じさせるのに、楽曲は今聴いても割と新鮮な印象で受け入れられます。そして「See You」はメランコリックな雰囲気で陰のある楽曲。ですが同時に、取っつきやすいキャッチーさも兼ね備えています。
 アルバム後半は「Satellite」で幕開け。イントロからどこか妖艶な空気が漂います。ムーディで怪しげな、落ち着いた雰囲気の楽曲です。「The Meaning Of Love」はゲーム音楽のような、チープながらも高揚感を煽るイントロから魅力的。比較的陰鬱な楽曲が多い中、この楽曲はアップテンポで楽しげです。続く「A Photograph Of You」もノリの良い1曲。ポップでメロディアスな歌は耳触りが良く、ダンサブルなビートが歌を引き立てます。「Shouldn’t Have Done That」はデイヴとマーティンがハモっています。穏やかでドリーミーなシンセと、民族音楽のような不気味さが漂うリズムが印象的。最後の「The Sun & The Rainfall」はノリノリのダンサブルなリズムと、寂寥感のある鍵盤に大きなギャップを感じます。切ない雰囲気なのに、空元気のようなノリが虚しいですね。

 全体的に憂いを帯び、落ち着いてメロディアスな作風です。ヴィンス脱退により弾けるようなポップ曲が減ってしまったのが少し残念です。

A Broken Frame
Depeche Mode
 
Construction Time Again (コンストラクション・タイム・アゲイン)

1983年 3rdアルバム

 アラン・ワイルダーの正式加入により、アンディ・フレッチャー、マーティン・ゴア、デイヴ・ガーンとアランでデペッシュ・モードは再び4人体制に。この体制で1995年まで続きます。
 本作ではドイツのアインシュテュルツェンデ・ノイバウテンに触発されたマーティンが、メタルパーカッション等のインダストリアルな要素を持ち込み、これまでのシンセポップと融合を図っています。ダニエル・ミラーが引き続き共同制作に携わっています。

 オープニング曲「Love, In Itself」から既にクールでカッコ良いです。シンセは華やかさと冷たさを同居させ、ゆったりしているかと思えばテンポアップして戻したりと緩急に富み、そしてドラムもクールです。続く「More Than A Party」はダーティな疾走曲。低音を刻む鍵盤や不穏なシンセを中心に強いスリルを生み出していて、テンポの早い跳ねるようなビートが焦燥感を煽り立てます。強烈なインパクトがありカッコ良い。「Pipeline」は一転して音数少なく静かです。ですが金属質なパーカッションや、機械的にドンッ…ドンッ…と鳴るドラムなど、静かながら不気味さが支配します。ピンポン玉の音が聞こえるのがちょっと可笑しい。「Everything Counts」はメタリックなダンスビートが爽快です。デイヴの歌うメロディはポップで取っ付きやすく、ビートの強さの割に牧歌的な雰囲気も感じられます。
 アルバム後半はアラン作曲の「Two Minute Warning」で幕開け。無機質な金属音が鳴り、でも抜群のグルーヴ感も合わせ持っていて冷たさよりも温もりが勝っています。ダンディな歌声も中々魅力的ですね。続く「Shame」は落ち着いた雰囲気で、単調な反復を繰り返す演奏に色気のあるボーカルが乗っかります。音を外したリコーダー(?)のような音が時折アクセントとして加わるのが印象的。「The Landscape Is Changing」は円熟味のある楽曲。メタリックなパーカッションがダンサブルかつ少し神秘的な雰囲気を作り出し、そこにデイヴが落ち着いた歌を聴かせます。「Told You So」は遊び心溢れるシンセで幕を開け、そこから始まるメランコリックなメロディラインが強く耳に残る名曲です。憂いを帯びた切ない雰囲気がたまりません。途中演劇的でコミカルな側面もあったり。「And Then…」は起伏が少ないながらも、効果音が入れ代わり立ち代わりで忙しいです。そして気付くと歌声に包み込まれています。そして最後は、レトロゲームのようなチープなシンセに美しいコーラスワークを響かせる小曲「Everything Counts (Reprise)」を聴かせて終了。

