🇺🇸 Eagles (イーグルス)

レビュー作品数: 9
  

スタジオ盤

カントリーロック期

Eagles (イーグルス・ファースト)

1972年 1stアルバム

 イーグルスは米国カリフォルニア州ロサンゼルスのロックバンドになります。1971年、リンダ・ロンシュタットのバックバンドとして集められたメンバーがバンドを結成することにし、イーグルスとしてデビューしました。メンバーはグレン・フライ(Vo/Gt)、ドン・ヘンリー(Vo/Dr)、バーニー・レドン(Vo/Gt)、ランディ・マイズナー(Vo/B)の4人組で、作曲したメンバーがその楽曲のリードボーカルを取るというスタイルのようです。
 ローリング・ストーンズレッド・ツェッペリン等のエンジニアとして務めたベテランのグリン・ジョンズがプロデューサーに就きました。

 イーグルスの代表曲である「Take It Easy」で幕を開けます。テレビ等でもお馴染みの、カントリー調のカラッとしたこの楽曲は「気楽にいこうぜ」と歌う陽気な楽曲。グレンがジャクソン・ブラウンと組んで作ったこの楽曲は先行シングルとしてヒットしました。作曲に携わったグレンがリードボーカルを取っていますが、伸びやかなボーカルが爽やかな曲調とよく合っています。続く「Witchy Woman」はドンの渋い声で歌われる、少し怪しげな楽曲です。ドラムも聴きごたえがありますが、何よりメンバーによるコーラスワークがお見事で、この路線で後の名曲「One Of These Nights」を生み出すことになります。「Chug All Night」は泥臭いロックンロール。音色は渋いですが、グレンの歌声は爽やかです。「Most Of Us Are Sad」はランディがボーカルを取ります。アコギの音色が柔らかい穏やかな楽曲で、これもコーラスが良い感じ。そして軽快でカラッとしたロックンロール「Nightingale」でアルバム前半は終了。
 レコード時代のB面は、バーニーの歌う「Train Leaves Here This Morning」で開幕。アコギ中心のこじんまりとした印象ですが、優しい音色と歌声に癒されます。ランディの歌をフィーチャーした「Take The Devil」は少し影のある雰囲気。そして演奏はブルージーで、終盤は泥臭い演奏を聴かせます。続く「Earlybird」は鳥のさえずり音で始まります。バーニーの奏でるバンジョーの出す音色が、米国の荒野を連想させます。そして後半のハイライト「Peaceful Easy Feeling」。カラッとしてのびのびとした楽曲です。アコースティックなサウンドに、メロディアスな歌をグレンの甘い歌声と美しいコーラスワークで飾り、穏やかな気持ちにさせます。最後は「Tryin’」。少しハードでブルージーなロックンロールで、軽快なノリでアルバムを締め括ります。

 「Take It Easy」と「Witchy Woman」が突出していますね。晴れた日に聴きたい楽曲が並びます。しかしアルバム全体でみると楽曲の出来不出来に差があり、いくつかの名曲はベスト盤でも聴けるので、本作は後回しでもよいかもしれません。

Eagles
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Desperado (ならず者)

1973年 2ndアルバム

 西部劇のようなジャケットアート。アルバムもならず者をテーマにしたコンセプトアルバムです。コンセプトもあってか元々の音楽性か、カントリー色の強い作品になっています。コーラスワークの多用もあって耳触りの良いサウンドになっていますが、楽曲的には「Desperado」と「Tequila Sunrise」が優れていて、他はそれほど…といった感じ。その2曲の名曲を生んだグレン・フライ(Vo/Gt)とドン・ヘンリー(Vo/Dr)が徐々にバンドの主導権を握ることになります。前作に引き続きグリン・ジョンズのプロデュース。

