🇬🇧 Michael Schenker Group (マイケル・シェンカー・グループ)

レビュー作品数: 3
  

スタジオ盤

The Michael Schenker Group (神(帰ってきたフライング・アロウ))

1980年 1stアルバム

 天才ギタリスト、マイケル・シェンカー擁するマイケル・シェンカー・グループ(通称MSG)。メンバーはマイケル・シェンカー(Gt)、ゲイリー・バーデン(Vo)。またセッションミュージシャンとして、モ・フォスター(B)、サイモン・フィリップス(Dr)、元レインボーのドン・エイリー(Key)が参加。また元ディープ・パープルのベーシストで、一時期レインボーのベーシスト兼プロデューサーも務めたロジャー・グローヴァーがプロデュース。電極を付けられ治療を受けるかのようなマイケル・シェンカーのジャケットアートは、デザイナー集団ヒプノシスの作。
 なお『神』の邦題は当時ミュージック・ライフの副編集長だった酒井康による発案で、マイケル・シェンカーに「神」という愛称がついたのもこの邦題の影響が大きいでしょう。

 オープニング曲は「Armed And Ready」。切れ味の鋭いギターリフが爽快な、ノリの良いハードロック曲です。カラッとしていて明るく、オープニングにはピッタリです。続く「Cry For The Nation」ではほのぼのしたイントロに一気に落差を感じますが、突如爆発音が響き、そこから一転してシリアスなハードロックを展開します。歌メロは哀愁たっぷりですが、キャッチーで聴きやすいです。間奏で泣きまくるマイケルのギターがカッコいいですね。「Victim Of Illusion」はミドルテンポの楽曲。ヘヴィなリフが印象的です。続いて短いインストゥルメンタル「Bijou Pleasurette」。2分強の短い時間ながらも、哀愁漂う陰鬱で美しいメロディに浸ることができます。そして「Feel Like A Good Thing」ではノリの良いロックンロールを展開。ダーティなリフがカッコ良いですね。
 そしてアルバム後半に入り、本作のハイライトと言える楽曲「Into The Arena」。MSG最高のインストゥルメンタルです。前半はタイトに3連符のヘヴィなリフを刻み、緊張感をどんどん高めていきます。後半はとてもメロディアスにギターが歌います。マイケルのギタープレイのカッコよさも勿論なのですが、サイモンのドラムもとてもカッコよくて、自然と身体でリズムを刻んでしまいます。「Looking Out From Nowhere」はノリの良いロックサウンドですが、意外とポップなメロディ。続く「Tales Of Mystery」は哀愁漂うバラード曲。湿っぽいが美しい旋律を奏で、ゲイリーの歌もじっくりと聴かせます。最後は7分に渡る大作「Lost Horizons」。イントロから荘厳で気迫に満ちており、後半に進むにつれて緊迫感は強烈に高まっていきます。特にサイモンのドラムがスリリングです。

 名盤と名高い本作。ただ個人的にはボーカルが残念で、楽曲をうまく引き立てられずに潰してしまっているものもあるように思います。もっと良いボーカリストに巡り会えていたら傑作に仕上がったんじゃないか…と。それゆえにインストゥルメンタル「Into The Arena」が飛び抜けて輝いて見えるのです。

The Michael Schenker Group
Michael Schenker Group
 
MSG (神話)

1981年 2ndアルバム

 マイケル・シェンカー(Gt)、ゲイリー・バーデン(Vo)の2人だったマイケル・シェンカー・グループ。ここにポール・レイモンド(Key/Gt)とクリス・グレン(B)、そしてコージー・パウエル(Dr)が加入し、強力なラインナップの完成です。タイトルは前作に引き続きバンド名を冠しており、邦題も前作に引き続き「神」シリーズ。笑

 アルバムは「Are You Ready To Rock」で開幕。カラッとしてアメリカンな雰囲気の、シンプルなロックンロールです。ソリッドなギターリフと、コージーのバスドラムが強烈に響きますね。「Attack Of The Mad Axeman」は変化の激しい楽曲です。イントロからマイケルのギターが泣きまくる…かと思えば最初だけで、そこからは代わり映えのない退屈なロック曲に。しかし、中盤からはまた別の楽曲のように哀愁漂う歌を披露する楽曲へと変貌し、更に終盤はアグレッシブな雰囲気になって終わります。続いて「On And On」はノリの良いロックンロール。ゲイリーは時折ファルセットを用いて哀愁を引き立てます。そしてギターソロが素晴らしい。「Let Sleeping Dogs Lie」はダーティなギターと、シンプルだけどとてもパワフルなドラムが強烈です。哀愁漂うメロディも良いし、ラストのギターソロが素晴らしい。前半の楽曲では一番良いですね。
 レコードでいうB面、アルバム後半は「But I Want More」で開幕。哀愁漂う繊細な音を奏でたかと思えば、アグレッシブなロック曲に変貌。哀愁はキープしつつもかなりヘヴィになります。グルーヴ感抜群のベース、ツーバスをドコドコ鳴らす激しいドラム、切れ味の鋭いギター。中々聴きごたえがあります。続いて哀愁バラード「Never Trust A Stranger」。メロディがとても美しく、ベタな盛り上げ方ですがドラマチックなんですよね。アルバムの中では浮いている感じはあるものの、純粋に良いバラードです。「Looking For Love」は超パワフルで哀愁漂うロック曲。やはりコージーという名ドラマーの獲得が大きく、力強さが違いますね。そしてマイケルのギターもよく泣くこと。緊迫感に満ちており、スリリングでカッコ良い1曲です。最後に「Secondary Motion」。哀愁を纏いつつもノリの良いロック曲でアルバムを締め括ります。

