🇬🇧 Led Zeppelin (レッド・ツェッペリン)

ライブ盤

The Song Remains The Same (永遠の詩 (狂熱のライヴ))

1976年

 レッド・ツェッペリンの活動中に発表された唯一の公式ライブ盤です。一応は同名映画のサントラという位置づけですが、映画とも演奏順は違うようで、実質的にはライブ盤ですね。レッド・ツェッペリンは海賊盤は数あれど、解散後20年近く経ってから『BBCライヴ』や『伝説のライヴ』が出るまでは、公式ライブ盤はこれしかなかったんですね。とは言え歌が苦しそうだったり演奏もムラがあったりで、トータルでは必ずしも優れたライブ盤ではないです。1973年の米国ニューヨーク、マディソン・スクエア・ガーデンでの公演を収録。
 なお2007年に楽曲を大幅に追加しリミックスも施されたリイシュー盤がリリースされ、日本では『永遠の詩 (狂熱のライヴ) 最強盤』と銘打たれています。2018年にはこの『最強盤』をベースにリマスタリングされています。本項では『最強盤』をレビューします。
 
 
 ディスク1枚目のオープニングは「Rock And Roll」。ジョン・ボーナムのパワフルなドラムがスリリングですが、喉を潰した直後のロバート・プラントの歌はかなり苦しそうだし、ジミー・ペイジのギターは結構キンキンしてます。悪い面が目立ちますが、ノリノリの演奏はやっぱり楽しいんですよね。「Celebration Day」は割と調子良さげ。キレのあるペイジのギターに、ジョン・ポール・ジョーンズのご機嫌なベース、プラントの歌も好調です。そしてボーナムの爆音ドラムは迫力満点ですね。そして「Bring It On Home」のフレーズをイントロ的に流すとそのまま「Black Dog」へ。プラントの3人の演奏の掛け合いが楽しいこの楽曲、ジョーンズのヘヴィなベースが際立っていてカッコ良い。演奏パートは即興的なプレイも交えてスリリングです。続く「Over The Hill And Far Away」はペイジのギターとプラントの歌だけで始まり、サビメロでは強烈なドラムが加わります…が、原曲ではキャッチーな高音メロディなのにライブでは声が出ず、1オクターブ下げるという残念さ。速弾きギターソロなども披露しているのですが、歌が残念です。「Misty Mountain Hop」はジョーンズの弾く鍵盤と、ボーナムのど迫力な爆音ドラムがノリの良い演奏を展開。心地良いビートはいつまででも浸っていたい気分になります。そして雑な編集で突如「Since I’ve Been Loving You」へ繋がります。ブルージーな楽曲の魅力を引き出しつつスリリングな仕上がりになっていて、色気のある歌と、そして荒くキレ味鋭いギターが良い感じ。「No Quarter」はジョーンズ大活躍の1曲。初出では12分超え、『最強盤』で少し縮められましたがそれでも10分以上。ジョーンズの弾くキーボードが神秘的でゆらゆら漂うような浮遊感を作り出します。中盤はペイジが即興的なギターを披露。そしてタイトル曲「The Song Remains The Same」。スタジオ盤で聴ける超カッコ良いイントロは、本ライブだとペイジのギターがイマイチな印象…。ですが勢いに満ちた演奏はノリノリで楽しいし、喉を痛めたプラントも結構頑張って高音域を出しています。そしてそのまま「The Rain Song」がセットで演奏されますが、スタジオ盤と同じ流れで嬉しいですね。メロウで落ち着いた雰囲気で、ギターだけでなくジョーンズのメロトロンが少し憂いのあるゆったりとした空間を作ります。プラントの渋い歌声もしんみりと聴かせてくれますね。終盤の盛り上げ方もドラマチックです。ボーナムのワイルドなカウントから始まる「The Ocean」は、パワフルなドラムが縦ノリの爽快なビートを生み出します。ギターリフも印象的ですね。陽気で楽しい1曲です。

