🇺🇸 Alice In Chains (アリス・イン・チェインズ)

レビュー作品数: 3
  

スタジオ盤

Facelift (フェイスリフト)

1990年 1stアルバム

 アリス・イン・チェインズは米国ワシントン州シアトルのバンドです。通称アリチェン。レイン・ステイリー(Vo/Gt)、ジェリー・カントレル(Gt)、マイク・スター(B)、ショーン・キニー(Dr)の4人で1987年に結成しました。同郷のニルヴァーナやパール・ジャムらとともにグランジブームを牽引しましたが、アリス・イン・チェインズ自体はヘヴィメタル畑の出身のため、メタルの範疇で語られることもあります。
 本作はデイヴ・ジェルデンのプロデュースによるアリス・イン・チェインズのデビュー作。ビルボードチャートでは最高42位だったものの、その米国で200万枚以上を売り上げています。サイケとホラーを混ぜ合わせたようなジャケットが不気味ですね。

 オープニング曲は「We Die Young」。重低音のよく響くメタリックなサウンドで、うねるような独特のグルーヴ感があります。そして呻くような歌唱が、楽曲と合わさりダーティな印象を強めます。僅か2分半ですがカッコ良い楽曲です。「Man In The Box」は引きずるようにヘヴィで、それでいてサイケデリックなサウンドがぐわんぐわんと揺さぶってきます。とても変な楽曲。レインの歌は気だるげですが、意外とメロディアスだったりします。続く「Sea Of Sorrow」はキーボードとギターリフでシンプルに聴かせるAC/DCっぽいイントロで始まります。序盤は気だるげですが徐々にテンポアップしていき、比較的ノリの良いロック曲になります。間奏でのギターソロも聴きごたえがあります。「Bleed The Freak」は哀愁溢れるブルージーなイントロから、ヘヴィなサウンドを展開。粘り気のあるボーカルや、ベースがゴリゴリ唸る重低音の効いたサウンドが魅せます。続いて、憂い帯びたギターが重苦しくも美しい「I Can’t Remember」は、歌が始まるとグルーヴ感抜群のヘヴィなサウンドを展開します。レインの表現力も豊かで、鬱々としたり哀愁漂う歌を聴かせたりします。「Love, Hate, Love」はひたすらダウナーな1曲。音数は比較的少なくも一音一音がズシンと響き、ダークで不穏な空気を助長します。鬱々とした歌は時折感情的に叫びます。結構怖い楽曲です。続いて「It Ain’t Like That」は重苦しいリフの反復が中毒性を生みます。そして重低音のよく響くこと。歌は意外とキャッチーだったりします。マイクのベースがゴリゴリ響く「Sunshine」を挟んで、「Put You Down」はノリの良いハードロック。ダーティなサウンドがカッコ良く、スローテンポな楽曲の多い本作の中ではテンポも良くてキャッチーです。そして「Confusion」でまた引きずるような重さと気だるげな歌に。暗鬱で哀愁が漂いますが、鬱屈した感情を爆発させるかのように時折激しくなります。「I Know Somethin (Bout You)」はファンキーな1曲で、グルーヴ感は抜群です。但し全体的に気だるげな本作では少し浮いている印象。そして最後は「Real Thing」。やけにリズムカルな楽曲ですが、レインの声質ゆえにダーティな印象を与えます。

 暗くて気だるく、かつ変なヘヴィメタルといった印象。幻覚的な中毒性のあるサウンドが続き、ハイになったかのようなノリの良い楽曲が時折出てきます。

Facelift
Alice In Chains
 

Dirt (ダート)

1992年 2ndアルバム

 前作同様にデイヴ・ジェルデンのプロデュース作。ブラック・サバスを更に重たくしたような、引き摺るように重く、スローテンポな楽曲の数々。鬱々としていて晴れることのない楽曲は気が滅入りそうになりますが、耳に残るメロディアスな作りでもあります。
 レイン・ステイリー(Vo/Gt)はヘロイン中毒によるリハビリ入院からの復帰明けでしたが、本作レコーディング時には再びヘロイン中毒に陥っていて、ハイな状態で録音されたものもあったとか。闇を抱えたヘヴィな本作は全世界で500万枚以上を売り上げました。

