🇺🇸 Jellyfish (ジェリーフィッシュ)
レビュー作品数: 2
1990年 1stアルバム
1990年代パワーポップを代表する米国のロックバンド、ジェリーフィッシュ。1989年に米国カリフォルニア州サンフランシスコで結成しました。アンディ・スターマー(Vo/Dr/Gt/Key)、ロジャー・マニング(Key/Vo)を中心に、ジェイソン・フォークナー(Gt/B/Cho)とクリス・マニング(B)の4名。バンド名が「クラゲ」で、そして本作タイトルが「おへそ」という、ゆるふわな感じですね。
某映画のようなサイケなジャケットアートが特徴的な本作はビートルズやクイーンの系譜を継ぐ、甘くて魅力的なポップソングを堪能できます。プロデューサーはアルビー・ガルテンと、ジャック・ジョセフ・プイグ。
チャーチオルガンのイントロから「The Man I Used To Be」の幕開け。歌メロは陰りがあるものの、ポップな雰囲気を隠しきれていません。ブラスやストリングスが楽曲を彩り、ゆったりとしたリズムとメロディアスな歌が心地良さを提供してくれます。続く「That Is Why」はノスタルジーやメランコリーに溢れる歌メロを、メリハリのあるリズム隊が引き立てます。アンディの甘い歌唱に魅せられます。「The King Is Half-Undressed」はイントロから高揚感を煽り、ダイナミックなドラムもあって躍動感たっぷりです。そしてフレッシュで清涼感のあるポップソングを展開、とても爽快です。クイーンばりのコーラスワークも良いですね。「I Wanna Stay Home」はメロディアスなバラードです。アコギのアルペジオが優しく、全体的にゆったりとした空気が漂います。ドリーミーな楽曲にトランペットで彩りを加えます。続いて「She Still Loves Him」はピアノイントロから始まり、気だるげな歌が始まるとバンド演奏に切り替えます。そしてサイケなコーラスワークにジョン・レノンがいるような錯覚があり、ビートルズっぽく思えるんです。ポップだけど憂いのあるメロディも魅力的。そして「All I Want Is Everything」はキレのあるアップテンポ曲。ハードかつサイケ色もあり、熱の入ったボーカルはクイーンのフレディ・マーキュリーのよう。アグレッシブに振っていますが、根底にあるポップセンスのおかげで清涼感を強める結果となっています。「Now She Knows She’s Wrong」はビートルズ色が特に強くて、バロックポップ風の演奏はビートルズ楽曲から部分的に拝借しているようです(ビートルズ曲がいくつか思い浮かびます)。ポップで気持ち良く、後半はブラスも加えて賑やかです。「Bedspring Kiss」はパーカッションをはじめ、まったりとした演奏はトロピカルな雰囲気に満ちていますが、歌には憂いがあってギャップを感じます。中盤にオーケストラを唐突に挟んで、またメロウでゆったりとした楽曲へ。そして「Baby’s Coming Back」はドラムやハンドクラップが跳ねるような心地良さを生み出していて、ポップだけど憂いのあるメロディで魅せ、エンディング曲にぴったり。サイケ色を増すブリッジもまた面白いです。ラスト曲「Calling Sarah」はリズミカルな演奏でポップな雰囲気。ビートルズっぽいコーラスワークも聴けますが、ギターソロやキーボードにはクイーンっぽさも。良質なポップ曲です。
甘くポップな作品で、ビートルズフリークにはたまらないのではないでしょうか。ちなみにボーナストラックが付いているバージョンだとバッドフィンガーやポール・マッカートニーといったビートルズ周辺人脈のカバー曲も聴けるみたいです。
1993年 2ndアルバム
クリス・マニング(B)、ティム・スミス(B)が相次いで脱退。そしてメンバーには新たにティム・スミス(B)を加えています。アンディ・スターマー(Vo/Dr/Gt/Key)、ロジャー・マニング(Key/Vo)とティムの3名体制にサポートミュージシャンを加えて本作を制作。クイーンのようなコーラスワークとポップセンスで、前作以上にポップな作品に仕上がりました。グランジ真っ只中の米国ではセールス的に成功しませんでしたが、英国では本国以上にヒットしています。
