🇯🇵 岸田教団&THE明星ロケッツ (きしだきょうだん アンド ジ あけぼしロケッツ)

レビュー作品数: 4
  

同人作品:東方アレンジ

幻想事変

2007年 1stアルバム

 福岡県出身のロックバンド/同人音楽ユニット、岸田教団&THE明星ロケッツ。2005年より、岸田の主催するサークル「岸田教団」名義で何枚かの同人CDをリリース後、2007年に東方ライブイベントに出演するためにメンバーを募集。そうしてバンド活動としての「岸田教団&THE明星ロケッツ」を結成しました。福岡県出身または在住のメンバーで構成されており、リーダーの岸田(B/Gt)、ichigo(Vo)、イラストレーターも兼務する はやぴ〜(Gt)、みっちゃん(Dr)、サポートとしてT-tsu(Gt)。同郷のナンバーガール椎名林檎/東京事変などに影響を受けたパンキッシュなロックを展開します。タイトルなんてもろに東京事変ですね。
 本作は岸田教団名義で活動していた頃の『明星ロケット』と『SuperSonicSpeedStar』のリアレンジを中心に構成され、原曲は東方旧作『東方幻想郷 ~ Lotus Land Story』からの引用が多いです。ジャケットアートは同人サークルCYTOKINEのイラストレーター 蒲焼鰻によるもの。

 バンド名を冠した「明星ロケット」は「レトロスペクティブ京都」のアレンジ。緊張感溢れるイントロから惹きつけます。縦ノリの躍動感あるドラムがスコンスコンとスネアを鳴らし、ギターやベースがゴリゴリ。爽快な演奏に乗せて、メランコリックな歌メロが映えますね。
 「SuperSonicSpeedStar」は「星の器 ~ Casket of Star」のアレンジで、これも高いテンションが張り詰めます。歌はメロディアスですが、サビでは倍速ドラムをはじめとてもパンキッシュな印象です。
 そして本作のハイライト「歌舞伎町の魔女」。椎名林檎の「歌舞伎町の女王」を軸に「恋色マスタースパーク」を混ぜています。イントロからもろに「歌舞伎町の女王」ですね。ヘヴィな演奏かつダウナーな雰囲気ですが、メロディは「恋色マスタースパーク」なので口ずさみたくなるキャッチーさを備えています。やみつきになります。
 「夢は時空を越えて」は同名曲のアレンジ。破壊力のあるドラムをはじめアグレッシブな楽曲です。歌が始まると一気に音数を減らしますが、そうすると武骨なリズム隊が際立ちますね。サビや間奏ではけたたましく暴れ回ります。
 続いて「LotusLove」は4つ打ちドラムをはじめ躍動感のある演奏がノリノリ。疾走感に溢れる爽快な1曲です。
 「YU-MU」は「幽夢 ~ Inanimate Dream」が原曲。イントロからドライブ感があり、騒がしいドラムやギターの裏でグルーヴの効いたベースが爽快。メロディアスな歌には強い哀愁が漂います。
 そして後半のハイライト「ネクロファンタジア」。原曲は東方でもトップクラスの人気曲ですね。イントロから高揚感を煽ってきます。メロディラインが原曲と若干違うのが少し気になりつつ、一気に歌い上げる点には感服。そして激しい演奏のバックで薄っすら鳴るオルガンが良い味を出しています。
 ラスト曲「Ancienttemple」は「東方妖々夢 ~ Ancient Temple」のアレンジ。イントロは激しいですが、哀愁漂う歌メロを活かして音数を減らす展開が好みです。和を感じさせるichigoの歌は少し不安定ですが魅力的です。

 破壊力と躍動感に満ちた楽曲揃いで、ナンバーガール直系のサウンド。ロック好きにオススメできます。歌に哀愁が漂うのはichigoの声質ゆえでしょうか。

幻想事変
岸田教団&THE明星ロケッツ
 
Electric blue

2008年 2ndアルバム

 前作から1年のスパンを経て発表された同人2ndアルバムです。友人に薦められて聴き、初めてハマった同人CDが本作だったので思い入れがあります。東方屈指の人気原曲を集めてアレンジしているので聴きやすいです。
 射命丸文の魅力的なジャケットアートは、前作に引き続きCYTOKINEの蒲焼鰻が担当しています。