 オープニングを飾るのはカントリー調の「Doolin-Dalton」。オープニングだけでなく、アルバム随所に出てくる本作のテーマ曲といったところです。アコギと合わさるハーモニカの音色が哀愁を誘いますね。ドンの歌声も渋いです。続く「Twenty-One」はバンジョーの小気味良いサウンドが西部劇を思わせますね。これはバーニー・レドン(Vo/Gt)が歌っています。そして「Out Of Control」はハードロック曲。荒々しいギターにヘヴィなドラム等スリリングですが、展開はスタンダードなロックンロール。甘い歌声が魅力のグレンも、シャウト気味の激しい歌を歌うんですね。そして徐々に調子を上げてきたところで、名曲「Tequila Sunrise」が続きます。ゆったりした曲調に、グレンの優しい歌声が印象的な楽曲です。メロディアスで癒されますね。なおオレンジ色のカクテルのテキーラ・サンライズと、情事明けの朝焼けを掛けた歌らしいです。そして続く、イーグルス屈指の名バラード「Desperado」。数多くのアーティストがカバーしていて(平井堅やSuperfly等々)、日本人にも馴染み深いですね。ドン・ヘンリーの渋い声で哀愁ある楽曲を歌い上げ、とても切ない気分になります。ストリングスが歌を引き立て、そして途中加わるドラムを皮切りにコーラスなどドラマチックに盛り上げます。とても美しい。
 アルバム後半はランディ・マイズナー(Vo/B)の歌う「Certain Kind Of Fool」で開幕。キーの高い歌は明るさの中に少し切なさを帯びています。そして1分に満たない「Doolin-Dalton (Instrumental)」は、バンジョーを用いた軽快な雰囲気です。そのまま続く「Outlaw Man」はドラムの激しい、渋い楽曲です。間奏のギターが美しいです。マンドリンの美しい「Saturday Night」は穏やかな楽曲です。ドンの渋い歌声とコーラスワークが郷愁を誘います。バーニーの歌う「Bitter Creek」を挟んで、ラスト曲「Doolin-Dalton/Desperado (Reprise)」。テーマ曲のリプライズですが、ピアノではなくアコースティックギターで歌われる「Desperado」が、味があってとても良い終わり方です。

 ジャケットアートに似つかわしい、荒野を連想するようなカントリー調の楽曲が並びます。「Tequila Sunrise」と「Desperado」の名曲が輝きますが、でもそれ以外は印象が薄いかも。

Desperado
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On The Border (オン・ザ・ボーダー)

1974年 3rdアルバム

 イーグルスはカントリー志向の強いバンドでしたが、本作よりロック色を強める方向性へシフトします。それに伴いプロデューサーにはこれまでのグリン・ジョンズに代わってビル・シムジクが招かれたほか、メンバーにもドン・フェルダー(Gt)を加えて5人体制になりました。ただドン・フェルダーは途中参加だったようで、「Already Gone」と「Good Day In Hell」のみの参加、それ以外はバーニー・レドン(Vo/Gt)がリードギターを担当しています。

 爽やかなアップテンポ曲「Already Gone」で幕開けです。「Take It Easy」のような陽気な雰囲気ですね。爽快なギターと、グレン・フライ(Vo/Gt)のカラッとしてポップな歌声が心地よい雰囲気を作り出しています。歌うようなベースも良い感じ。「You Never Cry Like A Lover」ではドン・ヘンリー(Vo/Dr)が渋い声でしっとりとした楽曲を聴かせます。メロウなギターもしみじみと哀愁を感じさせます。続いて、カントリー色の強い楽曲「Midnight Flyer」。ランディ・マイズナー(Vo/B)が歌っています。バーニーの軽快なバンジョーが陽気で愉快な雰囲気を作ります。「My Man」はバーニーの歌う1曲。スライドギターが心地良い音色を奏でます。そして表題曲「On The Border」。大成功する次作『呪われた夜』表題曲のプロトタイプのような印象で、R&B色の強い楽曲です。
 アルバム後半は爽快なロックンロールナンバー「James Dean」で始まります。ご機嫌なギターで始まり、全編通してノリが良いです。キャッチーなメロディラインも魅力的ですね。続いてトム・ウェイツのカバー曲「Ol’ ’55」。ピアノとコーラスワークが美しい楽曲で、ゆったりとした曲調に癒されます。メロウなギターとメロディアスな歌の「Is It True?」で癒された後は、ロック色の強い「Good Day In Hell」が続きます。ブルース寄りのハードロックといった趣で、間奏ではキンキンと荒々しいギターを聴けます。そしてラストに名バラード「The Best Of My Love」。本作のハイライトは間違いなくこの1曲でしょう。アコギが心地よく鳴り、エレキが優雅な雰囲気を演出します。ドン・ヘンリーの渋い声はメロディアスな歌を引き立て、そこにコーラスが加わって美しい楽曲に仕上がっています。

