🇬🇧 The Libertines (ザ・リバティーンズ)

レビュー作品数: 3
  

スタジオ盤

Up The Bracket (リバティーンズ宣言)

2002年 1stアルバム

 英国ロンドンで結成されたガレージロックバンド、リバティーンズ。ガレージロック・リバイバルの代表的なバンドの1つで、ピート・ドハーティ(Vo/Gt)とカール・バラー(Gt/Vo)の2人が中心となって結成しました。2人のフロントマンがマイクを奪い合ったり喧嘩をするステージパフォーマンスが話題となって知名度を増していったそうです。最終的にメンバーにジョン・ハッサール(B)とゲイリー・パウエル(Dr)を加えた4人で2002年にデビューを果たします。
 全楽曲がドハーティとバラーの作曲ですが、ドハーティはスミスやジャム等から、バラーはヴェルヴェット・アンダーグラウンドやドアーズ、クラッシュ等から影響を受けているそうです。そんな本作は、元クラッシュのミック・ジョーンズをプロデューサーとして迎えています。

 開幕「Vertigo」で荒々しいギターサウンドを聴かせてくれるので痺れます。でもその音色に渋さも併せ持っている気がします。ボーカルはドハーティとバラーが奪い合っていますね。疾走感溢れる「Horror Show」ではハチャメチャに暴れ回り、ヘロヘロなボーカルに危うさを感じます。「Radio America」ではエレキギター主体の音色からアコースティックギターに持ち替えています。穏やかな楽曲ですが、サウンドには少し荒さがあったり。表題曲「Up The Bracket」は彼らの好むクラッシュの影響を感じられる、ロンドンパンクを彷彿とさせるナンバーです。サウンドは荒いんだけど、ギターに何故か渋さを感じる不思議。カッコいいんです。「Tell The King」はアコギとエレキが上手く絡み合って、穏やかな楽曲の中で良い味を出しています。1番をドハーティが、2番をバラーが歌います。あまりにもスリリングな演奏パートを楽しめる「Begging」や、哀愁あるサウンドを奏でる「The Good Old Days」も魅力的。そしてラスト曲「I Get Along」で気持ち良いくらいに疾走して終わります。

 初期衝動というか、勢い任せに作ったような荒々しさに1970年代のロンドンパンクを彷彿とさせます。でもサウンドプロダクションが良く、勢いをうまくパッケージして、危うさのある魅力的な作品に仕上がっています。

Up The Bracket
The Libertines
 

The Libertines (リバティーンズ革命)

2004年 2ndアルバム

 前作から本作までの間に、ピート・ドハーティがドラッグに溺れ、そのせいでメンバー関係にも亀裂が入ります。特にカール・バラーとの関係が悪化し、ドハーティが一時的にバンドを追い出されたり、ドハーティがバラーの留守宅に侵入して逮捕されるというトラブルが続きました。その後2人が和解して本作の制作に取り掛かりましたが、ドハーティのドラッグ中毒が再発。なんとかアルバム制作にこぎつけたものの、まともな状態でなかったドハーティのせいでギグをキャンセルし続けるわけにもいかず、ドハーティ抜きにバンドはギグを実施。ドハーティがそのままバンドを脱退したため、リバティーンズは2004年末に惜しくも解散しました。

 本作は前作に引き続きミック・ジョーンズのプロデュース。リリース後すぐに全英1位を獲得する人気ぶりでした。
 キャッチーな「Can’t Stand Me Now」で始まります。ヘロヘロで、でも色気のあるボーカルがメロディアスな歌を歌います。続く「Last Post On The Bugle」では高い緊張感と疾走感の中に哀愁があって、渋い。魅力的な1曲です。そして中盤での3連続の疾走曲群が良くて、勢いがあってキャッチーな「Narcissist」とその流れで続く哀愁のあるロックンロール「The Ha Ha Wall」、1分強のハチャメチャで荒々しいパンクナンバー「Arbeit Macht Frei」が良い感じ。強烈な攻撃力を持った「The Saga」も、破滅的な危うさがあって魅力を感じます。

 佳曲がいくつかありますが、出来では前作に若干劣る気がします。そして2004年の解散に伴い、これがリバティーンズのラストアルバム…でしたが、ドハーティとバラーはその後和解し、何度かの再結成ギグを実施。11年後、ついに新作を発表することになります。

The Libertines
The Libertines
 

Anthems For Doomed Youth (リバティーンズ再臨)

2015年 3rdアルバム

 11年ぶりの新譜となるリバティーンズの3rdアルバム『リバティーンズ再臨』。ジェイク・ゴスリングのプロデュース。
 ガレージロックやパンク的な荒さ、激しさや、ドラッグによる崩壊ギリギリの危うさは身を潜めました。前2作を期待するとガッカリかもしれませんが、音楽的な広がりを見せ、ポップセンスが光ります。

 「Barbarians」で始まります。怪しくプリミティブなサウンドから、渋くて色気のある、でもキャッチーな歌が展開されます。前2作のような若さに任せた荒々しさはなくて流石に落ち着いたものの、円熟味のある魅惑的な楽曲を聴かせてくれます。大人びた演奏を見せたかと思えば最後に熱くシャウトする「Gunga Din」。そして「Fame And Fortune」では、ひねたポップセンスとその声質にブラーを彷彿とさせます。パンク的な荒さとは無縁の、怪しくもポップな楽しい楽曲です。続いて表題曲「Anthem For Doomed Youth」はゆったりとしています。魅力的な楽曲が多い本作の中では、タイトルを背負うには少し地味な気もします。メロディアスで素敵な楽曲なんですけどね。「You’re My Waterloo」では美しいピアノのみをバックに、シンプルな演奏に哀愁のある歌が響きます。中盤からコーラスや他の楽器が加わって壮大になります。そして徐々に盛り上がる楽曲では「Iceman」、これが良いんです。アコギ1本で静かに優しい歌を聴かせながら、徐々に楽器が増えて壮大になっていく。演出だけでなく、元のメロディの良さがあってこその名曲です。円熟味のある疾走曲「Heart Of The Matter」は、やはり歌い方にブラーを感じます。「Fury Of Chonburi」は単調なギターリフ、暴れ回るベースやタイトなリズムを刻むドラムもカッコいい。でも何より不思議な魅力を放つのは哀愁のあるメロディか、語感のいい歌詞か。キャッチーな歌が耳に残ります。ラスト手前「Glasgow Coma Scale Blues」で、比較的ポップな楽曲が続く中でこれまでになかった緊張感を漂わせ、そしてラスト曲「Dead For Love」で絶望的に暗く、悲痛な叫びに心を痛めながらアルバムを終えます。

 リバティーンズをリアルタイムで味わった人には物足りない作品かもしれません。ただ幸か不幸か、私はリアルタイムの衝撃は知らず、3作とも比較的近い時期に耳にしました。そんな、思い入れがフラットな目線で本作を評価すると、これまでの作品で最も完成度が高く、ポップセンスが光る名盤だと思います。

Anthems For Doomed Youth
The Libertines
 
 
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