🇬🇧 Fleetwood Mac (フリートウッド・マック)
レビュー作品数: 3
スタジオ盤
1975年 10thアルバム
フリートウッド・マックは50年以上のキャリアを持つバンドで、1967年にイングランドのロンドンで結成されました。結成当時はブルースロック路線でしたが、度重なるメンバーチェンジを経験。また活動拠点を米国に移し、米国のデュオ「バッキンガム・ニックス」をメンバーに迎え入れたことから、ソフトロック路線にシフトして大ヒットを生み出しました。メンバーはミック・フリートウッド(Dr)、ジョン・マクヴィー(B)とクリスティン・マクヴィー(Key/Vo)夫妻、新たに迎え入れたリンジー・バッキンガム(Gt/Vo)とスティーヴィー・ニックス(Vo)。プロデューサーにはキース・オルセンを起用しています。本作からは3つのヒットシングルが生まれ、アルバムは500万枚以上の大ヒットとなりました。
アルバムは「Monday Morning」で幕開け。力強くも軽快なビートに乗せて、リンジーの甘い歌声が響きます。メロディはキャッチーで、コーラスワークも明るく賑やかな雰囲気。オープニングに相応しい爽やかな1曲です。「Warm Ways」はスライドギターがメロウな雰囲気を作り出します。クリスティンの低音アルトは優しく諭すかのよう。「Blue Letter」はリンジーの歌う爽やかなアップテンポ曲。カラッとして陽気な、アメリカンなロックンロールに仕上がっています。そして名曲「Rhiannon」。私はこの曲に一目惚れ(一聴惚れ?)してフリートウッド・マックと本作を知ったのですが、Superflyがカバーしているので先に聴いたのはカバーだったのかもしれません。でもスティーヴィーの歌声がとにかく魅力的で、すぐにこちらのオリジナルが好きになったのを覚えています。低音はハスキーで気だるげに、高音は可憐なソプラノボイスを駆使して、キャッチーなメロディラインを歌うスティーヴィーに魅せられます。やはりフリートウッド・マックと言えばこの曲だと思っています。続いてクリスティンの歌う「Over My Head」。小気味良いアコギやうっすら鳴り響くオルガンが少しレトロで心地良い演奏を展開します。「Crystal」はアコースティックでまったりとした雰囲気。リンジーが優しく歌い、スティーヴィーがコーラスを担当。相性の良い2人は当時恋人同士でした。
アルバム後半に入り、クリスティンの歌う「Say You Love Me」。ピアノやバンジョーもあって軽快ですね。ジョンの弾くベースが結構心地良いです。「Landslide」はスティーヴィーの歌う1曲。ほぼアコギだけのシンプルなサウンドに、ハスキーな低音で心地良く聴かせます。セールスに恵まれなかったバッキンガム・ニックス時代に書かれた楽曲だとか。「World Turning」はイーグルスにも通じる雰囲気です。少し泥臭いギターやリンジーの強いボーカルはハードな印象を受けますが、跳ねるようなリズム隊は爽快です。「Sugar Daddy」はシンプルなリズム隊に乗せて明るい雰囲気の楽曲です。ハモンドオルガンが良い感じ。クリスティンの歌は落ち着いていますが、メロディはポップな印象です。最後の「I’m So Afraid」はリンジーの歌う、陰のある重厚な楽曲。ギターがヘヴィで哀愁漂うメロディを奏でます。
「Rhiannon」が素晴らしい!以上!…という総評はあまりに雑ですが、3名のボーカリストを抱えるフリートウッド・マック、魅力的な女性ボーカリスト・スティーヴィーの歌う割合をもっと増やして欲しいというのが正直なところです。
1977年 11thアルバム
フリートウッド・マックの大ヒットアルバムで、2012年までに累計4000万枚以上を売り上げている作品です。リンジー・バッキンガム(Gt/Vo)とスティーヴィー・ニックス(Vo)は破局、ジョン・マクヴィー(B)とクリスティン・マクヴィー(Key/Vo)夫妻も離婚、またミック・フリートウッド(Dr)も妻と離婚しています。そんな状況でバンドメンバーとしては残り続けるという、歪な人間関係が歌詞の中にも表れているようです。ギスギスした環境はメンバーを疲弊させましたが、同時に音楽という逃げ道によって救われたとも。驚異的なセールスで全米31週1位
ジャケット写真は197cmという長身のミックと、妖精のようなスティーヴィー。ミックの股間のキン○マらしきものはトイレの貯水槽のボールをぶら下げています。
リンジーの歌う「Second Hand News」で幕開け。明るいトーンで、そしてカントリーっぽい雰囲気の楽曲で小気味良いアコギやリズム隊が爽快です。続いてフリートウッド・マック唯一の全米1位獲得シングル「Dreams」。スティーヴィーの憂いを帯びた歌声が切なく魅力的ですが、1位を取った楽曲にしては大きな盛り上がりもないですね。別れておかしくなりそうな男に、女が諭すようなメッセージを投げかけます。「Never Going Back Again」はカントリー調の1曲で、ほぼアコギだけのシンプルな演奏に乗せてリンジーが歌います。ダメになってた彼女を受け入れたけどもう受け入れない…と。前曲も含めて元恋人を互いに責めてる感じがします。「Don’t Stop」はノリの良いリズム隊を中心に明るい雰囲気ですね。クリスティンが離婚後の気持ちを書いた曲で、クリスティンとリンジーがボーカルを取ります。「Go Your Own Way」はリンジーの歌う明るくキャッチーな1曲。演奏やメロディはとても爽やかで、後のいわゆる「産業ロック」の登場を予感させる好印象な楽曲です。でも「君は君自身の道を行けばいい (一人で好きに生きればいい)」と歌う歌詞は、スティーヴィーを突き放すような内容という…。「Songbird」はクリスティンの歌うしっとりとした楽曲。ピアノとアコギだけのシンプルなサウンドがじんわり響きます。続いて2004年の再発時に追加となった「Silver Springs」。静かに淡々とスティーヴィーが歌い、アコギも心地良いのですが、後半に向けて徐々に盛り上がっていきます。終盤はビックリするくらいのだみ声で激しく歌いますが、歌詞はリンジーへの当てつけのようで、怒りも篭めてるんでしょうか。
