🇯🇵 パスピエ

レビュー作品数: 11
  

スタジオ盤①

インディーズ時代

わたし開花したわ

2011年 1stミニアルバム

 パスピエは日本のロックバンドです。作曲編曲を手掛ける東京藝術大学出身の成田ハネダ(Key)と、作詞やアートワーク全般を手掛ける大胡田なつき(Vo)を中心に、三澤勝洸(Gt)、露崎義邦(B)、岸本篤志(Dr)も加えた5名で2009年に結成しました。バンド名は成田が好むドビュッシーの『ベルガマスク組曲』第4曲「パスピエ」より。自主制作盤『ブンシンノジュツ』リリース前後で岸本が脱退、後任のやおたくや(Dr)が本作以降2017年までドラマーを務めます。
 ニューウェイヴやシンセポップに影響を受けた、少しひねたポップ。タイトルは回文になっていますが、他のいくつかのアルバムにも同様の回文タイトルが見られます。またジャケットアートは大胡田が担当。

 オープニング曲は「開花前線」YMO等のニューウェイヴに影響を受けたという成田が、イントロから時代を感じさせるシンセサイザーを響かせます。テンポが速く刹那的な印象を持たせるリズム隊の上で、ゆったりと余裕を持って歌う大胡田の歌唱は浮遊感に溢れ、メロディの良さも相まって心地良いです。続く「電波ジャック」はレトロゲームのようなちゃっちいシンセが楽しげな音色を奏で、どこか懐かしくてワクワクさせます。そして大胡田のボーカルはYUKIのよう。勢いあるアップテンポな演奏が爽快で、かつキャッチーなサビメロが強く耳に残る名曲ですね。「あきの日」はファンクやシンセポップを融合したようなリズミカルな演奏をバックに、歌メロはどこか和風要素も感じさせる無国籍な感じの楽曲ですね。シンセが前面に出ているものの、間奏では後ろで三澤のギターも時にアツく、時に渋い音色を奏でています。「チャイナタウン」は躍動感のある楽曲で、暴れ回る露崎のベースに、跳ねるようなやおのドラムが爽快なビートを刻みます。チャイナ要素はタイトルほどは感じませんが、ノリが良くて楽しい楽曲です。ギターソロもアツい。続いて「パピヨン」は浮遊感のあるシンセサイザーが際立つ楽曲で、キラキラと幻想的な感覚を味わえます。そして「真夜中のランデブー」は疾走感のある楽曲です。華やかで分厚いシンセが、美しくもどこか陰のある雰囲気を作り出します。透明感のあるサビメロは、煌めく夜空の下で駆け抜けるような感覚で素敵です。「うちあげ花火」は途中までシンセが控えめで、テンポは速いのにゆったりとした譜割りということもあってか、大胡田の浮遊感あるボーカルの存在感が際立ちます。サビではシンセがセンチメンタルな音色を奏で、切なさを誘います。ラスト曲は「夕焼けは命の海」。静かでドリーミーな子守唄のよう。途中からリズム隊が加わりますが、メロウで落ち着いた雰囲気は変わらず、ゆったりと心地良くアルバムを終える…かと思いきや、終盤に力強い演奏が一瞬だけ場をかき乱して驚かせます。

 8曲入りトータル35分ほどでミニアルバム扱いですが、結構充実した内容になっています。わざとらしいシンセはどこか懐かしく、でも真新しさも内包した魅力的なポップソングが詰まっています。

わたし開花したわ
パスピエ
 

メジャーデビュー

ONOMIMONO

2012年 2ndミニアルバム

 成田ハネダ(Key)、大胡田なつき(Vo)、三澤勝洸(Gt)、露崎義邦(B)、やおたくや(Dr)の5人体制でワーナーミュージック・ジャパンよりメジャーデビュー。前回に続く回文タイトルで、楽曲的にはニューウェイヴだけでなくプログレのエッセンスも取り入れています。