 演奏はよりメリハリがつき、耳に残る楽曲が増えました。力強く牽引する序盤や、メロディアスな終盤など聴きどころが多いです。

Construction Time Again
Depeche Mode
 
Some Great Reward (サム・グレート・リウォード)

1984年 4thアルバム

 前作のインダストリアルを取り込んだ路線を継承し、そこに社会批判や宗教色も強めた作品です。人種差別や暴力について歌った「People Are People」がシングルヒット。また、アルバムも過去最高のセールスとなり、全英5位、西ドイツで3位を記録しています。
 ダニエル・ミラーに加えて共同制作者にガレス・ジョーンズが名を連ねています。

 イントロからヘヴィで躍動感のある演奏をぶちかます「Something To Do」で幕開け。演奏は重たくて緊迫した空気が満ちており、デイヴ・ガーンの歌唱法は耽美ながらもシリアスな雰囲気が漂います。ピリピリとして焦燥感を煽る、スリリングなオープニングです。続く「Lie To Me」もダークな雰囲気で、それでいて妖艶な印象も与えます。グルーヴ感抜群の重低音が効いており、怪しげな歌と合わさって心地良さを提供してくれます。そしてヒット曲「People Are People」。メタリックな効果音にパワフルで躍動感のあるドラムが楽曲に強いメリハリを付け、そこに乗るデイヴの歌はとてもキャッチーで口ずさみたくなります。どこか退廃的でそして抜群にポップな、ノリの良い名曲です。続く「It Doesn’t Matter」はマーティン・ゴアが歌います。落ち着いた子守唄のような歌に加えて演奏も幻想的なのですが、同時に金属のような無機質な冷たさも持ち合わせています。「Stories Of Old」はシンプルにスタートするものの、徐々に音数を増やして賑やかになっていきます。時折入るシンセブラスが華やかですね。ですが歌のテンションはそこまで高くなくて内省的な感じ。
 マーティンが歌う「Somebody」で後半の幕開け。アラン・ワイルダーが弾くメランコリックなピアノが切なさを誘います。デジタルなダンスビートを排して、ピアノとマーティンの歌、時折カモメの鳴き声のような効果音を鳴らします。金属質で都会的な印象の楽曲群の中にありながら海岸とか自然を想起させます。続く「Master And Servant」はキャッチーな1曲。鞭の音などSMを想起させる内容になっていて、ダンサブルな演奏と艶のある歌唱など、妖しいのにノリが良くて楽しい楽曲ですね。「If You Want」は本作では唯一アランが作った曲です(それ以外は全てマーティン作)。序盤はアンニュイで気だるげですが、中盤からテンポアップ。ノリノリのダンスチューンに変わります。金属質なサウンドはキレッキレです。そしてラストの「Blasphemous Rumours」はキリスト教の偽善を批判した1曲です。イントロは静寂の中に冷たく暴力的な1音1音が響きます。憂いに満ちたメロディアスな歌で盛り上がり、歌が終わって余韻に浸っていると、淡々とした不気味なアウトロで気味悪く締め括ります。

 金属質で比較的重たいサウンドながらも躍動感があり、そしてキャッチーなメロディで聴きやすいです。デペッシュ・モードの代表曲もいくつか収められており、ファンからの人気も高い作品です。

Some Great Reward
Depeche Mode
 
Black Celebration (ブラック・セレブレーション)

1986年 5thアルバム

 インダストリアルに加えてゴシックロックの要素も取り入れたダークな雰囲気が漂う作品で、1980年代で最も影響力のあるアルバムの1つとして選ばれるなど批評家からの評価も高い傑作です。全曲がマーティン・ゴアによる作曲ですが、アラン・ワイルダーのダークな音作りが特に反映されているそうです。また、デイヴ・ガーンに代わりマーティンがリードボーカルを務める楽曲が4曲も含まれています。前作に引き続きダニエル・ミラーとガレス・ジョーンズとの共同プロデュース。