レコード時代のアルバム後半は「The Chain」で開幕。ミックの力強いリズムビートと小気味良いアコギを中心としたシンプルなサウンドに、スティーヴィーとリンジーの歌をフィーチャー。終盤はジョンのベースソロを皮切りにハードなロックンロールへと変貌、まるで別の楽曲のようです。「You Make Loving Fun」はクリスティンの歌う楽曲で、比較的テンポが早くリズミカルですね。「I Don’t Want To Know」は場違いに明るくそして牧歌的な雰囲気で、バッキンガム・ニックス時代に書かれた1曲。明るいトーンの佳曲ですね。スティーヴィーは「Silver Spring」を収録したかったそうですが、ミックほかメンバーの意見でこちらを収録(2004年再発で「Silver Spring」も無事収録)。続く「Oh Daddy」はクリスティンのボーカルで、暗くしっとりとした雰囲気です。しんみりとさせます。最後の「Gold Dust Woman」はスティーヴィーのボーカルで、薬物依存だった彼女自身のことを歌っています。少しエキゾチックな雰囲気も醸し出す演奏に乗せて、力強くハスキーな歌が響きます。
前作の「Rhiannon」のようにずば抜けて突出した楽曲はないものの(ヒットシングルをいくつも生んでるんですけどね、個人的な感想として)、全体の水準は向上している印象。ですが4000万枚売り上げるほどの魅力があるかと言えば疑問です。日本での評価はそれほどでもなく、海外(特に米国)で高い評価を得ているのは、感性が違うんでしょうか。
編集盤
1969年
ジャケットがあまりに強烈なインパクトを放ちますが、これは女装したミック・フリートウッドの写真。ジャケットの見た目に関しては『クリムゾン・キングの宮殿』にも匹敵する強い衝撃です。笑 本作はピーター・グリーンが主導していたブルースロック時代のコンピレーション作品です。このときのメンバーはピーター・グリーン(Vo/Gt)、ジェレミー・スペンサー(Vo/Gt)、ダニー・カーワン(Vo/Gt)、ジョン・マクヴィー(B)、ミック・フリートウッド(Dr)。プロデューサーにはマイク・ヴァーノン。
「Stop Messin’ Round」で幕を開けますが、渋くて少し気だるいロックンロールです。ピーターのギターがキンキンと唸っています。「Jigsaw Puzzle Blues」は前曲よりブルージーな印象のインストゥルメンタル。ギターもベースラインも古びていますが、心地良さも感じます。「Doctor Brown」は音質が悪くてヒスッています。キンキンと鳴るギターはハードロックっぽくもありますが、気だるく心地良いリズムビートはハードロックではなく、旧き良きロックンロールの枠を出ていませんね。「Something Inside Of Me」は強い哀愁が漂うブルージーなナンバー。音も悪いのですがこの渋さは結構魅力的で、お酒がよく合いそうな感じ。「Evenin’ Boogie」はインスト曲で、ノリノリのロックンロール。ご機嫌なサックスが印象的。音質の悪さも相まって、ガチャガチャ賑やかだけど騒がしい雰囲気です。「Love That Burns」はスローテンポで渋いブルースロックです。
後半は「Black Magic Woman」で開幕。サンタナがカバーしたことで有名な楽曲ですね。ドスンドスンと重たいドラムが響きます。渋い歌メロや、キンキンと魅せるギターソロが聴きどころでしょうか。「I’ve Lost My Baby」はスローテンポでブルージーな1曲。雰囲気は悪くないのですが、音の悪さが足を引っ張ります。「One Sunny Day」は太鼓のようなドラムにヘヴィなギターが魅力の1曲。気だるさが残るもののハードロックにも通じる爽快感も合わせ持つ楽曲です。程良くスリリングで、個人的に一番良かったのはこれですね。「Without You」は静かでブルージー。ギターの音が色っぽい雰囲気です。がなるようなギターで幕を開ける「Coming Home」はルースなロックンロール。スローテンポですが音は荒々しく、歌もシャウト気味で激しいです。最後の「Albatross」はメロウなインスト曲。ゆったりと揺られるようなリズムが心地良く、大きな盛り上がりもありませんが聴いていると安らぎます。スライドギターも良い味を出していますね。
初期の傑作と言われていますが、全体的に古臭い印象は否めません。音質も良くないし…。ブルースロックに傾倒していた頃の本作は、リンジー・バッキンガムとスティーヴィー・ニックス加入後のイメージで聴くとまるで別物です。
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