 アルバムは「トロイメライ」で幕開け。成田の煌やかなシンセや大胡田の囁くような歌い方に、1990年代楽曲のような時代を感じさせますが、ノリの良いビートを刻むリズム隊が加わると不思議と洗練された印象が生まれます。「デモクラシークレット」はハモンドオルガンやギターが唸り、更に時代を遡った1970年代ブリティッシュハードロックのような渋いイントロ。ですが歌が始まるとヘヴィなベースを軸に、ヒリヒリと焦燥感を煽るスリリングな演奏が繰り広げられます。サビメロの雰囲気はボカロ時代を経由した感じもあり、古臭く始まったはずなのにいつの間にか最先端も見せてくれます。時代感覚の振れ幅が大きくめちゃくちゃですが、スリリングで面白い楽曲です。「プラスティックガール」はイントロや間奏で三澤が味のあるギターを聴かせます。ゆったりとした雰囲気で、アンニュイで優しい歌メロが癒やしてくれます。「脳内戦争」は成田がギターを弾いています。ポストパンク的な焦燥感溢れるヒリヒリした演奏を繰り広げますが、時折入るシンセが攻撃性を弱めてパスピエらしさを見せます。また大胡田のアニメ声のようなボーカルは、この楽曲ではどこか投げやり気味です。「気象予報士の憂鬱」は変化に富んだプログレッシブな楽曲です。イントロはピアノの旋律が穏やかで、歌が始まるとまったりムード。ですがサビメロに向けてテンションを上げ、リズムチェンジして無理やり接合したようなサビメロ。キャッチーなのに楽曲構成の不自然さで奇妙なフックをかけてきます。2番がなく2分半の短さで終わる消化不良な感じも印象に残ります。続く「トリップ」もプログレ要素が含まれています。3拍子のゆったりとしたテンポで、包み込むように心地良い音の海に浸っていると、突如テンポアップ。メランコリックな歌メロを中心にぐんぐん突き進んでいきます。「最終電車」は成田の弾く鍵盤が心地良く、そして徐々に高揚感を煽っていくやおのドラムが良い感じ。憂いのあるメロディも魅力的で、恋心を秘めた歌詞を歌う大胡田の歌い方もキュートです。最後は「ただいま」で、ゆったりとした楽曲には郷愁を誘う切なさと温かさが滲み出ています。三澤のギターソロも胸に染み入りますね。ラストの「ララララ〜」の反復は壮大な雰囲気。

 前作もひねくれポップな楽曲が溢れていましたが、今作においては実験的な要素が強くて、更にひねた感覚が増しました。キャッチーさは少し控えめな印象です。

ONOMIMONO
パスピエ
 
演出家出演

2013年 1stアルバム

 上から読んでも下から読んでも『演出家出演』。パスピエのメジャー1stフルアルバムです。ニューウェイヴを軸としてプログレや和風要素も取り入れ、ボーカルはアニメ声でフワフワしているという独特のポップセンスを見せてくれる本作。個人的には2020年に最も回数聴いた作品で、お気に入りの1枚です。UNISON SQUARE GARDENのトリビュートアルバムで初めてパスピエに触れ、「はいからさん」でドハマりした結果、本作にもハマりました。
 ちなみに初回限定盤はデジパック仕様で、仕掛け絵本のような歌詞カードが特徴的です。