 アルバムは表題曲「Black Celebration」で幕開け。うめき声のような不気味な静音に鉄琴のような冷たい音が響き、ダークでアンビエントなイントロが始まります。デイヴのメランコリックな歌声には強めのエコー処理が施されて暗い雰囲気。途中からテンポアップしてダンスビートが軽快に盛り上げるものの、暗鬱な空気は払拭しきれていません。「Fly On The Windscreen – Final」も開幕不気味さが漂いますが、そこにダンサブルなビートが加わり、退廃的なのにノリの良さを楽しめるという不思議な感覚。歌はメロディアスですが、演奏はシンプルかつひたすら単調に反復して中毒性を生み出してきます。終盤はおどろおどろしい感じ。そしてここから3曲はマーティンのボーカル曲が続きます。まずは「A Question Of Lust」、アンニュイで耽美なボーカルに浸っていると、シンセがドラマチックに歌メロを引き立ててきます。美しくて魅力的な1曲です。「Sometimes」は2分足らずの小曲で、ピアノに乗るマーティンの歌がゆったりと優しく響き渡ります。そして「It Doesn’t Matter Two」はイントロから不気味な雰囲気を醸し出し、焦燥感を煽ります。憂いを帯びたメロディアスな歌がよく突き刺さります。シンセも悲壮感たっぷりで切ないですね。
 アルバム後半はデイヴの歌う「A Question Of Time」で幕を開けます。ダークですがダンサブルな楽曲で、ここまでメロディ重視のゆったりめな楽曲が続いたアルバムの流れにメリハリをつけます。憂いに満ちたメロディを引き立てるリズムビートは焦燥感を煽ります。続く「Stripped」ではビートを強調していて、退廃的で暗鬱な雰囲気にミスマッチなノリの良さが印象に残ります。「Here Is The House」は怪しげな楽曲で、グルーヴィな低音が心地良いダンスチューンです。デイヴの暗くて美しい歌メロ、アクセントとして入るギターが切なくて胸に刺さります。「World Full Of Nothing」はマーティンが歌っています。憂いのある歌声をシンセがメランコリックに引き立てていて、美しいのですが暗くて沈んでいきそうです。「Dressed In Black」は暗鬱で浮遊感の溢れる演奏がゆらゆらと揺さぶってきます。美しく包み込むかのように響き渡るデイヴの歌声も、演奏と合わさってゆったり浸れますね。ラスト曲「New Dress」はピコピコしたノリの良い楽曲です。この楽曲も決して明るい雰囲気ではないものの、暗い楽曲が並ぶ中で本楽曲のダンサブルなサウンドが救いのように感じられます。

 全体的に暗くて、そしてとてもメロディアスです。ノリの良い楽曲は少なめで、暗鬱でメランコリックなメロディを重視した作品ですね。

Black Celebration
Depeche Mode
 

商業的な大成功

Music For The Masses (ミュージック・フォー・ザ・マスィズ)

1987年 6thアルバム

 『大衆向けの音楽』と題した本作は全米チャートで35位を記録し、米国進出のキッカケとなった作品です。前作の暗鬱さを引き継いでいて『大衆向けの音楽』かと言えば「?」が浮かびますが、ダークさは保ちつつ、キレのある楽曲が多くて取っ付きやすくはなった印象です。また、より分厚くなったサウンドが特徴的ですね。
 これまで制作にかかわってきたダニエル・ミラーは、前作で生じたメンバー間の緊張から距離を置くためプロデューサーから離れ、助言役として関与。代わりに共同プロデューサーとしてデヴィッド・バスコムを起用しています。全曲がマーティン・ゴアの作曲。

