🇬🇧 Roxy Music (ロキシー・ミュージック)

レビュー作品数: 3
  

スタジオ盤

Roxy Music (ロキシー・ミュージック)

1972年 1stアルバム

 ロキシー・ミュージックはイングランドのロックバンドです。ブライアン・フェリー(Vo/Key)とブライアン・イーノ(Key)の2人のブライアンが有名ですね(厳密にはBryanとBrianでスペルが違います)。イーノはのちにトーキング・ヘッズU2等の名だたる名盤を排出し、ロック界の大プロデューサーとしてその名を馳せることになります。
 1970年頃から活動を開始し1971年にデビュー。そして翌年本作をリリースします。この2年くらいの間でメンバーチェンジも何度か行われたようで、本作のラインナップはフェリーとイーノのほか、アンディ・マッケイ(Sax)、フィル・マンザネラ(Gt)、グラハム・シンプソン(B)、ポール・トンプソン(Dr)。元キング・クリムゾンのピート・シンフィールドによってプロデュース。
 美女ジャケで有名なロキシー・ミュージックですが、本作のジャケットを飾るケバい女性はカリ=アン・ミュラー。ローリング・ストーンズのミック・ジャガーの弟、クリス・ジャガーの奥さんだとか。

 オープニング曲は「Re-Make/Re-Model」。フェリーのヘタなボーカルをはじめ、バックの演奏陣も結構好き勝手な印象です。サックスやギターが引っかき回すのを、リズム隊がしっかり支えて成り立っているような…不協和音もお構いなし。でも強烈なインパクトを放つこの1曲がカッコ良くて、やみつきになるんです。続いて「Ladytron」はマッケイのオーボエとイーノのメロトロンが、幻想的で耽美な雰囲気を作り出します。でも途中ドタバタと暴れるドラムが緩急を生み、後半はスリリングな楽曲に変貌します。「If There Is Something」は6分半の楽曲。軽快なピアノとまったりとしたギターが、南国のバカンスのような雰囲気を演出しますが、途中からメロウなサックスによって哀愁漂う楽曲になります。続く「Virginia Plain」は米国盤に収録された楽曲。陽気な雰囲気ですが、フェリーのボーカルは怪しげです。終盤にイーノがシンセを鳴らしますが、オールドロック的な楽曲に最先端技術を持ち込んで、奇妙な違和感を覚えます。「2HB」はまったりとしていますが、静かに抑えているものの手数が多いトンプソンのドラムは聴きどころでしょう。
 レコード時代のB面、アルバム後半は「The Boy (Medley)」で幕開け。実験的な楽曲で、オーケストラをノイズで上書きしたかのようなサウンドが始まったかと思えば場違いにポップな歌が始まったり…。場面展開が唐突で、怪しさ満載です。「Chance Meeting」はピアノをバックに静かな歌で始まりますが、不協和音が加わって歌を妨害。そんな実験的な楽曲に続く「Would You Believe?」はノリの良いロックンロール。バンド編成に加わるサックスが賑やかな雰囲気を作ります。変な仕掛けもなくて純粋に楽しめる1曲でしょう。「Sea Breezes」は7分の楽曲。まったりとした前半が過ぎると、後半はドラムを強調しつつ即興的な前衛音楽が展開されます。最後に「Bitters End」。出だしはコミカルですが、後半は金属的なサックスにダンディなボーカルで渋さを出して終わります。

 ブライアン・フェリーの下手くそなボーカルに不協和音など、プログレにも通じるエキセントリックな作風です。万人受けする作品ではないものの、楽曲によっては強烈なインパクトがあって、時々聴きたくなる魔力があります。

Roxy Music (Deluxe Edition 2CD)
Roxy Music
Roxy Music
Roxy Music
 
For Your Pleasure (フォー・ユア・プレジャー)

1973年 2ndアルバム

 グラハム・シンプソン(B)が脱退し、本作ではジョン・ポーターがベースを担当。ただ正式加入はしておらず、この後もベーシスト不在でサポートメンバーが都度都度変わるという体制だったようです。また、ブライアン・イーノ(Key)が参加した最後の作品で、彼は脱退後にソロ活動を開始し、のちにアンビエント系音楽の先駆者として、そして名プロデューサーとして活躍します。
 今回の美女ジャケはアマンダ・レア。ブライアン・フェリー(Vo)の当時の恋人で、サルバドール・ダリの元愛人だとか。