 オープニング曲「S.S」はイントロから高揚感を煽ります。成田ハネダのテロレロテロレロ鳴る鍵盤に、躍動感溢れるリズム隊。歌が始まると露崎義邦の跳ねるようなベースと、心地良さと気持ち悪さの入り混じった鍵盤の幻覚的な音色が酔いそうな感覚を生み出します。そして大胡田なつきのフワフワとしたボーカルが歌うメロディがキャッチーで耳に残るんです。続く「名前のない鳥」は音数が少なく、やおたくやのドラムを軸に様々な楽器が散逸的に鳴っていますが、キャッチーなサビメロではこれらがハーモニーを奏でるんです。アンニュイな歌も良い。そしてメジャー1stシングル「フィーバー」は前半のハイライト。サイケじみた幻覚的なパイプオルガンがイントロから強いインパクトを放ち、ゴリゴリ唸るベースや焦燥感を煽るドラムが疾走。そして自由奔放な歌も爽快で、サビの「フライデイナイトくらいはフィーバーしたっていいじゃん」の部分は、バックの酔いそうな演奏も相まってトリップ感が凄いです。「シネマ」は重厚な旋律を軽いシンセが奏でる雰囲気にエイジア等のプログレポップをなんとなく想起させます。歌メロは憂いを帯びていて、思わず口ずさみたくなるメロディアスなサビメロはポップセンスが光ります。続いて「ON THE AIR」はドリーミーな雰囲気で幕開け。歌と鍵盤は子守唄のように穏やかなのに、リズム隊は高速で刻む(しかもベースはかなり骨太)というアンバランスさで、そのリズム隊に引っ張られるかたちで楽曲はどんどん勢いづいていきます。「くだらないことばかり」もキラキラとした時代を感じさせるキーボードがドリーミーな雰囲気を作りますが、ゆったりとしたテンポでもリズム隊はパワフルです。「デ・ジャヴ」はジャジーでメロウな雰囲気で始まりますが、途中からテンポアップ。哀愁漂うメロディはノスタルジックですが、スウィングするようなリズム隊はご機嫌ですね。徐々に明るくなってきますが、最後に序盤のメロウな空気が戻ってきます。そして「はいからさん」は私がパスピエにハマるキッカケとなったキャッチーな名曲です。ダイナミックなドラムをはじめ、躍動感溢れる演奏がワクワクさせてくれます。この楽曲では珍しく、成田の鍵盤よりも三澤勝洸のギターが目立ちますね。疾走感のある演奏は爽快です。そして和風の香りが溢れ出る歌詞は「ハイファイはいからさん」などの語感の良いフレーズの嵐で、これに加えてキャッチーなメロディは中毒性が高く、強烈に耳に残るんです。続く「△」は「さんかっけい」と読みます。フュージョンのような演奏をバックに、アニメ声で可愛らしく歌う詰め込み気味の歌詞は小気味良くて、とても耳触りが良いんです。これも大好きですね。「ワールドエンド」は三澤のギターが緊張感を高め、そこに1980年代のような重厚なシンセサイザーが彩ります。バンド演奏はスリリングなのですが、成田のシンセと大胡田の歌は包み込むような心地良い浮遊感を与えてくれます。ラスト曲「カーニバル」は、囁くように静かに始まりアンニュイな雰囲気。ですが本来サビにもっていくであろう場面でそうはせず、セオリー通りにいかない予測不可能な楽曲展開。さらに華やかなムーグシンセ(?)にプログレポップ的な雰囲気を感じます。

 成田の弾く時代錯誤の煌やかなシンセや、大胡田のクセのある歌声が、時に酔いそうなほどのトリップ感を生み出して強い中毒性を生み出します。ひねた感覚の、勢い溢れるポップソングが詰まった素晴らしい傑作です。

演出家出演
初回限定盤 (スペシャルパッケージ仕様)
パスピエ
演出家出演
通常盤
パスピエ
 
幕の内ISM

2014年 2ndアルバム

 タイトルの回文縛りは無くなりましたが、縦書きにしたら左右対称になっているのでしょうか?タイトルにある「幕の内」が示すようにバラエティに富んだ作品に仕上がりました。前作では控えめだったギターの出番も増え、バンドとしてのバランスも取れてきている印象です。
 ジャケットアートは一貫して大胡田なつきが担いますが、これまでのシンプルなデザインとは異なり色彩豊かに仕上がっています。歌詞制作においても、今回はリハーサルで楽曲を聴いてから思い浮かんだ色や言葉を書き連ねたのだとか。

