🇬🇧 John Lennon (ジョン・レノン)

レビュー作品数: 4
  

スタジオ盤

John Lennon/Plastic Ono Band (ジョンの魂)

1970年 1stアルバム

 ジョン・レノンは本名ジョン・ウィンストン・オノ・レノンと言います。英国リヴァプール出身の1940年10月9日生まれ、1980年12月8日没(享年40歳)。言わずとしれたビートルズのメンバーとして活躍し、ソロ転向後は妻のオノ・ヨーコとともに米国に移住して平和運動家としても活動。1980年に、自宅前でファンを名乗る男に射殺されました。
 妻としてはオノ・ヨーコが有名ですが、実はヨーコと出会ったときのジョンは既婚で、前妻シンシア・レノンとの間にも子供をもうけています。

 1970年にポール・マッカートニーが脱退してビートルズは事実上の解散となり、精神的に不安定となったジョンは原初療法という治療を受けていました。幼少期のトラウマを呼び覚まし、当時の自分になりきって退行して大声で泣き叫ぶことによってマイナス感情を吐き出す、というものだそうです。その影響もあって、いくつかの楽曲ではまるで泣き叫ぶかのような絶叫が聞けます。
 ジョンとヨーコ、そして『レット・イット・ビー』を手がけたフィル・スペクターのプロデュース。ジョンがボーカル、ギター、キーボード等を担当し、レコーディングにはリンゴ・スター(Dr)が参加したほか、ベースにクラウス・フォアマン、また「God」ではビリー・プレストンが、「Love」ではフィル・スペクターがそれぞれピアノで参加しています。

 アルバムは「Mother」で始まります。サウンドは至ってシンプル、メロディもシンプルなフレーズを反復していきます。しかしジョンの歌声は徐々に叫び声へと変わり、ラストは泣き叫ぶかのような絶叫。母に必要とされず、父に捨てられたジョンが、両親を求めて感情剥き出しで歌うというこの楽曲。心に深く突き刺さる、鳥肌ものの名曲です。続く「Hold On」はゆったりとしていて、前曲とは対照的。短い楽曲ですがホッとする安らぎがあります。「I Found Out」はヘヴィなサウンドでドスの効いた歌を聴かせるロックンロール。「Working Class Hero」はアコギ1本で歌う楽曲です。虐げられた階級を憂うこの楽曲、「A working class hero is something to be」と歌われる歌詞は人によって解釈が異なるそうです。直訳すると「労働者階級の英雄とはなるべき何かである」ですが、なるべきだ!とか、なるものじゃない!だとか解釈が分かれています。続いて「Isolation」ではピアノ主体でしっとりとした歌を聴かせます。
 レコードでいうB面、アルバム後半は「Remember」で始まります。ピアノが哀愁漂わせながらもリズミカルな演奏を披露。続いて「Love」は愛とは何かを歌う哲学的な1曲で、これも名曲ですね。シンプルな歌詞は松尾芭蕉に影響を受けたそうです。「Well, Well, Well」は同じフレーズを繰り返しながら、徐々に激しくなっていきます。後半は原初療法の影響で凄まじく叫んでいますね。アコギ1本でシンプルに歌う「Look At Me」に続いて、「God」では様々なもの(ビートルズも含む)を列挙し、それらを信じない、自分とヨーコだけを信じると歌います。最後は1分に満たない「My Mummy’s Dead」で静かに終えます。

 楽曲自体は割とシンプルですが、歌詞を読み解くとメッセージ性が強く、響くものがあります。特に名曲「Mother」は衝撃的。

John Lennon/Plastic Ono Band (2010 Remastered)
John Lennon
 
Imagine (イマジン)

1971年 2ndアルバム

 ジョン・レノン最大のヒット作にして、ロック史に残る超名曲「Imagine」を収録した作品です。前作同様にジョン、オノ・ヨーコ、フィル・スペクターのプロデュース。
 レコーディングには元ビートルズ仲間のジョージ・ハリスン(Gt)、前作にも参加したクラウス・フォアマン(B)、後にイエスに加入するアラン・ホワイト(Dr)、バッドフィンガーのジョーイ・モーランド(Gt)とトム・エヴァンス(B)、他にもニッキー・ホプキンス(Pf)、キング・カーティス(Sax)等々のメンバーが参加しています。

