🇬🇧 Asia (エイジア)

レビュー作品数: 1
  

スタジオ盤

Asia (詠時感~時へのロマン)

1982年 1stアルバム

 元キング・クリムゾンのジョン・ウェットン(Vo/B)、元イエススティーヴ・ハウ(Gt)とジェフ・ダウンズ(Key)、元ELPのカール・パーマー(Dr)という英国プログレ界の大御所が集まったスーパーバンド、エイジア。1981年に結成しました。
 メンバーのキャリアに、ロジャー・ディーンによる幻想的なジャケットが合わされば、どんなテクニカルなプログレ楽曲が出てくるんだろうかと期待してしまいますが、蓋を開けてみるととても明快な、1980年代を象徴する華やかなポップ作品に仕上がっています。しかしこれが実に良い。プログレのエッセンスを混ぜつつもコンパクトに、そしてメロディ重視で作られた楽曲群が功を奏して、米国ではビルボードチャート9週連続1位、全世界売上1500万枚という大ヒット作品となりました。産業ロックと揶揄されることもありますが、これだけ売れるメロディセンスは馬鹿にできません。その産業ロックの大傑作として知られるジャーニーの『エスケイプ』を手掛けたマイク・ストーンがプロデューサーに就きました。

 オープニング曲「Heat Of The Moment」は、プログレのエッセンスを3分台というコンパクトに纏め上げたエイジアの代表曲です。ウェットンの歌うキャッチーなメロディと、ハウのソリッドなギター。ダウンズのキーボードによってポップさを兼ね備えたサウンドに仕上がります。徐々にスピードを上げていきますが、ちょっと危なっかしいパーマーのドラムがまたスリリングです。続いて「Only Time Will Tell」。ファンファーレのような晴れやかなイントロに始まり、静かなバックにウェットンの渋く伸びやかな歌声が響き渡ります。唸りを上げるベースもカッコ良いですね。「Sole Survivor」はダークな雰囲気の演奏に、哀愁のある歌メロが響きます。コーラスワークも美しい。ポップでご機嫌な雰囲気の「One Step Closer」を挟んで続く、「Time Again」がスリリングな名曲です。非常にヘヴィで不穏なイントロから始まるのはノリの良い音楽で、バックの演奏と掛け合いをするかのような歌が印象的。ジャズのような洒落た間奏も聴き心地がよいです。
 レコードでいうB面は「Wildest Dreams」で開幕。パンチの効いたメリハリのあるサウンドが強烈な緊張感を作り出します。終盤のパーマーの高速ドラムがとてもスリリング。「Without You」は強烈な哀愁が漂うバラード曲。展開が目まぐるしい楽曲で、序盤・終盤と、中盤では全然違う楽曲のようです。続く「Cutting It Fine」はメロディアスな歌が印象的で、演奏ではハウのギターが冴えますね。やけに長いアウトロは次曲への布石でしょうか?ダウンズのピアノが美しいです。ラスト曲は「Here Comes The Feeling」。イントロが爽やかなハードポップですが、歌が始まると哀愁漂うメロディに。でもサビは晴れやかで清々しい。最後まで魅力的な名曲揃いでした。

 本作は1980年代を代表する名盤の1枚です。とてもキャッチーな楽曲が揃っていて聴きやすい。プログレが難解でハードルが高いと感じる方には、プログレポップな本作は入門作として最適です。
ジョン・ウェットンはベースを弾かせても上手いですが、エイジアでは渋く伸びやかな歌唱が特に素晴らしいと感じさせてくれます。なおスティーヴ・ハウはステージでバンド名を「イエス」と紹介してしまうなど、古巣に未練たらたらだったようです。笑

Asia
Asia
 
 

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