 オープニング曲は「Never Let Me Down Again」。キレのあるダンサブルなサウンドで、対照的にデイヴ・ガーンの歌は抑揚が少なく気だるげで耽美な感じ。ですがサビはかなりメロディアスで魅力的です。そしてサビメロ以降楽曲を飾り立てる、分厚く壮大なオーケストレーション。これまでと違うベクトルでの重厚さを演出しています。「The Things You Said」はマーティンが歌います。神秘的な演奏とアンニュイで耽美な歌が、ゆったりとして包み込むような心地良さを提供。後半はアンビエント風の演奏がいくつも折り重なって、洪水のように押し寄せてきます。「Strangelove」はキレのあるダンスチューン。ノリの良い演奏に乗る、憂いを帯びつつもキャッチーなメロディラインが魅力的ですね。続く「Sacred」もダンサブルな楽曲です。分厚いサウンドとメロディアスなコーラスが重なり合って、どこか怪しげで色っぽさを感じます。「Little 15」は鍵盤を中心にしたサウンドが特徴的で、後半はオーケストラも加わって壮大に盛り上げます。全体的にダークファンタジーのような、不気味でスリリングな世界観が広がります。
 アルバム後半は暗鬱な「Behind The Wheel」で幕開け。リズミカルなビートが牽引するものの、デイヴの歌はダウナーだし、ダークで靄に包まれたような鍵盤など暗くて不気味な雰囲気です。でもこれがとてもやみつきになるんです。続いてマーティンの歌う「I Want You Now」。怪しい吐息を反復させてリズム隊の代わりとし、アジアンテイストの鍵盤にダンディな歌メロという、色々混ざった1曲です。「To Have And To Hold」がダークでパンチの効いた楽曲です。ひたすらダウナーな歌に、ダークでサイケじみた重たい演奏が不気味な雰囲気を作り出します。キュアーのような底のない暗さでゾクゾクしますね。「Nothing」はややエキゾチックな香りのするダンサブルな楽曲です。そしてラスト曲「Pimpf」は暗く冷たいピアノで開幕。冷徹で重苦しい空気が漂い、コーラスもひたすら不気味です。最後の40秒程、隠しトラック「Interlude #1 – (Mission Impossible)」が内包されていて、淡々とした演奏に生活音のようなSEが聞こえ、不気味です。

 キャッチーでダンサブルな楽曲が牽引しますが、全体的にはダークな印象。後半に進むにつれてダークさが増してどんどんスリリングになっていきます。

Music For The Masses
Depeche Mode
 
Violator (ヴァイオレーター)

1990年 7thアルバム

 デペッシュ・モード最大のヒット作で、「Enjoy The Silence」や「Personal Jesus」といった大ヒット曲を収録しています。全曲がマーティン・ゴアの作曲で、アレンジ面でアラン・ワイルダーがサポート。また、U2のテクノロジー3部作やスマッシング・パンプキンズの『メロンコリーそして終りのない悲しみ』等の名盤を手掛けることになるフラッドを共同プロデューサーに起用しています。

 アルバムは「World In My Eyes」で幕開け。打ち込みの軽やかなビートで淡々と進行しますが、デイヴ・ガーンの憂いに満ちた歌はサビではとてもメロディアス。これもシングルヒットしました。続いて「Sweetest Perfection」はパーカッシブな楽曲で、序盤はシンプルな演奏を繰り広げます。オーケストラで彩りを与える間奏を挟んだあと演奏の雰囲気が変わり、強調させたドラムに歪んだシンセが渦巻くようにサイケデリックな感覚を作り出します。そして名曲「Personal Jesus」。思わず踊りだしたくなるようなリズミカルで力強いビートに加えて、シンプルなメロディラインも口ずさみたくなるようなキャッチーさがあります。「Halo」は陰のあるメランコリックな歌メロを、力強くてグルーヴ感のある演奏が引き立てます。シンセポップバンドではなくてダンサブルなロックバンドという印象を与えます。続く「Waiting For The Night」は一転して、アンビエント風の静かでひんやりとした雰囲気です。デイヴの歌も子守唄のような感じ。そして「Enjoy The Silence」は大ヒットシングル。リズムビートはノリが良いのですが、歌メロは憂いに満ちたダークなメロディで、デイヴが耽美な歌声でメランコリックに歌います。終盤2分は雰囲気が変わりますが、これは「Crucified」と題した隠しトラック。短いフレーズを反復するスペイシーな演奏を繰り広げます。続いて「Policy Of Truth」もヒットシングル。憂いに満ちたメロディとダンサブルなビートが印象的。サビ後のくっきりとした演奏や、後半コーラスを折り重ねる展開など、楽曲が進むにつれて過剰に盛り上げていきます。「Blue Dress」はマーティンの歌う楽曲で、穏やかでゆったりとした雰囲気で癒やしてくれます。これも隠しトラックが内包されてて、終盤1分ちょいの「Interlude」と題したこの楽曲は、悲壮感のあるメロディを奏でます。そして最後は「Clean」。アランの弾くベースが際立つ楽曲で、そこに歌と力強いドラムが加わって、機械的な電子音がミスマッチですが雄大な自然を想起させます。スケール感のある楽曲ですね。