 アルバムは表題曲「Imagine」で始まります。世界で最も有名な曲のひとつですね。知らなかった方も、聞いたらどこかで耳にしたことがある曲だと思うはず。シンプルなサウンドに歌も淡々としていますが、平和を願った普遍的な歌が歌われています。国家や宗教の違いによる殺戮を否定し、それらが存在せずに、ただ全ての人が平和に生きる世界を「想像してごらん」と歌います。続く「Crippled Inside」はアコースティック主体のノリの良いロックンロール。「Jealous Guy」はピアノバラード曲です。口笛がご機嫌なこの楽曲はビートルズ時代の「A Day In The Life」にも似たメロディ。原曲はビートルズ時代、インド滞在中に作曲されていましたが、ビートルズの楽曲として世に出ることはありませんでした。アレンジが加えられて本作で日の目を見ることになったそうです。続いて「It’s So Hard」はジャズサックス奏者キング・カーティスの遺作となった作品です。旧きロックンロールテイスト。反戦を歌った「I Don’t Want To Be A Soldier」で前半が終了。
 後半は「Gimme Some Truth」で幕開け。ビートルズ後期を思わせるヘヴィなロック曲で、ビートルズ時代に既に書かれていたそうです。「Oh My Love」はゆったりとしたバラード曲です。ジョンとヨーコの共作だとか。続く「How Do You Sleep?」ポール・マッカートニーを批判した楽曲で、ポールのソロ楽曲のいくつかで自分のことを批判していると受け取ったジョンが激怒し、ポールと確執のあったジョージ・ハリスンも一緒になってポールを罵る歌詞を並べて歌いました。居合わせたリンゴ・スターはあまりの酷さにもうやめておけと忠告したそうです。さて当のポールはジョンを擁護したそうで、一見醜い罵り合いに見えますが、ジョンとポールにとっては一種の友情表現なのかもしれません。とは言えこんな幼稚な楽曲が入っていることで、世界平和を歌う「Imagine」が途端に胡散臭く偽善のように聞こえてしまうのは至極残念。シンプルな「How?」を挟んで、ヨーコに捧げたラブソング「Oh Yoko!」。明るく爽やかな曲調に、ジョンの優しい歌。歌詞の良し悪しはさておき笑、幸せが伝わる良い曲だと思います。でも翌年から2年ほどヨーコとは別居することになるそうで…。

 いくつかの名曲はあるものの、アルバムとしての衝撃度・完成度は前作の方が上回っている印象です。「Imagine」という超名曲がありますが、単曲で聴くならベスト盤でも良かったり…。

Imagine (The Ultimate Mixes Deluxe)
John Lennon
Imagine (The Ultimate Mixes)
John Lennon
 
Rock 'N' Roll (ロックンロール)

1975年 6thアルバム

 ジョン・レノンが影響を受けた1950~1960年代のロックンロールソングのカバー曲集です。チャック・ベリーの出版権を持つモリス・レヴィと権利関係で揉めた挙げ句に、彼の版権を持つ楽曲をカバーするという方向で決着。しかしフィル・スペクターをプロデューサーに据えて始めた録音も頓挫し、しばらく後にジョンが自身のプロデュースにて残りの楽曲を完成させたそうです。
 ジャケットアートは1961年の若き日のジョン。