 ここからはディスク2枚目。「Dazed And Confused」は30分近い演奏が繰り広げられます。楽曲の軸を作るベースソロにギターが絡んでドヨーンとした怪しげな空気の中、プラントは自由奔放に歌います。途中加速パートに入るとドラムが爽快なビートを刻みます。そして6分辺りから哀愁たっぷりの別の楽曲を歌い、9分過ぎからはペイジのギターソロを展開。ヴァイオリンの弓でギターを弾いて怪しげな音色を響かせたり、プラントの歌とペイジのギターで掛け合いを始めたり、自由気ままに実験的な演奏を聴かせます。16分辺りでボーナムのドラムを皮切りに原曲の高速パートに戻りますが、これが非常にスリリング。そしてこの高速パートを延々聴かせたかと思えば、縦ノリのリズムビートが心地良い演奏を始めます。いくつかの楽曲から引用しているのか楽しげな高速ロックンロールを展開、徐々に緊張感を高めます。24分半頃から唐突に思い出したように原曲に戻ってきて、また横道に逸れたりしながら長い演奏が終了。とても聴きごたえのあるスリリングな演奏でした。続いて名曲「Stairway To Heaven」。静かに始まりますが、ドラムが入って盛り上がり、そしてじわりじわりテンポアップしていく展開はやはり感動的です。後半のギターソロは荒いですが即興的でスリリング。そしてラストのハイトーンの歌は、原曲キーには届いていないもののかろうじて高音出ているので聴けますね。「Moby Dick」はヘヴィなギターリフがカッコ良いですね。そして何と言っても見せ場はボーナムのドラムソロ。ドスンドスンと重たい一撃が響き渡る、スリリングなドラムで魅せます。「Heartbreaker」はリズミカルなドラムソロから、ギターリフがカッコ良いイントロへ繋ぎます。硬質なベースもカッコ良い。中盤のギターソロはかなりキンキンとして荒々しいですが、途中陽気なフレーズを差し込んでノリノリの後半パートへ突入。そのまま「Whole Lotta Love」へ雪崩れ込みます。14分近くあり、所々に原曲にはない演奏へ繋ぎます。重低音が効いたスリリングなイントロから、ジョーンズのベースがカッコ良い躍動感溢れる疾走パートへ。また原曲に戻ったかと思えば、プラントとペイジが掛け合い…からのロックンロール曲カバーを差し込んだり。ノリノリのメドレーを展開してラストに原曲へ戻して終了。これが終始スリリングで楽しめるんです。
 
 
 所々に粗があることは否めませんが、迫力の演奏はスタジオ盤と違った魅力があり、やっぱりカッコ良いんですよね。ライブ盤の選択肢がいくつかある今現在においては、最初に聴くべきは『伝説のライヴ』だと思いますが、本作もレッド・ツェッペリンファンなら聴いておくべきでしょう。

The Song Remains The Same
(2018 Remastered)
Led Zeppelin
 
BBC Sessions (BBCライヴ)

1997年

 本作はBBCラジオでの放送用音源として録音された、スタジオセッションとライブを収録したコンピレーション盤です。ブートレッグは大量に出回っているZEPですが(本作の音源も出回っていたみたいです)、オフィシャルライブ盤としては『永遠の詩 (狂熱のライヴ)』以来2作目で、長年のファン待望のライブ盤だったようです。後追い世代の私はその後に出た傑作『伝説のライヴ』を先に聴いてしまっていたので、それと比較すると本作にそこまでの価値は感じなかったり…。
 なお2016年リマスターに際してボーナスディスクが追加され、タイトルも『The Complete BBC Sessions』と改められています。本項ではこのリマスター盤をレビューします。
 
