🇬🇧 Visage (ヴィサージ)

レビュー作品数: 2
  

スタジオ盤

Visage (フェイド・トゥ・グレイ)

1980年 1stアルバム

 イングランド出身のヴィサージは、シンセポップ・ニューロマンティックグループです。バンドの中心人物スティーヴ・ストレンジ(Vo)はナイトクラブ「デヴィッド・ボウイ・ナイト」を主催し、そこからニューロマンティックの文化が生まれたそうです。
 バンドはスティーヴ・ストレンジ(Vo)にラスティ・イーガン(Dr)、ミッジ・ユーロ(Key/Gt)の3名で1978年に結成。そこにウルトラヴォックスのビリー・カーリー(Vn/Key)、マガジンのジョン・マッギオーク(Gt/Sax)、デイヴ・フォーミュラ(Key)、バリー・アダムソン(B)が加入しました(バリーは脱退してサポートとして参加)。
 ヴィサージ最大のヒット曲「Fade To Grey」を収録した本作はミッジ・ユーロ(ウルトラヴォックスも兼務)がプロデュースしました。

 バンド名を関した「Visage」で幕開け。無機質なビートに電子音、ひんやりとした鍵盤が高揚感を掻き立てます。歌が始まると晴れやかに広がる印象。ビート感の強いドラムが爽快ですね。ニューウェイヴらしいチープさが魅力的です。続く「Blocks On Blocks」はリズミカルなドラムやベースが明瞭な輪郭を描き、スティーヴの歌を引き立てます。歌メロも耳に残りますね。そのまま「The Dancer」へ突入。スリリングなインストゥルメンタルで、ダイナミズムに溢れるドラム、ゴリゴリベース、ソリッドなギター等が緊迫した空気を生み出します。でも同時に高揚感もあって気持ちのよい良曲です。「Tar」は歪めた電子音が強烈。楽曲が進むとチープなドラムがリズミカルに楽しませてくれます。そして代表曲「Fade To Grey」。チープな電子音と力強いバスドラムのビート、そして楽曲を彩る重厚なシンセが、躍動感と緊張感を同居させます。歌は比較的単調というか、同じフレーズをひたすらに反復します。
 アルバム後半は「Malpaso Man」で幕開け。メリハリのついた強烈なビートはアグレッシブで勢いに溢れていて、とてもカッコ良いです。シンセも晴れやかに楽曲を引き立てます。そのまま続く「Mind Of A Toy」。序盤は素朴な演奏が歌を引き立てますが、途中からカラフルなシンセが華やかに彩ります。ドリーミーな感覚。「Moon Over Moscow」は良い意味でチープなサウンドのテクノポップで、躍動感があって、キャッチーなメロディラインが魅力的です。ほぼインスト曲ですが、コーラスやヴォコーダーを通した機械的なボイスがちょっとだけアクセントとして入ります。そのまま続く「Visa-Age」。躍動感のあるピコピコサウンドも楽しいし、耳に残る奇妙な歌は口ずさみたくなるキャッチーさがあります。最後にインストゥルメンタル「The Steps」。バックで鼓動のようなビートを鳴らしながら、輪郭のぼやけたシンセが重厚な雰囲気を生み出しています。

 ウルトラヴォックス兼任メンバーが2名参加していることもあり、件のバンドに似たシンセポップを展開します。曲間を繋ぐ演出でアルバムトータルのまとまりも良いうえ、キャッチーな楽曲が多くて魅力的な作品です。

Visage
Visage
 
The Anvil (舞-ダンス-)

1982年 2ndアルバム

 ジョン・マッギオークがスージー・アンド・ザ・バンシーズに専念するため脱退、5人体制での制作となりました。本作もミッジ・ユーロがセルフプロデュースしています。
 ヴィサージ自身が発信源となったニューロマンティックのブームを逆輸入して、クラブシーンを意識してファンクを取り入れたダンサブルなサウンドになっています。ヴィサージにとって最高位となる全英6位を獲得しました。

 オープニング曲「The Damned Don’t Cry」はシンセが単調な音色を鳴らし、そこに力強くリズミカルなビートが加わります。スティーヴ・ストレンジの囁くような歌唱は耽美な雰囲気。後半に進むにつれて神聖な空気を醸します。続いてタイトルを関した「Anvil (Night Club School)」。低音の鍵盤がダンサブルなグルーヴを生み出しますが、全体的には陰りがあるうえに張り詰めている印象です。焦燥感を煽るスリリングな楽曲です。続く「Move Up」はミッジのソリッドなギターが唸り、ダークな雰囲気です。鍵盤が低音で無機質な反復を行い、中毒性を生み出しています。「Night Train」はミニマルなシンセに加えてベースがグルーヴ感を生み出しつつ、華やかなサックスがオシャレな雰囲気に仕立てています。ピアノも混じって音数多くゴチャゴチャしていますが、ノリが良いので気持ちの良い楽曲です。
 アルバムは後半に突入。「The Horseman」はファンク曲で、グルーヴの強い演奏を繰り広げます。ドラムの存在感が結構強い感じ。「Look What They’ve Done」はハンドクラップのようなノリの良いリズムに加えて、ラスティ・イーガンの叩くパワフルなドラムが先導しますが、シンセも豊かな音色で楽曲をロマンティックに彩ります。バリー・アダムソンのファンキーなベースがカッコ良い。続く「Again We Love」は、リズム隊が強調されてはいるもののファンク色はやや控えめで、前作寄りのシンセポップ曲です。ひんやりとしたシンセが暗い雰囲気で、終盤の即興的な電子ピアノも不穏な空気を醸します。「Wild Life」は強靭なベースにダイナミズム溢れるドラムが主役。タイトルどおり野性味のある楽曲です。そしてラスト曲「Whispers」はインストゥルメンタル。シンセが神秘的で幽玄な雰囲気を醸し出します。後半は優雅さも加わります。

 前作とは大きく変わって、ファンク色が強くグルーヴが強烈です。チープなピコピコサウンドは減退しました(個人的にはそこが魅力だったのですが…)
 本作の後、ウルトラヴォックスに専念するためミッジ・ユーロが脱退。ビリー・カーリーとデイヴ・フォーミュラも、サポートメンバー扱いになります。

The Anvil
Visage
 
 

関連アーティスト

 ミッジ・ユーロ(Gt/Key)とビリー・カーリー(Vn/Key)が掛け持ち。

 
 ジョン・マッギオーク(Gt/Sax)、デイヴ・フォーミュラ(Key)、バリー・アダムソン(B)が掛け持ち。
 
 ジョン・マッギオーク(Gt/Sax)脱退後の移籍先。
 
 
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