 次作で傑作が生まれるのですが、本作ではその過渡期にある作品で、佳曲揃いで前作からの成長を感じさせてくれる好盤です。ジャケットが地味なため私は手に取るのが遅れましたが、これはジャケットでかなり損をしてる感じ。
 グレンとドン・ヘンリーの2人が主導権を握ったことで良曲が増えた印象ですが、その2人が高慢になっていくことでイーグルスのメンバー関係に変化が生じることになります。

On The Border
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黄金期~解散まで

One Of These Nights (呪われた夜)

1975年 4thアルバム

 本作は大ヒットし全米1位を獲得、イーグルスをビッググループに押し上げました。メンバーは前作に引き続き、グレン・フライ(Vo/Gt)、ドン・ヘンリー(Vo/Dr)、バーニー・レドン(Vo/Gt)、ランディ・マイズナー(Vo/B)、ドン・フェルダー(Vo/Gt)。プロデューサーは前作に引き続きビル・シムジク。なお本作はバーニー在籍時の最後の作品でもあり、グレンとドン・ヘンリーの高慢な態度に業を煮やして、本作を最後に脱退してしまいます。

 表題曲「One Of These Nights」で始まります。イントロで強い存在感を見せる、ランディのグルーヴ感のあるベースを軸として、ギターが彩ります。ドン・ヘンリーの渋い声が魅力の歌はR&B的で、黒っぽいコーラスがとても印象的です。口ずさめるほどメロディアスで、哀愁というか暗さを纏った雰囲気も良い。素晴らしい名曲です。「Too Many Hands」はランディがボーカルを担当。ギターが少しエスニックな雰囲気を醸し出していますが、アコギとエレキが交互に主導権を取り合ってる感じで、エレキギターのソロも中々魅せてくれます。パーカッシブなドラムも良い仕事をしてると思います。「Hollywood Waltz」は優しい雰囲気が漂う佳曲。スライドギターの穏やかな音色にドン・ヘンリーの歌、いずれも癒されます。続いてバーニー作のインストゥルメンタル「Journey Of The Sorcerer」。バンジョーを効果的に使って、オリエンタルで怪しい雰囲気に仕上がっています。またバックにオーケストラを起用し、盛り上がる場面ではストリングスが楽曲をうまく引き立てます。個人的には砂漠を旅するイメージが浮かびますが、7分近い旅に誘ってくれる1曲です。
 アルバムは後半に入り、アコギの音色が心地よい名曲「Lyin’ Eyes」。グレンの甘い歌声も良いですが、サビを彩るコーラスワークも素敵です。メロディアスな歌が本当に美しい。また、マンドリンもアクセントとして綺麗な音色を奏でます。続く「Take It To The Limit」は後半のハイライト。この楽曲はランディが作った最高の楽曲でしょう(グレン、ドン・ヘンリーとの共作ですけどね)。ランディの歌う非常にメロディアスな1曲で、コーラスやストリングスによって彩られて感動的な仕上がりになっています。美しい歌メロの裏でドラムも良い仕事をしていて、楽曲を盛り上げます。「Visions」はドン・フェルダーがボーカル担当。少し激しいハードロック曲で、キンキンとギターが荒ぶっていますね。「After The Thrill Is Gone」は哀愁漂う1曲。グレンと交互に歌う、ドン・ヘンリーの哀愁たっぷりの歌は切なくなります。最後に、本作を最後に脱退するバーニーがボーカルを取る「I Wish You Peace」。穏やかで優しいメロディをストリングスが引き立てます。毒気のない美しい楽曲です。

 これまでのイーグルスから一皮剥けた、名曲揃いの1枚です。オリジナルアルバムでは『ホテル・カリフォルニア』に次ぐ傑作だと思います。
 そしてイーグルスはこの後、『イーグルス・ファースト』から本作までを纏めた前期ベスト盤『イーグルス・グレイテスト・ヒッツ 1971-1975』を挟んで、歴史的名盤『ホテル・カリフォルニア』をリリースすることになります。

One Of These Nights
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Hotel California (ホテル・カリフォルニア)