 
 Disc1は1969年の演奏で、数回に渡るBBCラジオ番組でのライブを収録。演奏はライブ感があるものの、拍手や歓声がほとんどないためやや臨場感に欠け、若干物足りない印象です。
 「You Shook Me」はスタジオ録音よりもよりスローで泥臭い印象に仕上がっています。ジョン・ポール・ジョーンズのハモンドオルガンが良い味付け。ジミー・ペイジによる即興的なギターソロも聴けますね。「I Can’t Quit You Baby」はジョーンズによる渋いベースとロバート・プラントの強烈なボーカルが魅力的。これもブルージーですね。軽快な疾走曲「Communication Breakdown」は音質の悪さと荒い演奏が相まって、ノイジーで攻撃的。結構パンキッシュな仕上がりです。終盤にゆったりとした即興演奏を繰り広げるのが特徴的ですが、他のテイクも同様の演出がなされています。「Dazed And Confused」はジョン・ボーナムのパワフルなドラムが生々しく、そしてスリリングです。加速パートのうねるようなベースもカッコ良い。「The Girl I Love She Got Long Black Wavy Hair」はオリジナルアルバム未収録の楽曲です。エッジの効いたギターにグルーヴィなリズム隊が特徴的で、『II』に入っていそうな雰囲気(加速パートのない「The Lemon Song」みたいな感じ)。「What Is and What Should Never Be」はライブ感は薄く、スタジオ録音のものとそれほど変わらない仕上がりです。続いて「Communication Breakdown」の2テイク目。勢いある演奏に対してプラントの歌が溜め気味というか、かなり遅らせている感じ。「Travelling Riverside Blues」はオリジナルアルバム未収録曲で、いくつかのベスト盤に収録されているようです。柔らかくリラックスした雰囲気のロックンロールです。「Whole Lotta Love」はペイジの荒々しいギターによりライブ感に溢れています。ギターが前面に出たミックスで、それ以外の楽器とボーカルがやや引っ込み気味。混沌とした間奏パートはエコーが効いていてサイケデリックです。「Somethin’ Else」はロック黎明期のアーティスト、エディ・コクランのカバー。軽快なロックンロールをパワフルに演奏。荒々しい演奏の中で、ジョーンズの跳ねるようなピアノが良いアクセントになっています。続いて「Communication Breakdown」の3テイク目。同じ楽曲のバージョン違いを同じDiscに集約するためバランスが悪いですね…。特筆することはありません。「I Can’t Quit You Baby」の2テイク目はラストに拍手があるのでライブだと気付かされます。そのまま続く「You Shook Me」の2テイク目は10分超の大作に仕上がっています。ハーモニカやギター、ハモンドオルガンのソロがそれぞれ長めに用意されています。中盤の即興的な演奏によってパワフルに盛り上がる場面が特にスリリング。ラストの「How Many More Times」は12分近くあります。怪しげでグルーヴィなイントロからスリリング。中盤は即興演奏を繰り広げ、ペイジのギターとプラントの歌が即興でハモりあったりしています。終盤に向けた盛り上がりも勇壮な雰囲気を出していたり、原曲との違いを楽しめます。
 
 
 Disc2は1971年の演奏を収録していますが、これが本作の目玉でしょう。観客が少ないのか拍手はやや疎らですが臨場感があり、『伝説のライヴ』に近い選曲で演奏も歌も絶好調です。
 司会のナレーションのあと「Immigrant Song」で幕開け。ジョーンズのメタリックなベースがとてもカッコ良いですね。プラントの高音キー中心の歌はやや不安定なものの、ライブでもちゃんと声が出ていて凄い。そのまま続く「Heartbreaker」。『伝説のライヴ』もこの2曲続けての流れなので、この時期のライブの定番オープニングなのでしょうか。前曲同様にゴリゴリしたベースが際立ち、ダーティでクールな仕上がりです。続いてブルージーな「Since I’ve Been Loving You」。色気のある低音ボイスとキンキンの高音ボイスを極端に対比させた歌声に魅せられます。ムーディで渋い演奏も良いですね。そして後半の盛り上がりはとてもドラマチック。「Black Dog」は原曲に比べてメタリックな質感ですが、歌も演奏もスタジオ録音のように丁寧な仕上がりで、聴きやすさとスリルを両立した好演です。続いて「Dazed And Confused」。Disc1と合わせると2テイク目ですが、即興を交えて18分半もありまるで別物です。どんより怪しげな雰囲気に満ちた演奏から、爆音を繰り広げたりと静と動の緩急ついた演奏を展開。その後のペイジの幻覚的なギターソロと、それに呼応するプラントの歌は官能的な雰囲気です。サイケデリックな即興パートを終えると、ボーナムのドラムを皮切りに超加速。勢い溢れる演奏でスリリングな即興を繰り広げます。うねるようなベースも強烈ですね。何度か原曲に帰結しては即興を繰り広げるという、実にカッコ良い18分半でした。そして名曲「Stairway To Heaven」。序盤は厳かで神聖な雰囲気を醸し出しています。その後のじわじわと盛り上がる展開についても、音質の良さもあってか粗が少なく、温もりに溢れている印象を受けます。ラストのプラントのハイトーンも絶好調。これも好演ですね。続いて「Going To California」はマンドリンを用いたアコースティックで温もり溢れる演奏をじっくり聴かせます。優しいメロディと演奏に癒されます。続く「That’s The Way」もアコースティックで牧歌的。雄大な大自然が目に浮かびます。終盤のタンバリンがこれまた親しみやすい感じ。続いて14分弱にも及ぶ「Whole Lotta Love」メドレー。序盤は所々で演奏の足並みがブレてますが、メタリックな演奏は良い感じ。メドレーではロックンロールの先人たちのカバー「Boogie Chillun’」、「Fixin’ To Die」、「That’s Alright Mama」、「A Mess Of Blues」を内包しています。ドスンドスン響くドラムがド迫力ですね。ラストは「Thank You」。ジョーンズのオルガンが印象的なこの楽曲、本ライブではイントロが壮大でドラマチックな印象を抱きます。
 