 ダークでメロディアスなダンス曲という部分は維持しつつ、これまでのメタルパーカッションを用いたインダストリアル的なアプローチは消え、代わりにバンドサウンドを取り入れたロック的なビートが感じられます。中でも「Personal Jesus」はとてもカッコ良くて必聴です。

Violator
Depeche Mode
 
Songs Of Faith And Devotion (ソングス・オブ・フェイス・アンド・デヴォーション)

1993年 8thアルバム

 売上枚数こそ前作『ヴァイオレーター』に及ばなかったものの、全英・全米ともに1位という前作でも成し得なかった記録を得ることができました。オルタナ/グランジの台頭を取り入れ、バンドサウンドをフィーチャーした骨太な作風です。歌詞には宗教的な要素を多く取り入れているそうです。
 全曲がマーティン・ゴアの作曲で、前作に引き続き共同制作者にはフラッド。また、アラン・ワイルダーの最後の参加作品となりました。

 歪んだノイジーなサウンドで始まるヒット曲「I Feel You」で幕開け。ヘヴィな演奏はグランジを取り入れており、かなりロック寄りですが、グルーヴィなダンス要素も残しています。デイヴ・ガーンの歌唱法もかなりロック寄りになっていますね。歪んだ音でグワングワンと揺さぶってきます。続く「Walking In My Shoes」では、マーティンの弾くベースが這うように強烈なグルーヴを生み、アランの弾くピアノが冷たく暗い印象を増幅させます。全体的に暗鬱でダウナーな雰囲気で、聴いているとどんどん沈んでいきそうです。一転して「Condemnation」はゆったりとして優美なゴスペル風の楽曲。力強いドラムにデイヴの伸びやかな歌が響き渡ります。「Mercy In You」はバンド色の強いサウンドにスカンスカンとした単調なリズムトラックで、心地良い浮遊感のあるダンスチューンに仕上がっています。デイヴの耽美な歌も浮遊感に貢献していますね。時折強い重低音がグルーヴを効かせます。ここまで都会的な音を聞かせてきましたが、「Judas」ではイントロでバグパイプを鳴らして、急に田舎で牧歌的な雰囲気に。そこから子守唄のような歌でゆったり癒やしてくれますが、打ち込みのリズムで再びデジタルで都会的な雰囲気に戻していきます。「In Your Room」はひんやりと冷たくて暗いです。静かな序盤を抜けるとグルーヴが増し、デイヴの歌も力強くなっていきます。ダークで幻想的なサウンドはどんどん緊張を増していき、不安を煽ります。「Get Right With Me」はギターやベースの生音が骨太でメタリックなロックを奏でる一方、打ち込みドラムがダンサブルな要素を残しています。終盤から雰囲気が変わって静かになりますが、これは恒例の隠しトラックで「My Kingdom Comes」と題しています。「Rush」は緊張が張り詰めたダークでスリリングな楽曲です。中盤は一気にトーンを落として、抑圧的で不穏な静寂が訪れますが、後半再びヒートアップ。中々の良曲です。そして「One Caress」はストリングスをバックに耽美な歌を披露。美しさも見せますが、それ以上に暗くて不安な気持ちにさせます。ラスト曲は「Higher Love」。幻想的な広がりを見せるサウンドはひんやりとしたダークでアンビエントな雰囲気。そこに時折、ロックバンド的なエッジも効かせます。

 従来のダンス色は残しながらも、かなりロック色を強めた作品で、デイヴもロック的な歌い方をしています。ダークで救いがなく、またこれまで以上に変化も大きくて、個人的にはそこまで馴染めなかったり…。

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Depeche Mode
 
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