1976年 5thアルバム

 ロック史に残る大名盤、『ホテル・カリフォルニア』。とても有名な表題曲を収録した作品ですが、このアルバムの素晴らしさは表題曲だけではありません。全楽曲の水準が高く、万人向けの聴きやすい音楽でありながらも、まるで芸術作品のようですらあるあまりの美しさ。完璧な楽曲配置で自然なアルバムの流れを作り出し、アルバムトータルでも非常に高いクオリティを保っています。
 表ジャケットに写る建造物は「ビバリーヒルズ・ホテル」というホテルで、カリフォルニア州ロサンゼルスに位置するホテルです。ちなみに全く無関係なメキシコのホテルが、ホテル・カリフォルニアの舞台であるかのような営業をして「Hotel California」を商標登録までしようとしたため、イーグルスに訴えられるという出来事がありました。2017年の出来事です。ジャケットにまつわる逸話は他にもあって、ホテル内装を写した裏ジャケットに幽霊が写っているというもの。私の手元のCDジャケットにもそれっぽいものが写っていますが、真相は果たして…笑
 プロデューサーは引き続きビル・シムジク。この頃になるとイーグルスからカントリー色は消え、ロック色の強い作品となりました。またバーニー・レドン(Vo/Gt)の脱退に伴い、ジョー・ウォルシュ(Gt/Key)を新たにメンバーに加えています。

 オープニング曲かつ表題曲の「Hotel California」。これが素晴らしい超名曲です。あまりに美しいアルペジオに始まり、ドン・ヘンリー(Vo/Dr)の渋い歌声で哀愁漂うメロディアスな歌を披露。そしてアウトロのギターソロが切ないメロディを奏でます。終始哀愁のある雰囲気が保たれた楽曲で、あまりの美しさと儚さに溜息が出ます。そしてホテル・カリフォルニアとは何なのか。多くの人が色々な解釈をしていますので検索してみても良いでしょう。最初の方に出てくる「colitas」という単語がマリファナの隠喩で、出れないホテルという内容から、薬物中毒者が幻想を見ながら監獄に収容されたという解釈だったり。昔のロックはよかったと喪失感に嘆く歌という解釈も見かけます。歌詞の中に有名な一節があり、「So I called up the Captain, ‘Please bring me my wine’ / He said, ‘we haven’t had that spirit here since nineteen sixty-nine’」(=そしてボーイ長を呼んだ「私のワインを持ってきてくれ」。すると彼は言った「私たちは1969年以来、酒を切らしています」)…というものです。「spirit」が蒸留酒と魂のダブルミーニングとなっていて、1969年のウッドストック以来、商業主義に走ってしまったロックに本来のロック(反体制・反商業主義)の魂はないと暗喩していると言われています。
 「Hotel California」に続く楽曲はグレン・フライ(Vo/Gt)によって歌われる「New Kid In Town」。前曲とは対照的にほのぼのとした雰囲気があります。グレンの声は優しいポップな楽曲に良く似合いますね。初期から続くコーラスワークの美しさも健在です。続いて「Life In The Fast Lane」はハードロック的な楽曲です。バラードが多い本作において、ダレさせずに緩急をつけてくれる重要な役割を果たしてくれます。続いて「Wasted Time」では哀愁漂うバラード。表題曲にも負けず劣らずの名曲です。あまりに美しく切ないメロディは心に響きますが、ドン・ヘンリーの渋い歌声によるところも大きいでしょう。コーラスワークもここぞというところで楽曲を盛り上げてくるので、自然と涙を誘います。
 レコード時代はここで区切りがあるのですが、CDだとそのまま続きますね。自然な流れで続く次曲は「Wasted Time (Reprise)」。前曲のストリングス・インストアレンジで、前曲とセットで聴きたい1曲です。元の楽曲の持つメロディの良さが際立ちますね。続いて「Victim Of Love」はヘヴィなイントロで幕を開けるハードロックです。所々にこういう緊張感のある楽曲が入ってくるので、アルバムが引き締まり全く飽きさせません。そして新加入のジョーが歌う「Pretty Maids All In A Row」。ゆったりと、しっとりとしたバラードを聴かせてくれます。続いて「Try And Love Again」は、本作のあと脱退してしまうランディ・マイズナー(Vo/B)が歌います。アルバムの終焉が近いと感じさせるエレキギターの哀愁あるイントロに始まり、ランディも切ないメロディを歌います。そしてラストに控える「The Last Resort」、これが表題曲に匹敵する超名曲。単調なピアノにシンプルなメロディが繰り返されるだけの構成ですが、徐々に徐々に盛り上がっていく展開はボレロのようです。ドン・ヘンリーの歌声は心に染み渡っていき、盛り上がったところで一旦ブリッジで静寂が訪れます。この静寂の中でピアノがあまりに美しく、そして再びドン・ヘンリーの渋い歌声が感情を煽ります。あまりに美しいラスト。この感動的な1曲で、素晴らしい名盤を締めるのでした。