 アルバムは「YES/NO」で始まりますが、イントロから勢い溢れる爽快なリズムビートに乗せて、キレのあるギターと寒々しいシンセが高揚感を煽ります。リズミカルな演奏に、高音キーで歌う大胡田のボーカルが存在感を見せます。サビメロであえて楽器をさっ引いてボーカルを更に際立たせています。「トーキョーシティ・アンダーグラウンド」はローテンションで始まりますが、途中から一気にテンションを上げて加速し緊張が張り詰めます。緩急のギャップが強烈ですね。勢い溢れるスリリングなサビメロは、大胡田の歌い方かメロディなのか、どこか中華っぽい雰囲気も感じさせます。「七色の少年」はピアノに絡む、三澤勝洸のエモーショナルなギターがアツい。比較的テンポの速い演奏ですが、感傷的な歌は譜割りのせいかゆったりした印象も受けます。サビメロは爽やかですね。「あの青と青と青」は、成田ハネダのシンセ使いに彼の敬愛するYMOを感じます。テクノポップ風の楽曲は少し中華っぽいフレーズで装飾され、大胡田の歌には和風要素が混じっていますね。「ノルマンディー」は露崎義邦のベースが楽曲の軸を組み立てます。ノルマンディと歌いながらもフランスではなく、アジアンテイストかつ幻想的な演奏に和風っぽい歌メロが乗ります。ピアノの弦の上にセロハンテープを並べて、鍵盤を叩くとテープがカランと鳴るような工夫がされているのだとか。間奏は不協和音が混じって不気味さがあります。続く「世紀末ガール」はアグレッシブな疾走曲。バンド演奏と歌が掛け合いを行ったあとに爽快に駆け抜けます。速弾きギターソロに、狂気的なピアノやスペーシーなシンセなど音色も豊かです。「とおりゃんせ」は個人的に本作のハイライト。残響音が心地良いギターを響かせるイントロ。そして歌が始まると和の要素を強めます。大胡田の歌い方も歌詞も和風の香り。口ずさみたくなるようなキャッチーな歌メロに加えて、やおたくやのドラムが爽快なビートを刻んで高揚感を掻き立てます。「MATATABISTEP」はわざとらしく華やかなシンセに加え、ファンキーでグルーヴに満ちた演奏でとてもダンサブルです。ノリの良い楽曲にぴったりの可愛らしい歌はポップさに溢れていますね。そして「アジアン」はリズム隊が跳ねるようなビートを刻みます。キレッキレでノリが良い演奏が楽しいですが、ポップな歌も魅力的。可愛らしい歌唱で、これも歌詞が和風っぽいです。「誰?」はプログレ風のポップ曲。明るく脳天気なポップ曲はビートルズっぽさも感じさせますが、間奏がヘヴィになってきたなと思えば突如リズムチェンジ。変拍子からのリズムチェンジの嵐で、終始カラッとした歌とは対照的に演奏は割と混沌としています。続く「わすれもの」の序盤は落ち着いていて、包み込むようなぼんやりした音像にゆったりと浸ることができますが、徐々にテンポアップしてサビメロではリズムチェンジ。全体的にゆったりはしているものの、トリッキーな演出でフックをかけてきます。パイプオルガンの音色にプログレっぽさが出ている気がします。ラスト曲「瞑想」は優しく伸びやかに歌う感傷的なメロディが美しいですね。煌めいていて透明感のある演出は、星空を駆け抜けるかのような印象を受けます。

 ニューウェイヴを軸として、ジャケットアートのような和風や中華要素を強めた印象。キャッチーなメロディで取っつきやすく、魅力的な作品です。

幕の内ISM
初回限定盤 (CD+DVD)
パスピエ
幕の内ISM
通常盤 (CD)
パスピエ
 
娑婆ラバ

2015年 3rdアルバム

 国外向けのミニアルバム『OZASHIKI MUSIQUE』のリリースを挟んで、3作目のフルアルバムとなる本作は自身初となるオリコントップ10入り(週間8位)を果たしました。ちなみにタイトルは「シャバラバ」と読みます。
 アニメ『境界のRINNE』のタイアップを果たし、ED曲「トキノワ」や後期OP曲「裏の裏」を収録。全体的にキャッチーなつくりな仕上がりになっています。また、本作を伴うツアーで日本武道館単独公演を実現しています。