 オープニングを飾る「SPEED GRAPHER」は「風神少女」のアレンジ。イントロの徐々に盛り上がっていく感じが高揚感を煽ります(バスドラムの入りが良い)。原曲譲りのキャッチーなメロディを、勢い溢れるアグレッシブな演奏で引き立て、特にみっちゃんのドタバタとしたドラムが爽快です。間奏で主旋律を奏でるギターソロもグッときます。
 続く「フォールオブフォール」は「フォールオブフォール ~ 秋めく滝」のアレンジで、グルーヴィに唸る岸田のベースが跳ねるようなノリの良さを生み出しています。メランコリックなメロディラインを持ちつつも、躍動感のある演奏で駆け抜けます。
 個人的に本作のハイライトとなる「メイドと血の懐中時計」。同名の原曲が大好きなのですが、そんな同楽曲のアレンジの中でも頭一つ抜き出た良アレンジだと思います。ベースがゴリゴリ唸り、ドラムもダイナミズムに溢れています。原曲のメロディを踏襲したichigoの歌は、歌詞に散りばめたフレーズに十六夜咲夜を強く連想させます。
 「緋色のDance」は「亡き王女の為のセプテット」が原曲。やぴ〜の弾くギターが印象的なイントロは凛として時雨の「DISCO FLIGHT」のオマージュだとか。4つ打ちドラムや跳ねるようなベースをはじめ、勢いに溢れるダイナミックなロックアレンジがなされています。
 続いて「完全なる墨染の桜」は「幽雅に咲かせ、墨染の桜 ~ Border of Life」を引用して、イントロから太いベースを響かせる躍動感のあるアレンジを効かせます。前曲もそうですが、メロディの良さを活かしてゆったり聴かせても良いのではと思うのですが、バラード等とは無縁のパンキッシュでスリリングな疾走ロックを聴かせます。
 「芥川龍之介の河童」は、原曲「芥川龍之介の河童 ~ Candid Friend」を踏襲した3拍子を刻むものの、ゆったり感はなくて、むしろ殺気のような緊張感が満ちています。スリリングな演奏に、哀愁を帯びたichigoの歌が良い。
 そして「妖々跋扈 ~ Who done it!」をアレンジした「妖々跋扈」。イントロからノイジーに疾走します。歌が始まると、今か今かと暴れ回る機会を伺うドラムにニヤリ。キャッチーなメロディを激しくて躍動感のある演奏で楽しませてくれます。
 最後に「彼岸帰航」。「彼岸帰航 ~ Riverside View」のアレンジで、本作中唯一疾走しない楽曲で渋く哀愁が漂います。テンポはゆったりですが、イントロは凄まじくノイジー。静と動の極端な緩急をつけた演奏が、メロディアスな歌をドラマチックに引き立てています。

 特に有名な原曲をセレクトしてアレンジしているのでキャッチーなメロディを持っており、全編通して緊張感溢れる疾走曲に仕上がっています。個人的な思い入れもあり、岸田教団&THE明星ロケッツでは本作が一番好みです。

Electric blue
岸田教団&THE明星ロケッツ
 
ROLLING★STAR

2010年 4thアルバム

 東方アレンジの3作目。博麗神社例大祭7にて頒布されましたが、イベント5日前に入稿するというギリギリのスケジュールだったようです。本作の5ヶ月後にはメジャーデビューを果たし、同人オンリーで活動していた時代の最後の作品となりました。私はそれ以降追いかけていないのですが、メジャーでの活動と並行して同人活動も継続し、東方アレンジもその後何作も頒布しています。
 これまで全作詞を岸田が手掛けてきましたが、本作ではichigoも作詞に貢献。またジャケットイラストの担当も蒲焼鰻からTAQROに変わっており、TAQROはその後も岸田教団&THE明星ロケッツの作品制作に関わります。何パターンか作られたうち、あえてラフな案がジャケットに採用されたのだとか。