 名曲しか存在しない素晴らしい楽曲のクオリティ。そしてアルバムも緩急ある自然な流れでとても心地よく聴けます。そして全世界で3200万枚以上を売り上げた大ヒット作になり、「イーグルスと言えばホテル・カリフォルニア」というイメージを印象付けた1枚でもあります。

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The Long Run (ロング・ラン)

1979年 6thアルバム

 『ホテル・カリフォルニア』の大ヒットによりイーグルスの人気は絶頂期を迎えますが、グレン・フライ(Vo/Gt)、ドン・ヘンリー(Vo/Dr)の高慢な態度に業を煮やしたランディ・マイズナー(Vo/B)が脱退。後任としてティモシー・B・シュミット(Vo/B)が加入します。メンバーの交代劇に加え、大ヒットした前作のプレッシャーもありアルバム制作は難航。1978年に2枚組で発売予定でしたが、結局その翌年までずれ込み、1枚でのリリースとなりました。プロデューサーは引き続きビル・シムジク。

 表題曲「The Long Run」で幕開け。ドン・フェルダー(Gt/Key)のオルガンが印象的な、ミドルテンポのロック曲です。でもタイトルを背負うには弱い印象です。「I Can’t Tell You Why」は新加入のティモシーがボーカルを担当。ジョー・ウォルシュ(Vo/Gt/Key)のシンセを前面に出した円熟味のある楽曲ですが、ドン・ヘンリーのドラムは力強く響きます。「In The City」はジョーの歌う楽曲。テンポはゆったりめですが、明るいトーンの力強いサウンドで元気をくれます。「The Disco Strangler」はドン・ヘンリーの歌うダンスチューン。リズム感覚が独特で、うまくノれない奇妙なリズムが妙に印象に残ります。続く「King Of Hollywood」は哀愁たっぷりのギターがとても魅力的。グレンとドン・ヘンリーがボーカルを取り、とても低いトーンで淡々と歌いますが、起伏に乏しいのに不思議と惹かれます。
 アルバム後半の開幕は「Heartache Tonight」。シングルカットされ1位を獲得した楽曲で、本作では出色の出来です。チープな音処理のダンサブルなリズムに乗せて、ポップな歌が始まります。サビは一度聴いたらすぐ耳に馴染むほどにキャッチーですね。野太い声で歌うのはグレン。少しトリッキーなリズムの「Those Shoes」ではトーキングモジュレーターを導入。重たいドラムにワウワウとしたギターが絡みつきます。「Teenage Jail」は重苦しく鈍重な印象。カラッとしたイーグルスのイメージとは真逆の、ヘヴィでシリアスな楽曲です。かと思えば、続く「The Greeks Don’t Want No Freaks」は底抜けに明るい楽曲で、ギャップが激しいです。ただメロディはあまり印象に残りません。ラスト曲「The Sad Café」はドン・ヘンリーの渋い歌声を活かし、憂いのある切ない楽曲を聴かせます。ギターの和音も陰鬱ながら美しいし、メロウなサックスも味がありますね。

 「Heartache Tonight」が突出する以外にはパッとする楽曲に欠け、またディスコサウンドやAORだったりバラエティ豊富ですが散漫な印象は否めません。全体に漂う重苦しい空気など、これまでのイーグルスらしさはあまり感じられない作風です。
 イーグルスはこの後、バンドの不仲や曲作りのスランプから1980年に活動休止、1982年に正式に解散しました。次の復活は1994年、スタジオ新録とライブ演奏が混在する変則盤『ヘル・フリーゼズ・オーヴァー』まで待つことになります。

The Long Run
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再結成後

Long Road Out Of Eden (ロング・ロード・アウト・オブ・エデン)

2007年 7thアルバム

 1994年に、解散直前のメンバー構成であるグレン・フライ(Vo/Gt)、ドン・ヘンリー(Vo/Dr)、ドン・フェルダー(Gt)、ジョー・ウォルシュ(Vo/Gt/Key)、ティモシー・B・シュミット(Vo/B)で復活。『ヘル・フリーゼズ・オーヴァー』をリリースします。その後1998年にロックの殿堂入りを果たしますが、2001年には「バンドに貢献していない」という理由で、グレンとドン・ヘンリーが一方的にドン・フェルダーを解雇。2006年に示談が成立するものの、訴訟問題でごたついていました。
 2007年にはドン・フェルダーを欠いた4名体制で、28年ぶりのオリジナルアルバムとなる本作をリリース。プロデューサーはビル・シムジク。米国人気の凄まじいイーグルスですが、本作で初めて英国でも1位を獲得しました。2枚組90分のボリューミーな作品です。