 前作に並んで傑作に挙げる人も多い本作。正直序盤が退屈な印象なのが大きなマイナス点です。後半に向かうにつれてスリリングだったりメロディアスだったりと魅力的な楽曲も増えるんですけどね。曲順で損しているんじゃないでしょうか。

MSG
Michael Schenker Group
 
Assault Attack (黙示録)

1982年 3rdアルバム

 ボーカリストに恵まれなかったMSGが掴んだ奇跡の瞬間、それが本作でした。
 前作でMSGに加入した友人のコージー・パウエルに誘われて、元レインボーのグラハム・ボネットがメンバーに加入しました。しかしそのコージーは本作の制作前に脱退してしまうという。この時のラインナップは、マイケル・シェンカー(Gt)、グラハム・ボネット(Vo)、クリス・グレン(B)、テッド・マッケンナ(Dr)、セッションミュージシャン扱いでトミー・エア(Key)。レインボーやアイアン・メイデン等数多くのHR/HMバンドを手掛けたマーティン・バーチがプロデュースしました。また、燃え盛る背景にギターを掲げるジャケットアートもカッコいいですね。

 オープニングを飾るのは表題曲「Assault Attack」。イントロから迫力満点のヘヴィなサウンドで、そこにがなり声でパワフルなグラハムの歌唱が良く似合うこと。ギターがかっこよいのですが、バックの楽器もグラハムのボーカルとマイケルのギターを引き立てていて、特にテッドのドラムが良い感じ。そして間奏のクラシカルなメロディからの蹂躙するような重低音、これが実にスリリングなこと。滅茶苦茶カッコいい楽曲です。続く「Rock You To The Ground」はグラハムの声をフィーチャーした楽曲でしょうか。スローな楽曲に、血管がブチ切れんばかりのパワフルな歌唱が圧倒的です。そして続くのは名曲「Dancer」。レインボー時代もそうでしたが、がなり立てるような歌声でおよそポップには似つかわしくない声質だというのに、何故かこうしたポップな楽曲がしっくりくるのはギャップ萌えでしょうか?笑 キャッチーなメロディで、コーラスワークも含めて明るい印象を受けるハードポップ曲です。続く「Samurai」ではグラハムに負けじとパワフルでヘヴィなリフを奏でるギターがカッコいい。サムライをフィーチャーした歌詞も少し嬉しいですね。
 アルバム後半のオープニングは、緊迫感の中で哀愁を漂わせる「Desert Song」。ひんやりとした陰鬱で鋭利なサウンド、そしてゴリゴリ唸るクリスのベースもカッコ良い。続く「Broken Promises」はシンプルで骨太なロックンロール。サウンドは大したことはないものの、グラハムの血管ブチ切れ気味のパワフルな歌唱が牽引します。跳ねたリズムの「Searching For A Reason」を挟んで、ラスト曲「Ulcar」はインストゥルメンタル。グルーヴ感抜群のノリノリな楽曲で高揚感を煽り立てます。これがなかなかにカッコ良いのです。

 ゲイリー・バーデンのボーカルが苦手な私は断然グラハム派(ちなみにレインボーもグラハム派)。グラハムの暑苦しいこの歌唱が、MSGの楽曲群を魅力的に引き立てたことは間違いありません。かなり贔屓目ではありますが、素晴らしい名盤です。1作限りのラインナップなのが残念です。

 なお、グラハムは本作後のツアーリハーサルで大失態を犯して逃走したため、そのまま解雇となりました。なんでも、歌詞を覚えきれずカンペをステージに置いていたら、観客がステージ上に押し寄せてカンペが散乱。パニくるグラハム、間の悪いことにチャックが全開。しかもノーパン主義の彼はモロ出し。慌ててチャックを閉めようとしてイチモツを挟んでしまい、痛みと恥ずかしさで逃走…というエピソードだそうです。笑 結局このラインナップではライブが行われることもなく、この最高のコラボは一瞬にして終わってしまうのでした。

Assault Attack
Michael Schenker Group
 
 

関連アーティスト

 マイケル・シェンカー(Gt)の古巣で、実兄のルドルフ・シェンカーが所属。

 
 マイケル・シェンカー(Gt)の古巣。
 
 ドン・エイリー(Key)、コージー・パウエル(Dr)、グラハム・ボネット(Vo)らが一時期参加。
 
 コージー・パウエル(Dr)のソロ活動。
 
 
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