 
 そして『The Complete BBC Sessions』で追加されたDisc3ですが、Disc1とDisc2の公演を中心に未収録だった楽曲が纏められています。正直オマケ感が強いですね。
 まずは「Communication Breakdown」ですが、Disc1から通算で4テイク目。イントロが若干長めに演奏されています。そして、これもやはり終盤で即興演奏を交えています。続いて「What Is And What Should Never Be」の2テイク目。これもDisc1のものと同様、スタジオ録音とそれほど変わらない印象。「Dazed And Confused」の3テイク目は11分に渡る演奏です。音質はあまり良くなく、間奏の幻覚的な演奏ではノイズが目立ってやや不快なのが残念です。「White Summer」はオリジナルアルバム未収録曲で、ペイジによるギターインストゥルメンタル。8分超に及びます。まったりと心地良く聴かせますが、途中からテンポアップしリズム隊が加わります。再びギターソロになり、エキゾチックな雰囲気を持ちつつ躍動感に満ちた演奏を展開。後半「Black Mountain Side」を弾いたかと思えば、そこに即興を交えて楽しませてくれます。続く「What Is and What Should Never Be」の3テイク目。拍手で始まったり、バスドラムが強烈に響いたり、ややエコーがかった演奏などライブ感が強いですね。プラントの歌も絶好調です。そして何回演るんだという「Communication Breakdown」は通算5テイク目。笑 録音状態の違いか他のテイクより迫力のある音なのですが、歌も演奏もややラフで緊張感に若干欠ける感じです。
 ここからラストまでの3曲はブート並に音質がガクッと落ちます。3テイク目となる「I Can’t Quit You Baby」はノイズまみれののっぺりした音にキンキン鳴るギターなど、やはり音質の悪さが気になってしまいます。続いて「You Shook Me」の3テイク目。泥臭くてゆったりしているものの、音の悪さで暴力的な印象も受けます。そして最後にオリジナルアルバム未収録曲「Sunshine Woman」。グルーヴに満ちた楽曲で、演奏はハードでありながらもハーモニカやピアノなど賑やかで楽しげな雰囲気。音の悪さが残念でなりません。
 
 
 複数のラジオ出演での演奏を纏めたものなのでしょうがないのですが、「Communication Breakdown」に至ってはトータル5テイクも入っていたり、コンピレーション盤としての側面がかなり強いです。Discにより出来にバラつきはありますが、Disc2は完成度が高いです。

The Complete BBC Sessions
Led Zeppelin
 
How The West Was Won (伝説のライヴ)

2003年

 本作は1972年に行われた米国でのライブを収録した作品です。何故30年も経ってからの発表だったのか…。
 プロデューサーも兼任しているジミー・ペイジによってスタジオ盤はこだわって作り込まれた感じがありますが、ライブは粗いながらも迫力ある演奏が展開され、スタジオ盤とは違った顔を見せてくれます。本作でのジョン・ボーナムの爆音ドラムを聴いたとき、スタジオ盤ではミックスでかなり音を抑えているのだなとわかります。本作は3枚組でトータル2時間半にも及ぶため、聴くにも気合いが必要になりますが(1枚ずつなら40~60分なのでそこまででもないですが)、この凄まじい演奏に圧倒されます。
 