 「ラクトガール ~ 少女密室」のアレンジとなる「知ってる?魔道書は鈍器にもなるのよ」でアルバムの幕開け。キマっているパチュリー・ノーレッジのジャケット絵と相まって、頭悪そうな感じがしますね。笑 ですがイントロから強い緊張が張り詰めた、スリリングでダーティなロックを展開。メランコリックな原曲のメロディを活かす気があるのかないのか、かなり速いテンポでichigoの歌も巻き気味です。
 「thirdeyeblind」は原曲「少女さとり ~ 3rd eye」の持つ暗鬱な雰囲気を保ちつつも、スリリングなロックアレンジに仕上げています。メロディアスで憂いのある歌メロを主軸に置いて、ダークな雰囲気を帯びたノイジーなギターで飾ります。
 続いて「信仰は儚き人間の為に」はイントロからはやぴ〜のギターソロが悠々としていますね。みっちゃんの煽り立てるような高速ドラムがスリリングかつ疾走感を生み出しており、歌のバックでは岸田の骨太なベースが唸ります。
 「竹取飛翔」は「竹取飛翔 ~ Lunatic Princess」と「千年幻想郷 ~ History of the Moon」を混ぜてメロコア風にアレンジ。イントロはとても速いですね。歌が始まると音を間引いて速さは若干落ち着いた印象になりますが、サビでは高速ドラムをはじめ疾走感が戻ってきます。パンキッシュですが、メタルっぽいギターソロも時折聴けます。
 「二色蓮花蝶 ~ Red and White」をアレンジした「二色蓮花蝶」。パンキッシュな演奏で、歌のバックではゴリゴリベースが唸り、ギターもグワングワン鳴っています。
 「シンデレラケージ」は「シンデレラケージ ~ Kagome-Kagome」と「狂気の瞳 ~ Invisible Full Moon」の混合アレンジ。AメロBメロはメロディアスで憂いに満ちていますが、サビメロでは別の楽曲のように爆走します。「とおりゃんせ とおりゃんせ」の歌詞が耳に残りますね。
 「宵闇鳥」は「夜雀の歌声 ~ Night Bird」をアレンジしたもので、イントロから弾けています。相変わらず騒がしい演奏(褒め言葉)ですね。哀愁を帯びた力強くメロディアスな歌に、歌唱力の向上を感じます。個人的にはこの原曲のメロディにあまり馴染みがないこともあり、東方アレンジっぽさが少なくオリジナル楽曲のように感じます。
 ラスト曲「霊知の太陽信仰」は緊迫したイントロからテンションMAX。「霊知の太陽信仰 ~ Nuclear Fusion」と「業火マントル」を組み合わせた楽曲で、ファンクっぽいパートや、3拍子へのリズムチェンジなどトリッキーな展開もしつつ、メタリックな楽曲を繰り広げます。

 2つの楽曲を組み合わせてオリジナリティを出したり、ギターソロも目立つようになったりと、これまでと違ったアプローチが見られます。元々疾走感のある骨太なロックを聴かせてきましたが、本作ではパンク色が増した印象です。

ROLLING★STAR
岸田教団&THE明星ロケッツ
 

 

同人作品:オリジナル

LITERAL WORLD

2008年 3rdアルバム

 『Electric blue』と『ROLLING★STAR』の間に頒布された、岸田教団&THE明星ロケッツ名義では初となるオリジナルの同人作品です。楽曲はラノベや恋愛アドベンチャーのキャラクターをモチーフに書かれているそうで、全作詞作曲を岸田が担当しています。なお蒲焼鰻によるジャケット絵は「星空ロジ子」といいます。

 オープニングを飾る「コノハ」。イントロから哀愁を纏ったギターが切なく、ichigoの歌うメロディも哀愁を覚えます。ですが演奏はアグレッシブに弾けるようで、骨太なベースやリズムギターがヘヴィさを加え、ドラムは躍動感に満ち溢れています。続く「girl of nothing」はギターとベースがヘヴィな重低音をかき鳴らしつつ、スタスタと焦燥感を煽るみっちゃんのドラムをはじめパンキッシュで疾走感溢れる演奏を繰り広げます。歌はnano.RIPEにも通じる気がします。タイトル曲「literalworld」は4つ打ちの爽快なビートを刻み、はやぴ〜のギターがキャッチーなフレーズを奏でて勢いよく駆け抜けます。ノリノリの演奏ですが、歌はメロディアスで少し切ない感じ。「夏空」はドラムの躍動感はそのままに、他の楽曲より少しテンポを落として、ポップかつ哀愁のある歌メロをフィーチャーしています。ノイジーな演奏の合間に聴ける透明感のあるギターが素敵。続いて「hollow word」はノイジーで暴力的なイントロを聴かせます。速い演奏に乗せてメロディアスな歌を聴かせつつ、サビに向けて騒がしい演奏が盛り上げます。スリリングな1曲です。ミドルテンポの「最後の夜空」は、疾走曲ばかりの本作ではゆったりとした印象。ichigoの歌をフィーチャーしつつも、サビではノイジーに盛り上げる静と動の緩急ついた楽曲です。2番ではファンキーなギターを試したりして遊んでいる印象。ラスト曲「暁を映して」は少しトリッキーなギターリフが特徴的。歌が始まると暴力的なベースが、サビではドタバタ騒がしい高速ドラムが楽曲を飾り立てます。間奏はメタリックな質感で、キンキンと金属質なギターも聴かせます。

 東方アレンジでも見せたような破壊力に満ちた疾走感のある楽曲が揃っています。スカッと爽快ですが、切ないメロディラインも特徴的ですね。

LITERAL WORLD
岸田教団&THE明星ロケッツ
 
 
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