 Disc1のオープニング曲は「No More Walks In The Wood」。4人の美しいアカペラを堪能できる穏やかで切ない小曲です。そこから一転して「How Long」は、往年の名曲「Take It Easy」のようなカラッとして爽やかなアップテンポ曲です。グレンとドン・ヘンリーの歌うキャッチーなメロディに、アコギがアクセントとなったノリの良いサウンドが魅力的です。続く「Busy Being Fabulous」は、まったりと癒されるリゾートのような雰囲気。2007年の楽曲とは思えない、旧き良き往年のウェストコーストサウンドを聴かせます。穏やかで円熟味のあるバラード「What Do I Do With My Heart」を挟んで、ジョーの歌う「Guilty Of The Crime」。アップテンポでキレのある、軽快な楽曲です。賑やかな音色を支える力強いリズム隊が何気に魅力的です。「I Don’t Want To Hear Any More」はドン・ヘンリーの力強いドラムとメロウなギターの対比がよい。続く「Waiting In The Weeds」は8分近い楽曲。ドン・ヘンリーが哀愁のメロディを歌いますが、相変わらず渋い歌声が魅力的ですね。続いてグレンの甘い歌声で歌う「No More Cloudy Days」はほのぼのとしつつも、少し哀愁を感じます。終盤のサックスも実に渋い。「Fast Company」はティモシーのヘヴィなベースが際立っています。黒っぽいコーラスも含めてファンキーな雰囲気に仕上がっています。途中ホーンも加わったりして結構カッコいい。ティモシーの優しい歌で癒やす「Do Something」を挟んで、ゆったりとした小曲「You Are Not Alone」でDisc1は終了。

 Disc2は10分を超える表題曲「Long Road Out Of Eden」で幕開け。渋いサックスで始まり、ドン・ヘンリーの枯れて円熟味のある歌声を演奏でドラマチックに引き立てます。全体を覆う哀愁に、エモーショナルなギターソロがとても魅力的。聴きごたえのある楽曲です。短いインスト曲「I Dreamed There Was No War」を挟んで、シリアスなロック曲「Somebody」が続きます。影のあるハードなサウンドが中々カッコ良くて、また渋く歌い上げるグレンの歌も味があります。「Frail Grasp On The Big Picture」はファンキーな楽曲。グルーヴ感の強いサウンドが魅力で、アルバムの流れにアクセントを加えます。パーカッションをフィーチャーした、リズミカルな「Last Good Time In Town」を挟んで、まったりとした癒し曲「I Love To Watch A Woman Dance」が続きます。正直少しだれてくるのですが、そこにシリアスな「Business As Usual」が続くことでメリハリをつけてくれます。緊迫したダークなサウンドに、ドン・ヘンリーの焦がれるような歌がこだまします。続く「Center Of The Universe」も陰鬱で暗いです。アコギを中心に暗鬱な空気が流れますが、時々入るピアノ音は神秘的な雰囲気。最後の「It’s Your World Now」は暗い雰囲気を払拭して、まったりとした印象。トロピカルなマリンバの音色や、ゆったりとしたトランペットなどで癒してくれます。
 そしてボーナストラック「Hole In The World」。コーラスワークを重視した、ゆったりとした楽曲でアルバムを締め括ります。

 かなりのブランクがありながら、これまでのイーグルスらしさを損なうことなく作り上げています。音処理だけがモダンな感じで、作風は1970年の延長上です。安定した内容で、往年のイーグルスを期待するファン向けという印象ですね。

 2011年には来日ライブを開催。東京ドームまで観に行ったのですが、当時の私があまり楽曲を知らなかったのと、メンバーが見えないくらい遠すぎる座席だったこともあって、そこまで印象に残っていなかったり…。2016年には残念ながらグレンが死去し、イーグルスは解散を表明。しかし翌年、グレンの息子ディーコン・フライを迎えてライブ活動を再開して現在に至ります。

Long Road Out Of Eden
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