 
 1枚目は「LA Drone」という短いSEを挟んで、ジョン・ポール・ジョーンズのヘヴィなベースとボーナムの爆音ドラムが強烈な「Immigrant Song」で幕を開けます。ロバート・プラントの高らかな咆哮も印象的ですね。このド迫力の演奏を聴くとスタジオ録音のオリジナルが霞んでしまいますね。そして間髪いれず続く「Heartbreaker」。やはりスタジオ盤を大きく上回るパワーを感じます。一撃一撃が重たいドラムにメタリックなベース、そして印象的なリフを弾くギター。中盤ではペイジの即興的なギターソロを披露します。そして再びパワフルなバンド演奏に雪崩れ込み、2曲目にして既にテンションMAX。ノリノリでカッコ良いです。「Black Dog」はイントロに「Out On The Tiles」を引用。プラントの歌と、ドスンドスンと響く力強い演奏の掛け合いはスリリングですね。骨太なハードロック曲が並びましたが、「Over The Hill And Far Away」では牧歌的なギターに癒されます。サビメロのパワフルな演奏との静と動の対比も素晴らしい。またプラントの高音ボーカルも絶好調で、本作の魅力でもあるキャッチーなメロディはブレていません。そしてブルージーなナンバー「Since I’ve Been Loving You」。官能的な楽曲で、渋くムーディなギターと色気溢れるボーカルを中心にじっくりと聴かせます。後半のドラマチックな盛り上がりはアツいですね。名曲「Stairway To Heaven」はギターの繊細なアルペジオが美しい。リコーダーパートはキーボードで演奏しているのか、静謐で美しい音色に心が洗われるかのよう。美しいメロディを繰り返しながら徐々に盛り上がっていく展開、特にボーナムのドラムが入る瞬間はゾクッとします。原曲よりもダイナミックな演奏は感動的で、こみ上げてくるものがあります。余韻を残して続くのはアコースティック曲3連発。「Going To California」は牧歌的で美しいメロディに癒されます。メロディアスな歌も魅力的。雄大な自然が目に浮かぶ優しい「That’s The Way」に続いて「Bron-Yr-Aur Stomp」。小気味良いアコギと観客の手拍子によって盛り上がると、メロディを奏でるベースや力強いバスドラムがリズミカルで陽気な演奏で楽しませます。村のお祭りみたい。これらの優しいアコースティック曲によってライブ熱を少しだけ和らげて1枚目は終了。

 2枚目は4曲しかありませんが、即興演奏を交えて大作に仕上がっています。25分もある「Dazed And Confused」はジョーンズのベースが音階を刻んで下支え。どよーんと怪しげに始まり、その後加速する展開で好き勝手に暴れ始めるボーナムのドラム。そこから即興へと突入し、プラントも手持ち無沙汰になることなくアドリブで合わせています。続いてバイオリンの弓でギターを弾くペイジが長尺のソロを聴かせます。12分過ぎに一度原曲のメロディが戻ってきますが、そこからまた即興を展開。途中「The Crunge」を演奏し始めますが、これも原曲よりパワフルでカッコ良い。徐々にテンポアップし緊張感を極限まで高めると原曲が戻ってきます。ラストもこれでもかと引っ張りますが、ZEPの即興演奏ってスリリングで飽きないんですよね。続いて「What Is And What Should Never Be」。アンニュイな歌をメロウな演奏で聴かせますが、サビでのパワフルな演奏にぶっ飛ばされます。やはりボーナムのドラムが強烈。「Dancing Days」はリフが荒っぽいですね。キャッチーなスタジオ盤とは少し異なり、力強くスリリングな印象に仕上がっています。そして即興を交えて20分近い「Moby Dick」。ヘヴィでダーティなギターリフでカッコ良く幕開けた後、ボーナムが長尺のドラムソロを展開します。ド迫力の演奏ですが、ドラムソロだけで15分以上続くのは流石に長すぎてちょっとだれます…。

 3枚目も4曲だけですが、メドレーによってトータル23分にまで肥大化した「Whole Lotta Love」が聴きどころ。1曲目「Whole Lotta Love」はイントロから切れ味抜群で非常にスリリングです。原曲では官能的な間奏パートですが、ここではスペイシーな印象。そこから即興演奏や色々な楽曲を仕込んだメドレーが始まり「Boogie Chillun」、「Let’s Have A Party」、「Hello Mary Lou」、「Going Down Slow」といったブルースやロックンロールの先人たちのカバー曲を繰り広げます。これらがパワフルな演奏だったりキャッチーな歌メロだったりで楽しませてくれるんです。そしてラストに思い出したかのように「Whole Lotta Love」のメロディに帰結してメドレーを締め括りますが、時間が経つのを忘れるくらい楽しい時間を過ごせます。続いて軽快な代表曲「Rock And Roll」。ノリノリのロックンロールですが、演奏(特にドラム)はヘヴィでスリリングです。ここでテンションを上げて「The Ocean」へ。どっしり安定感のあるロックを聴かせます。ボーナムの力強いドラムは勿論ですが、意外にヘヴィなジョーンズのベースも聴きどころです。そしてラストは「Bring It On Home」。「Whole Lotta Love」で始まり「Bring It On Home」で締めるという、このDisc3は『レッド・ツェッペリン II』みたいですね。プラントがハーモニカを吹き鳴らし、渋くもノリの良いブギーを聴かせた後、ペイジのヘヴィなリフを皮切りにスリリングなハードロックへ。即興的な演奏も交えつつ、最後までカッコ良いライブで魅せてくれます。
 