 イントロもなく始まる「手加減の無い未来」で一気に引き込みます。歌メロを支える輪郭のハッキリしたベースやせっかちなドラム、シンセストリングスなどのカラフルな音色で彩る成田ハネダのシンセが、楽曲を賑やかに飾り立てます。そして歌メロがとてもキャッチーで耳に残りますね。続く「裏の裏」は弾けるように賑やかで騒がしいイントロから高揚感を煽ります。歌が始まるとベースがバックで縦横無尽に動き回り、ドラムが4つ打ちの爽快なビートを刻みシンセが華やかに彩る、勢いに満ちた演奏でスペイシーな印象です。大胡田なつきの歌はふわふわとしていて気持ち良い。「アンサー」もキャッチーで華やかなイントロですが、少しひねた感じの可愛らしいポップメロディはこれまでのパスピエっぽい。そしてメロディに薄っすら和風要素も感じられます。「蜘蛛の糸」はダンサブルな1曲。ノリの良い演奏で、成田のシンセと絡む三澤勝洸のチャカチャカ鳴るギターが良い感じ。そして歌メロがとても印象的で、キャッチーさの中に妖艶さがあり、そしてサビメロで低くなるという独特の展開は強いインパクト。「術中ハック」は1980年代風のシンセが哀愁を感じさせ、ギターやベースは緊迫した空気を作り出します。若干和風じみた妖しげな歌メロが、ヒリヒリした演奏と合わさってスリルを生み出しています。間奏のギターとシンセのユニゾンがエモい。「贅沢ないいわけ」は冬を連想させる透明感のあるサウンドにメロディアスな歌メロが特徴的で、ここだけ活かせばしっとり聴かせる楽曲になりそうです。ですがそうさせず、疾走感ある演奏でぐんぐん駆け抜けていく演奏はパスピエらしいですね。逆に、続く「花」は彼らには珍しくバラード調。しっとりとしたピアノと歌で始まり、途中加わるリズム隊が歌を盛り上げます。じっくり聴かせるメロディアスな歌が良い。アウトロの昇天するかのようなギターソロも魅力的です。「ハレとケ」は和風のリズミカルな楽曲で、ひねくれポップな独特のメロディを聴かせます。2番以降はやおたくやのトリッキーなドラムが特徴的で、間奏は特に複雑なリズムを刻みます。「つくり囃子」は色鮮やかなシンセとヘヴィで力強いリズムが掛け合い、ダンサブルな演奏です。そして歌詞とメロディは和風な香り。そんなごった煮の楽曲、後半はプログレ(どことなくイエス)っぽい気もするんですよね。そして「ギブとテイク」はコミカルな疾走曲。キュートで明るく突き抜けるボーカルと、テンポ良い演奏が爽快に駆け抜けます。「トキノワ」は流石アニメタイアップが付いただけあり、非常にキャッチーなイントロで幕開け。シンセやギターが飾り立てます。歌が始まると、細かく刻む高速ドラムが煽るように爽やかに駆け抜けます。高音キーな歌もキャッチーですね。そして最後は「素顔」。優しい歌唱を、リズミカルなオルゴールサウンドと行進曲のようなリズム隊が楽しく盛り上げます。