オープニング曲は「Hush」。分厚いコーラスワークはクイーンそっくりで、ドリーミーな演奏も心地良い。僅か2分で、次曲の前奏のような位置づけでしょうか。そしてヘヴィなギターで「Joining A Fan Club」へと雪崩れ込みます。でもそこからピアノ伴奏とポップな歌メロを展開してとても聴きやすいです。前半はもろにクイーンですが笑、後半のハードな疾走パートでは脱クイーンしてスリリングな演奏を繰り広げます。なお、解散後にアンディがプロデュースしたPUFFYがカバーしています。「Sebrina, Paste, And Plato」は一転して、レトロで跳ねるようなサウンドにビートルズのようなポップセンスが光ります。2分強の短い楽曲の中でころころと表情を変え、強引に3拍子へリズムチェンジしたり。ドリーミーかつサイケデリックで、そしておもちゃ箱のようなワクワク感が詰まっています。「New Mistake」は6/8拍子で展開される、リズミカルでメリハリのあるポップソングです。主旋律のキャッチーさに加えて、合間合間に様々な音を挿し込み、ギミック満載の演奏で高揚感を煽る良曲です。「Glutton Of Sympathy」はアコギ主体の落ち着いた演奏に、メランコリックな歌メロをしっとり聴かせます。そして中盤からはバンド演奏が楽曲を盛り上げます。王道な楽曲展開ですね。「The Ghost At Number One」は彼らの中では特にヒットしたシングルで、イントロのドラムから高揚感を煽ります。バロックポップを現代風にしたような演奏はビートルズっぽくて、そしてアンディの歌唱はフレディ・マーキュリーを想起させるという、そんなポップセンス溢れる楽曲です。「Bye Bye Bye」は甘くメロディアスで口ずさみたくなるようなコーラスで始まります。そして憂いのあるバロックポップ全開の楽曲はポール・マッカートニー作かと錯覚します(アンディとロジャーの作)。アコーディオンの味付けも魅力的ですね。そして「All Is Forgiven」はアルバムの中ではやや異色の、ハードでスリリングな楽曲です。ダイナミックなドラムが躍動感を生み出し、ギターやベースも中々ヘヴィ。甘々なポップソングばかりのアルバムにメリハリを付けます。中盤一瞬だけほぼ無音になるパートを挟んでフックをかけてきます。続く「Russian Hill」は前曲と対照的に、アコギで落ち着いた雰囲気です。後半はフルートやストリングスを活用して、エキゾチックでサイケな感覚を出してきます。コーラスがELOような気も。「He’s My Best Friend」はサイケデリックなポップソング。リズミカルな演奏、特にベースが心地良いですね。そして優しい歌メロをトリップ感のあるコーラスで彩ります。「Too Much, Too Little, Too Late」はエッジの効いた少しハードなギターを鳴らしますが、相変わらずメロディアスな歌唱に魅せられます。徐々に明るくなる感じです。最後は「Brighter Day」。ノスタルジックな歌メロを、どっしりと力強いドラムがサポート。かと思えばドリーミーなパートに場面転換したり。6分を超える楽曲は、後半に向かうにつれて色とりどりの音色でサイケ色を強めます。
ストリングスも取り入れてより彩り豊かになり、サイケっぽさも取り入れつつ、甘くてポップです。
商業的に成功しなかったことからツアー終了後に解散を決定、1994年にジェリーフィッシュは解散しました。なおアンディ・スターマーは奥田民生とコラボしたり、奥田民生と組んでPUFFYをプロデュースしたりと、日本でも活躍しています。
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