 
 スタジオ盤では緻密な計算のもと作られた作品を見せてくれますが、ライブではラフさを持った激しい一面を見せ、つくづく魅力的なロックバンドだなと思います。

 ちなみに、2005年に英国のラジオ曲が行った企画で、各演奏パートでNo.1プレーヤーを投票して架空の究極バンドを作ろうというものがありました。その結果、ボーカリストにはロバート・プラントが1位に選ばれ、ギタリストにはジミー・ペイジが、ベーシストにはジョン・ポール・ジョーンズが、ドラマーにはジョン・ボーナムがそれぞれ1位に選ばれ、夢の究極のバンドは既に実在していた…という結果になったのも話題になりました。

How The West Was Won
(2018 Remastered)
Led Zeppelin
 
Celebration Day (祭典の日(奇跡のライヴ))

2012年

 2007年12月10日、ロンドンのO2アリーナにて、一夜限りのレッド・ツェッペリン再結成。
 1985年にもロバート・プラント(Vo)、ジミー・ペイジ(Gt)、ジョン・ポール・ジョーンズ(B/Key)の3人にフィル・コリンズを迎えて再結成を果たし、その後も何度か再結成はしていたみたいです。1988年の再結成では亡きジョン・ボーナムのドラマー枠に彼の息子ジェイソン・ボーナムを迎えています。息子が亡き親父の意志を継ぐ…とてもアツいじゃないですか。ジェイソンは生粋のZEPマニアで、ブートレッグを聴き込んで父のプレイをものにし、またZEPのコピーバンドでドラマーも務めています。2007年の再結成もジェイソンを迎えた4人のラインナップ。
 デビュー時より所属していたアトランティック・レコード、そのレーベル創始者アーメット・アーティガンの追悼コンサートということで、メンバーのやる気も満ちていました。6週間のリハーサルを経て、そして1日限りの再結成を果たしたのでした。世界中のファンから幸運にも抽選に選ばれたのは1.8万人。羨ましいですね。
 
 
 Disc1、デビュー作の1曲目と同じ「Good Times Bad Times」でライブ開幕。モダン化した音に加えて原曲よりキーが低いので、最初の一音がより重く感じますね。プラントの歌声は老いて枯れてしまいましたが、高音が出ていなくてもそこまで悪くはありません。続く「Ramble On」ではイントロから大人しくなり、瞑想的というかじっくり聴かせる感じ。ドラムが心地良いですね。サビでの盛り上がりについては爆発力はやや弱めな印象です。「Black Dog」はキーを下げた歌で始まりますが、ノリの良い演奏のおかげかかなり楽しめます。ファンキーな演奏は抜群のグルーヴ感を放ちますが、ペイジとジョーンズのコンビネーションに加えて、ジェイソン・ボーナムもメンバーにしっかり馴染んでいる証拠でしょう。「In My Time Of Dying」は気だるげかつ重たい演奏を繰り広げます。中盤からは緊迫感を増し、警告音のようなギターにグルーヴィかつ重いベース、バタバタとしたドラムとスリリングな演奏で楽しませてくれます。「For Your Life」は『プレゼンス』より。原曲は比較的単調な印象も抱くのですが、こちらは生演奏でズシンと重量感があり、中々良い感じです。「Trampled Under Foot」はジョーンズの鍵盤が活躍する、ダンサブルでノリノリな1曲ですね。中毒性のある迫力の演奏が繰り広げられます。あえて難点を言えば歌が少しスカスカな感じで、テープを流してコーラスを補強して欲しかったところ。ですがノリノリの楽曲を聞いているとだんだん気にならなくなってきます。「It’s Nobody’s Fault But Mine」ではメタリックなリフが強烈。これもモダン化したメタリックな音で聴くからか、原曲より迫力がある気がします。続いて「No Quarter」。ジョーンズの弾く鍵盤がダークかつ神秘的な雰囲気を放ち、聴いていると吸い込まれていきます。幽玄で瞑想的な鍵盤は他のライブ演奏と比べても魅力的なのでひたすら浸りたいのですが、時折入るペイジの歪んだギターがちょっとうるさいかも。笑

