🇺🇸 Television (テレヴィジョン)

レビュー作品数: 2
  

スタジオ盤

Marquee Moon (マーキー・ムーン)

1977年 1stアルバム

 ニューヨークパンクの中でも遅咲きのテレヴィジョンによる1stアルバム。
 テレヴィジョンはトム・ヴァーレイン(Vo/Gt/Key)、リチャード・ロイド(Gt/Vo)、リチャード・ヘル(B/Vo)、ビリー・フィッカ(Dr)の4人で結成しました。1975年にリチャード・ヘルが脱退し、フレッド・スミス(B/Vo)をメンバーに加え、本作のレコーディングを迎えました。アンディー・ジョンズとヴァーレインの共同プロデュース。

 初めて聴いたときはこれがパンクアルバムなのかと驚きました。ヘタクソな歌と演奏で勢い任せの短い楽曲を奏でる、パンクに持っていたのはそんなイメージでしたので、テクニック偏重のプログレ・ハードロックを好んでいた私には抵抗感があってなかなか手を出せなかったジャンルでした。しかし本作は10分に渡る長尺の楽曲があって、だれることなく聴かせる構成力がある。私がパンクに持っていた偏見を打ち消した本作は衝撃的で、他のパンク作品を聴けるようになったキッカケにもなったので、思い入れ深い作品です。よくよく聴くと、ニューウェイヴを先取りしたような作風でもあるんですが、反体制的な歌詞だったり、ニューヨークパンクの聖地ライブハウスCBGBを拠点に他のパンクバンドらと度々ライブ演奏していた経歴、ニューヨークパンクの女王パティ・スミスと昔付き合っていたというヴァーレインの箔もあってか、遅咲きのニューヨークパンクという位置づけになっています。ジャケットの真ん中がフロントマンのヴァーレインですが、この人やけに首が長いですね。笑

 アルバムは「See No Evil」で開幕。ヴァーレインとロイドのツインギターが絡み合って、渋い音色を奏でます。ヴァーレインのヘロヘロで気だるいボーカルは、バックの演奏陣が作り出す緊張感を和らげてくれますね。続く「Venus」は哀愁たっぷりのメロディアスなギター。ボーカルよりギターの方が歌っている気がします。笑 魅力的なギターの陰で、さりげなく手数の多いドラムも聴きどころです。「Friction」は緊張感溢れる1曲です。哀愁あるリードギターは切ない気分にさせますが、その後ろで強烈な緊迫感を放つリズム隊と合わさって非常にスリリング。並のパンクバンドではこの緊張感は出せません。そして表題曲「Marquee Moon」。ツインギターが奏でるフレーズはひたすらに反復され、リズム隊も単調なのですが、強烈な緊張感があります。そして時折表れる、緊張を一段と高める圧巻のギターソロ。特に後半ギターソロの独壇場があまりに凄まじいので必聴です。そしてギターソロの裏でドラムもカッコいいという…。10分を超える大曲ですが、全く飽きさせません。この緊張感の持続は流石で、素晴らしい名曲です。
 レコードでいうB面、アルバム後半は「Elevation」で幕開け。ギターが切ない雰囲気を作り出します。哀愁漂う楽曲に乗るヴァーレインのヘロヘロボーカルは気が抜けますが、彼の歌が楽曲の凄まじい緊張感を和らげてバランスを良くしている気がします。続く「Guiding Light」はピアノが加わり、しっとりと静かに聴かせる切ないバラードです。本作では数少ない、緊張感から解き放たれる楽曲のような気がします。「Prove It」は緩い雰囲気ですが、手数の多いドラムやギターソロはスリリングです。ラストは7分強の「Torn Curtain」。演歌のような哀愁漂うサウンドで、気だるいボーカルでなければ演歌そのものです。笑 悲壮感に溢れる1曲で、ドラマチックです。

 とにかくアルバム全体的に緊張感が保たれていて、だれることなく聴かせてくれます。元々バンドの活動自体は長くて、ライブを通じて演奏のこなれた作品群を本作に纏め上げたようなので、完成度の高さも納得です。
 素晴らしい作品なので、パンクというジャンルに偏見がある人にこそ聴いてほしい作品です。

Marquee Moon (Dig)
Television
 

Adventure (アドヴェンチャー)

1978年 2ndアルバム

 前作と似た構図に色合いが違うジャケットは、さしずめ青盤に対する赤盤でしょうか。
 ジミ・ヘンドリックスのレコーディングに携わったジョン・ジャンセンと、バンドのフロントマンであるトム・ヴァーレインの共同プロデュース。前作『マーキー・ムーン』に見られた高い緊張感は薄れ、ソフトなロックになりました。前作最大の魅力がピンと張り詰めた緊張感だったので、その緊張の糸が解れてしまったかのような本作は、正直言ってあまり魅力は感じません…。前作に比べると「ダレた」という第一印象を抱いてしまいますが、しかし聴き進めていくとダレた訳ではなく方向性が変わってしまったような感じです(果たしてそれが受け入れられるかどうかは別問題として…)。

 オープニング曲は「Glory」。前作の緊張感はどこに消えたんだというくらいに、爽やかなロックです。続く「Days」はツインギターの良さを活かしたメロディアスな1曲で、ギターサウンドが美しい。牧歌的な雰囲気で優しいのですが、やはり緊張感は消えてしまいました。前作の路線を望む人への救いは「Foxhole」で、前作に入っていてもおかしくない緊張感を見せます。グルーヴ感のあるベースが良い感じ。歌はなんか変なメロディですけどね。ラストのギターの、緊張感を保ちながら昇天していくかのような展開なんかは流石です。「Careful」はとても爽やかで、夏のビーチに似つかわしい陽気な雰囲気の楽曲。続く「Carried Away」は幻惑的なムードでゆったりと聴かせます。終盤のピアノが綺麗。
 アルバム後半は「The Fire」で幕開けです。スローテンポで強烈な哀愁が漂う演奏と歌唱を披露し、まるで演歌のような楽曲。本作ではかなりインパクトのある1曲です。「Ain’t That Nothin’」は前作に近いような雰囲気ですが、緊張感に欠けるのはプロダクションによるものでしょうか。「The Dream’s Dream」では哀愁あるギターと、必要なところで魅せてくるドラムが聴きどころです。ただ、聴きやすさを重視したのか、さらっと流れてしまう。もう一歩緊張感があれば名曲なのに…とか思ってしまうんです。

 凄まじい緊張感を放っていた、哀愁漂う前作とは随分と路線が変わってしまったなと思います。ゆったり聴ける作品ではあるものの、正直、前作の路線からの変化がどうにも受け入れがたいです。

Adventure
Television
 
 

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 脱退したオリジナルメンバー、リチャード・ヘル(B/Vo)が結成した自身のバンド。

 
 
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