🇺🇸 Patti Smith (パティ・スミス)
レビュー作品数: 2
スタジオ盤
1975年 1stアルバム
ニューヨークパンクの女王とも呼ばれるパティ・スミス(本名パトリシア・リー・スミス)は、米国シカゴ出身のシンガーソングライターです。1946年12月30日生まれ。1969年にニューヨークに移住して詩や演劇等の芸術活動に取り組み、演奏をバックに詩を朗読するような活動をしていたそうです。1974年頃に自身のバンド、パティ・スミス・グループを結成。パティ・スミス(Vo/Gt)、レニー・ケイ(Gt/B/Vo)、アイヴァン・クラール(B/Gt/Vo)、リチャード・ソール(Key)、ジェイ・ディ・ドハティ(Dr)のラインナップで本作でデビュー。本作リリース時パティ・スミスは28歳で、遅咲きのデビューでした。
プロデューサーには元ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのジョン・ケイルが就いています。パティ・スミスはヴェルヴェット・アンダーグラウンドのようにアート系のパンクです。
ジャケットアートはかねてより交流のあった写真家ロバート・メイプルソープによるもの。
「Gloria」でアルバム開幕。ヴァン・モリソンのカバー曲に、前半にパティ・スミス自身の楽曲を組み合わせたそうです。ピアノをバックに語りで始まる静かな楽曲ですが、徐々に盛り上がっていきます。そして語尾がファルセット気味の独特な歌唱で「Gloria, G-l-o-are-i-a」の連呼は強烈ですね。続く「Redondo Beach」はレゲエのリズムを取り入れた楽曲です。陽気な雰囲気の演奏ですが、歌のトーンは低くて、こういう持ち味なのでしょうか。「Birdland」は9分に渡る楽曲です。演奏をバックに朗読するような歌唱は、元々の彼女のスタイルでしょうか。バックの演奏はしっとりとしたピアノ伴奏が終始支えますが、歪んだギターが途中から加わり、後半スピーカーの左右を往来してグワングワンと掻き乱します。そして「Free Money」はしっとりとしたピアノをバックに感傷的な歌で始まる哀愁漂う1曲です。しかし楽器が加わってくるにつれ徐々に加速。疾走感を煽るドラムが非常にスリリングです。
レコードでいうB面、アルバム後半は「Kimberly」で幕開け。ベースとドラムのシンプルなリズムの反復が心地よく、それに乗る起伏に乏しい歌はリズム隊に意識を向けさせます。でも歌はメロディアスなパートもあったり。続く「Break It Up」は3拍子の、哀愁漂うドラマチックな楽曲です。テレヴィジョンのトム・ヴァーレインがギターで参加していますが、パティ・スミスと一時期付き合ってたらしいですね。続いて9分半に渡る大作「Land」は3パートから成る組曲です。語りとともに時計の音のように始まる演奏は徐々に音量とスピードを上げ、「Gloria」みたいになる展開はスリリングです。その後演奏は後退して朗読パートへ。演奏が再び前面に出てきてノイジーな音を奏でる頃、歌も非常に激しくなりますが、最後はフェードアウト。そしてラスト曲「Elegie」はタイトルのとおり哀愁漂う重苦しい楽曲です。でも美しい。
本作はロックの名盤にもよく挙げられる、個性的な作品です。アート寄りのアプローチは聴く人を選ぶかもしれません。私は間を空けて何度か聴いているものの、強烈なオープニング曲以外はそこまで惹かれないんですよね。
1978年 3rdアルバム ※Patti Smith Group (パティ・スミス・グループ)名義
パティ・スミス・グループの名義で発表した3作目。リチャード・ソールが病気のため、一部の楽曲を除き本作のレコーディングに参加できずサポートメンバー扱いで、代わりにブルース・ブロディ(Key)がパティ・スミス・グループに参加しています。プロデューサーにはジミー・アイオヴィンを迎えています。
オープニング曲は「Till Victory」。オルガンが軽快に鳴るアップテンポの楽曲です。とてもキャッチーで、ボストンのようなサウンド。パティ・スミスの歌はどことなく中島みゆきっぽい気もします。続く「Space Monkey」もオルガンが前面に出ています。ミドルテンポの楽曲に乗せて、女性とは思えないくらいの、低くてとても力強い歌唱が響きます。「Because The Night」はブルース・スプリングスティーンとの共作。これが本作のハイライトです。とてもキャッチーで、ほんのり哀愁を漂わせたメロディラインは邦楽にも通じます。ピアノの美しい音色を引き締める力強いドラムも魅力的。続いて「Ghost Dance」はアコギとパーカッション主体の、呪術的な雰囲気のある怪しげな楽曲です。続く「Babelogue」と次曲はライブ録音。盛り上がる会場に向かって語りを入れた後で、アップテンポの「Rock N Roll Nigger」に繋がります。ノリの良い1曲で、気分が明るくなります。
アルバム後半は「Privilege (Set Me Free)」で幕開け。オルガンをバックに静かな歌で始まります。ドラムが加わり、楽器が増えてバンドサウンドになったらアップテンポの楽曲へ変貌。でも間奏で語るような歌が入るのは1st『ホーセス』でも見られたスタイルの名残でしょうか。3連を刻むピアノをバックに哀愁漂う歌を聴かせる「We Three」を挟んで、「25th Floor」はT・レックスのようなグラムロック感のある楽曲です。盛り上がってくると、そのまま途切れず「High On Rebellion」に続きますが、こちらはギターがカチャカチャと細かく刻みます。ラスト曲は「Easter」。オルガンが奏でる音色は暗く悲しげで、後半の鐘と合わさるギターも哀愁が漂います。メロディは単調ですが感傷的な歌も染み入ります。暗くも神聖な雰囲気のある1曲です。
オルガンが前面に出ていて、明るくキャッチーな印象の楽曲が多く聴きやすいです。
関連アーティスト
夫のフレッド・スミスが所属しているガレージロックバンド。
類似アーティストの開拓はこちらからどうぞ。