 オープニング曲はジーン・ヴィンセントのカバー「Be-Bop-A-Lula」ビートルズ時代もよくカバーした楽曲だそうです。流石に時代を感じる楽曲ですが、渋くて気持ちの良いロックンロールです。続いて本作のハイライト「Stand By Me」。アコギでシンプルに始まるも、徐々に楽器が増えて盛り上がっていきます。ゆったりとしたリズムに乗せてジョンのアツい歌唱が響き渡ります。元はベン・E・キングの楽曲ですが、ジョンのカバーは原曲以上に有名になりました。続く「Medley: Rip It Up/Ready Teddy」は1分半の短さながら、アップテンポのご機嫌ロックンロール。チャック・ベリーのカバー「You Can’t Catch Me」は「Come Together」に似た雰囲気の楽曲で、この楽曲をジョンが盗作したとの疑惑で揉めた末に、本作の制作に至ったそうです。確かにAメロはソックリかも。ホーンが賑やかな「Ain’t That A Shame」、レゲエ風のトロピカルな雰囲気の「Do You Wanna Dance?」、ジョンのシャウトがアツい「Sweet Little Sixteen」と続きます。
 アルバムはレコードでいうB面に移り、リトル・リチャードの「Slippin’ And Slidin’」は軽やかなピアノが爽快な楽曲です。やはりこういうノリの良いロックンロールは良いですね。続くバディ・ホリーの「Peggy Sue」はパーカッションが心地良い疾走感を生み出します。キャッチーなメロディラインも好みで、後半のハイライトだと思います。緩いテンポで聴かせる「Medley: Bring It On Home To Me/Send Me Some Lovin’」「Bony Moronie」、陽気なロックンロール「Ya Ya」、トロピカルな雰囲気でメロディアスな「Just Because」と続いてアルバムを締めます。

 「Stand By Me」が出色の出来ですが、この楽曲が目当てであればベスト盤でも十分です。他にもいくつか良い曲はあるものの、カバー曲集なので、オリジナルアルバムよりは優先度は低いかと思います。

Rock ‘N’ Roll
John Lennon
 
 

編集盤

Lennon Legend: The Very Best Of John Lennon (レノン・レジェンド~ザ・ヴェリー・ベスト・オブ・ジョン・レノン)

1997年

 ジョン・レノンの生前と死後に発表されたシングルを収録したベスト盤です。初めて聴いたとき「これもジョンの曲だったんだ!」という驚きに詰まった作品でした。それだけジョンの楽曲が大衆に愛されていることを実感できる作品です。ビートルズ後のソロキャリアで一番名曲を残したのは間違いなくジョンでしょう(私はポール・マッカートニー派ですが笑)。

 不朽の名曲「Image」で開幕。世界平和を歌ったこの楽曲はジョンの代表曲ですね。2002年にギネス・ワールド・レコード社によって行われた「英国史上最高のシングルは?」というアンケートで2位を記録。また様々なロックの名曲ランキングでもトップクラスにエコー処理によってドラムが炸裂する「Instant Karma!」、ジョンが子供のように泣き叫ぶ「Mother」のシングルエディット、美しい鍵盤の音色をバックに嫉妬深い自分を悔いる歌を歌う「Jealous Guy」等が続きます。続く「Power To The People」はゴスペル風の分厚いコーラスに彩られた、力強くも賑やかな楽曲です。サックスもご機嫌。CM等でも耳にするキャッチーなフレーズですが、これジョンの楽曲なのだと驚きました。コーラスの無いサビ以外の部分を聴けば確かにジョンですね。ノイジーなギターと淡々としたベースが印象的な「Cold Turkey」は麻薬のことで、ダークな雰囲気です。続く「Love」はシンプルなサウンドに乗せ、俳句に影響を受けた歌詞で愛とは何かを淡々と問います。いくつかの楽曲を挟んだ後の「Stand By Me」。ベン・E・キングのカバー曲ですが、オリジナルを上回る知名度となった名演です。「(Just Like) Starting Over」も有名な楽曲ですね。テレビでなんとなく流れていたのを聞いた記憶があります。また、アコギ一本で淡々と歌う陰鬱な「Working Class Hero」も名曲。「Happy Xmas (War Is Over)」はクリスマスシーズンによく耳にする楽曲ですね。オノ・ヨーコも歌っています。子どものコーラスや鈴の音色等、神聖な雰囲気が感じられる1曲です。ラストの「Give Peace A Chance」は分厚いコーラスで賑やかな印象です。

 全20曲約78分の作品です。個人的にベスト盤というのは好みではないのですが、本作は名曲揃い。ジョン・レノンに関してはこれと『ジョンの魂』があれば良いような気がします。

Lennon Legend: The Very Best Of John Lennon
John Lennon
 
 

関連アーティスト

 ビートルズではボーカリスト兼リズムギターとして活躍。

 
 ビートルズのバンドメイトたち。
 
 
 類似アーティストの開拓はこちらからどうぞ。