 和風やひねくれポップな要素も残しつつ、タイアップを意識したのかキャッチーで賑やかな演奏が目立ちます。ダンサブルな楽曲も増えました。

娑婆ラバ
初回完全限定生産盤 (CD+DVD+グッズ)
パスピエ
娑婆ラバ
通常盤 (CD)
パスピエ
 
&DNA

2017年 4thアルバム

 長らくアーティスト写真でメンバーは顔を隠してきたものの、『永すぎた春/ハイパーリアリスト』では顔を隠さないアーティスト写真を公開。心機一転を図ったかのようですが、本作を最後にやおたくやが脱退してしまうため、デビュー以来の成田ハネダ(Key)、大胡田なつき(Vo)、三澤勝洸(Gt)、露崎義邦(B)、やおたくや(Dr)の5人体制での最後の作品となってしまいました。
 逆から読んでもAND-DNAで、『演出家出演』以来の回文タイトルになっています。

 アルバムのオープニングを飾る名曲「永すぎた春」。ダイナミックなドラムとパワフルなベースが躍動感を生み出し、爽快に疾走します。そして大胡田の歌メロはかなり和風で、どこか懐かしくてが心地良いですね。強靭なリズム隊はさておき、なんとなく京都が思い浮かびます。「やまない声」は焦燥感に満ちたイントロが東方Projectっぽい気がする。笑 歌もシリアスな雰囲気、演奏も緊張が張り詰めたスリリングな疾走曲を展開します。続く「DISTANCE」は成田の分厚いシンセと三澤のミニマルなギターが幻想的な感覚を生み出します。AメロやBメロは比較的隙間があって若干円熟味を感じますが、サビの演奏は分厚いですね。「ハイパーリアリスト」は初期パスピエへの回帰が見られる名曲。レトロゲームのようなチープな音色のシンセにふわふわとしたボーカル、そして爽快なリズム隊というミスマッチな組み合わせが彼ららしくて魅力的です。跳ねるようなリズムビートとグイグイ牽引するベースはノリノリで、そして後半のキレッキレなギターもカッコ良い。「ああ、無情」はアコギにエフェクトをかけた独特な音色が心地良い響きを出しています。三澤が影響を受けたというスミスっぽさが少し出ているような気が…でも和風の歌メロが強くて、スミス感全開ではないですね。途中エレキに持ち変えるとエモーショナルな音色で魅せます。また、露崎のゴリゴリベースも結構際立っています。「メーデー」はイントロからド派手なシンセで惹きつけます。ですがカッティングギターにゴリゴリベース、疾走感のあるドラムも負けていません。そしてキャッチーなサビメロも耳に残ります。「マイ・フィクション」は素朴な雰囲気の歌メロに、スウィングするような演奏もご機嫌な感じ。シンセだけは少しひんやりとした質感です。「スーパーカー」は透明感のあるピアノを除けば、包み込むような幻想的な雰囲気。憂いのある落ち着いた歌唱は円熟味を感じます。終盤は勢いづいていきますが、歌は終始落ち着いていますね。「夜の子供」はゆったりとしてメロウな楽曲です。囁くように優しい歌声は子守唄のよう。続く「おいしい関係」は小気味良いビートが爽快で、変化に富んだやおのドラムを中心にリズミカルな演奏で楽しませてくれます。ちょっとトリッキーな演奏はプログレっぽいですが、歌はポップで可愛らしいです。「ラストダンス」はダンサブルなリズム隊と、包み込むような幻想的な音色が心地良い。そして優しい歌唱で浮遊感があります。終盤は落ち着いた楽曲が増えてきましたが、ラスト曲「ヨアケマエ」は躍動感のある楽曲です。和風の旋律を奏でるピアノが魅力的。そして跳ねるような演奏に合わせ、歌も弾けるような感覚です。ぶっ飛んではいませんが、リズミカルで楽しげな1曲です。

 彼らのルーツであるニューウェイヴ色が再び強まった、原点回帰な作風です。ファルセットを多用した大胡田の歌い方の変化もあるのか、円熟味が増したというか、ぶっ飛んだキャッチーさからは若干落ち着いたような印象も受けます。聴けば聴くほど味が出る感じ。

&DNA
初回限定盤 (CD+DVD)
パスピエ
&DNA
通常盤 (CD)
パスピエ
 
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