 オープニングを飾る「Do The Strand」が、開始からぐいぐいと牽引してくれます。イーノのピアノが緊迫感を放ち、アンディ・マッケイのサックスは耳障りだけど色っぽくもある音色を奏でる…これら楽器がフェリーの低音で色気のあるボーカルよりも際立っています。リズム隊はポーターのベースがボンボンと響き、ポール・トンプソンが力強くドラムをバタバタ。フィル・マンザネラのギターは間奏に少し見せ場が用意されていますが、少し影が薄いかも。続く「Beauty Queen」はイントロのキーボードがどこか不穏な感じ。でも歌が始まると、メロウでムーディな楽曲になります。マッケイのオーボエが渋い「Strictly Confidential」はアンニュイな雰囲気。途中加わるマンザネラのギターが、フェリーのボーカルに合わせて感情の高ぶりを表現しているかのようです。「Editions Of You」はノリノリのロックンロール。キーボードがアクセントとなってますね。「In Every Dream Home A Heartache」は平坦で退屈なメロディを淡々と歌いますが、3分過ぎたあたりでハードロックに激変。フェードアウトしたかと思えばまたフェードインして、歪んだ空間が広がります。後半がとてもスリリングです。
 レコードB面のオープニングは「The Bogus Man」。リズム隊はノリが良いのですが、狂気的で不穏なサウンドはとても不気味です。淡々としていて、聴いていると精神を病みそうな音楽ですが、中毒性も強くてインパクトのある1曲です。「Grey Lagoons」は徐々に盛り上がってテンポアップしていく楽曲で、中盤からはノリノリのロックンロールになります。サックスが大活躍し、その後はギターの独壇場。とても爽快です。最後は表題曲「For Your Pleasure」。前衛的な1曲で、イーノの幻想的で不気味さもあるキーボードが印象的です。

 アヴァンギャルドで取っつきにくさもありますが、合間にヘヴィなロックンロールを混ぜたりして聴きやすい楽曲もあります。クセが強い作品ですが、中毒性のある楽曲がいくつかあって、それらは良いと思います。

For Your Pleasure
Roxy Music
 
Avalon (アヴァロン)

1982年 8thアルバム

 ロキシー・ミュージックのラストアルバムにして、全英1位の大ヒット作です。この時点のメンバーはブライアン・フェリー(Vo)、アンディ・マッケイ(Sax)、フィル・マンザネラ(Gt)の3人のみで、実態としてはフェリーのソロプロジェクト的な感じで、フェリーとフェリー以外のメンバーで扱いにもかなり差があったのだとか。なおギター、ベース、ドラムやキーボード等の楽器はサポートミュージシャンを招いています。レット・デイヴィスとロキシー・ミュージックによるプロデュース。
 美女ジャケが定番のロキシー・ミュージックですが、本作で兜を被った後ろ姿の女性は、翌年フェリーと結婚することになるルーシー・ヘルモアです。

 オープニングを飾るのは「More Than This」。ファルセットを用いて浮遊感のある、フェリーの耽美なボーカルをフィーチャーしています。演奏もまったりとした雰囲気で、歌メロと合わせて聴き浸ることができますね。続く「The Space Between」はニューウェイヴ全開の楽曲で、AORのように大人びたテクノポップといった感じ。反復する独特のリズムによって気持ちの良いグルーヴを生み出しています。主張しすぎないマッケイのサックスが所々でアクセントとして入って、オシャレな雰囲気です。そして表題曲「Avalon」は、メロウな演奏でムーディな楽曲です。まったりとしていて、女性ゲストボーカル(ヤニック・エティエンヌ)とのデュエットが美しいです。2分足らずのインストゥルメンタル「India」を挟んで、「While My Heart Is Still Beating」もメロウな楽曲。サックスやピアノが味を出していて、少し哀愁を帯びた雰囲気が渋い。
 アルバム後半のオープニングは「The Main Thing」。メロディはそれほどでもないのですが、淡々と反復するリズム隊が妙に耳に残ります。「Take A Chance With Me」は神秘的なシンセで幕を開けますが、歌が始まるとポップな雰囲気になります。ノリの良いドラムに、心地良いシンセが歌メロを引き立てます。続く「To Turn You On」はフェリーのダンディで色気のあるボーカルが印象的。まったりしているけど少し憂いを帯びた「True To Life」を挟んで、サックスソロによる短いインストゥルメンタル「Tara」で渋く締めます。

 初期のアヴァンギャルドな作品と比べるとだいぶ様変わりしましたが、円熟味のある、大人びてオシャレな作品です。毒気が抜けて少し物足りなさも感じますが、聴き心地は良いです。カフェのBGMにも向いていそうですね。

Avalon
Roxy Music
 
 
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