 ここからDisc2、ライブは後半パートへ。ペイジのブルージーなギターで「Since I’ve Been Loving You」が始まります。プラントの歌も終盤高音を出せていたり、老いをあまり感じさせない良い仕上がりです。「Dazed And Confused」はライブだと即興を交えて肥大化する楽曲ですが、今回は12分弱。原曲よりキーが低いのでどんより沈んでいく感じです。モダンな音なので当時より泥臭さは少し薄れるものの、ペイジのギターが生み出す間奏での幻覚的な演出は流石。加速パートのうねるようなベースも強烈ですね。そして名曲「Stairway To Heaven」。原曲も哀愁に満ちていますが、キー下げと嗄れ声によって哀愁に強い渋みを纏っていて、しみじみと聴くことができます。スリルも演奏の質も当時には敵いませんが、ここで聴ける渋くて切ない感覚はこれはこれで魅力的で、この年齢だからこそ出せる味だと思います。続いて本ライブでは数少ない疾走曲「The Song Remains The Same」。これはフレッシュさが売りの楽曲なので、老いにより枯れた印象が強いですが、ジェイソン・ボーナムの生み出す跳ねるようなビートがとても心地良いです。「Misty Mountain Hop」はポップな1曲。ヘヴィな音ながらも跳ねるようにキャッチーなメロディに魅せられます。プラントの歌もご機嫌ですね。そして続く名曲「Kashmir」。モダンな音でこの重厚な楽曲が聴けるのが本ライブ一番のポイントだと思います。イントロから緊迫感に満ち、メタリックなサウンドで迫力満点。プラントの歌も好調で、渋い漢の哀愁を醸し出します。終盤の異様に緊迫したドラムも、親父の血をしっかりと受け継いでいますね。全体的にカッコ良いです。
 ここからはアンコールだそうですが、CDだと前曲からそのままの流れで続くような編集がなされています。「Whole Lotta Love」はメドレー化することの多い楽曲ですが、ここでは間奏が長尺化するだけで別の楽曲は差し込んできません。プラントがご機嫌に歌っています。そして2回目のアンコールとなる正真正銘のラストは「Rock And Roll」。キーが下がっていても、老いていても、軽快なドラムを皮切りに始まるノリノリの演奏を聴くとやっぱりワクワクするんですよね。素晴らしい再結成ライブでした。
 
 
 個人的には唯一のほぼリアルタイム体験で、この2007年の再結成で盛り上がっている頃にZEPを知り、それからオリジナルアルバムを聴き始めました。再結成が無ければZEPに触れるのはもっと先だったかもしれません。2012年リリースの本作もリアルタイムで買えた唯一の作品だったりします。
 さて本作ですが、(ブートでは聴けるのかもしれませんが)後期楽曲の数々をライブ演奏で聴けることが大きく、特に「Kashmir」が嬉しいです。それと「No Quarter」も出来が良くて魅力的。

 このライブ以降ペイジとジョーンズは再結成での活動に乗り気になりますが、プラントは頑なに拒否。ジェイソンの実力は大いに認めつつも、「(大親友だった)ジョン・ボーナムと同じではないからZEPをやってるふりは出来ない」とのこと。

Celebration Day
Deluxe Edition (2CD + Blu-ray + DVD)
Led Zeppelin
Celebration Day
Standard Edition (2CD + Blu-ray)
Led Zeppelin
Celebration Day (2CD)
Led Zeppelin
 
 

関連アーティスト

 ジョン・ポール・ジョーンズのソロ活動。

 
 ジミー・ペイジと、元ディープ・パープル/ホワイトスネイクのデヴィッド・カヴァーデイルによる1作限りのコラボ。
 
 レッド・ツェッペリンのトリビュートバンドは数多くありますが、全員女性のガールズバンドです。
 
 
 類似アーティストの開拓はこちらからどうぞ。