 「Them Bones」で強烈なシャウトから始まります。ヘヴィなギターリフは引きずるような鈍重さで、全体的に暗いハードロックといった感じです。非常にヘヴィなサウンドで歌も暗いものの、意外とメロディアスな印象です。「Dam That River」では少しだけテンポを上げて、でも重たいギターリフは健在です。ショーン・キニーのバスドラムもズシンと響きますね。続く「Rain When I Die」はマイク・スターの地を這うようなヘヴィなベースが強烈です。イントロは凄まじく重たく、それでいてサイケデリックでもあります。「俺が死ぬときには雨が降ると思う」と歌うレインは、2002年に薬物のオーバードーズで若くして亡くなってしまいますが、そんな彼の死と重ねるファンも多いようです。一転して「Down In A Hole」は、アコギとエレキギターが美しい音色を奏でる、哀愁漂う1曲。徐々にサウンドは重苦しくなりますが、メロディアスな歌をじっくり聴かせるバラードです。そして「Sickman」。重苦しいサウンドに、リズムチェンジを多用したプログレ的要素も併せ持つ変態的な楽曲です。ノリの良いパートと気だるくダウナーなパートを交互に繰り返すサウンドと歌で、躁鬱状態を表現しているかのようです。病んでいる感が強いですが、こういう楽曲って妙に耳に残ったりするんですよね。続く「Rooster」は、鬱々として気だるげですがサビでは激しくエネルギーを解放します。「Junkhead」は絶望の淵にあるような、重く暗いイントロが強烈に響きます。引きずり込まれるような強烈な重低音が深い闇へ誘います。そして表題曲の「Dirt」にはブラック・サバスを強く感じます。スローテンポで、うねるようなサウンド。そしてあまりに暗い。一聴しただけではタイトルを背負うほどのインパクトは感じませんが、聴けば聴くほど虜になる、地味ながら魅力的な1曲です。一転して「God Smack」は比較的ノリが良くてキャッチーなメロディです(とは言えリフは蹂躙するかのようにヘヴィですけどね)。サビでは開放感を多少感じられます。1分に満たないインタールード「Intro (Dream Sequence)/Iron Gland」は、ジェリー・カントレル(Gt)とスレイヤーのトム・アラヤの共作で、叫びはトム・アラヤによるもの。続く「Hate To Feel」はダウナーな3拍子からトリッキーなリズムを刻み出す、変態的な楽曲。あまりにすっきりしないリズムは流し聴きを許しません。「鬱病のビートルズ」の異名も持つアリス・イン・チェインズですが、「I Want You (She’s So Heavy)」にも通じますね。「Angry Chair」は呪術的な歌唱が不気味な1曲。ですがサビはかなりメロディアスです。そしてラスト曲「Would?」。グルーヴィなベース、重たいギター、比較的手数の多いドラム。サウンドも聴きごたえがありますが、メロディアスで哀愁の漂う陰鬱な歌メロも良い。最後は独特な終わり方で、中途半端な音で終わるというか、なんともむず痒い感じを残します。

 とてもヘヴィですが、メロディアスな楽曲も増えて聴きごたえがあります。グランジとヘヴィメタルの中間のようなサウンドで、どちらのファンにも刺さるであろう名盤です。

Dirt
Alice In Chains
 

Alice In Chains (アリス・イン・チェインズ)

1995年 3rdアルバム

 前作リリース後、薬物中毒の悪化を理由にマイク・スター(B)が脱退。後任にマイク・アイネズ(B)が加入しています。またレイン・ステイリー(Vo/Gt)の薬物中毒が悪化し、まともに歌えないことも多かったらしく、いくつかの楽曲はジェリー・カントレル(Gt)がボーカルを取っています。
 トビー・ライトをプロデューサーに迎えて制作された、バンド名を冠した本作。動物愛護団体からクレームの付きそうな、3本足の犬のジャケットが鮮烈ですね。『The Dog Album』や『The Dog Record』とも呼ばれているそうです。なお、日本では真っ白な背景にバンド名だけ打ったジャケットに差し替えられています。

 最初の1音から強烈な重低音を響かせる「Grind」で開幕。サウンドがとにかく重たい。ジェリーがボーカルを取りますが、エフェクトがかかると呻きのようで、エフェクトが外れると暗鬱だけど美しさも感じられます。続く「Brush Away」はイントロから不気味で、歌が始まるとダークで緊迫した雰囲気になります。メロディアスな歌を妖しげに、そしてとても気だるげに歌います。サウンドはメタリックで、マイクのゴリゴリとしたベースが強烈です。「Sludge Factory」はイントロから強烈に歪んだ低音が響きます。重たすぎるサウンドを主軸に、ファルセットが幻聴のように響き、ねちっこい歌がぐるぐると掻き回す…。サイケを極端にダークにした感じで、こんな病みそうな楽曲が7分も続くんです。ヤバい。「Heaven Beside You」はジェリーのボーカル曲。アコースティックなサウンドですが温もりはなく、救いのない暗さや哀愁、諦めのような印象を受けます。歌声も含めニルヴァーナっぽい雰囲気。続く「Head Creeps」はゴリゴリとメタリックで、緊迫しつつも暗鬱なサウンド。そして今にも爆発しそうな鬱屈とした歌が展開されます。「Again」はショーン・キニーのビート感のあるドラムが爽快ですが、対照的にボーカルはやる気のない気だるい歌唱。またギターリフは重たくて鋭利です。「Shame In You」はダウナーですが、メロディアスな楽曲を美しいコーラスで彩ります。破滅の美学といった感じでしょうか。気だるいムードが心地良かったりします。そして、テンポは遅いもののトリッキーで独特のリズムを刻む「God Am」を挟み、疾走曲「So Close」。ドラムは軽快ですが、うねるベースとギターが幻覚的で酔いそうな空間を作ります。そして軽快だったはずのテンポはいつの間にかスピードダウン…かと思えば再加速と、忙しい1曲です。「Nothin’ Song」は陰鬱な反復が続きますが、突如、妙にご機嫌なメロディに変わります。明らかに異常で、ラリっています。そして本作最長の「Frogs」は8分強。ひたすら鬱々として重たい。時折美しいメロディが出て来るものの、全体的に暗い雰囲気は晴れることはありません。最後の「Over Now」も7分の大曲。うねるグルーヴ感抜群のサウンドに、陰鬱だけどメロディアスな歌。そして終盤のギターはとても暗くて哀愁が漂うけれども美しい音色を奏でます。

 救いのない暗さと強烈な緊張感。聴いていると病みそうな楽曲ばかりですが、中毒性も強いです。ただ疾走感はなく、途中少し冗長な場面もあるかも。

 なお薬物中毒で衰弱していったレイン・ステイリーは、2002年に薬物のオーバードーズで死去してしまいます。アリス・イン・チェインズはフロントマンを失ってしまいますが、2006年にウィリアム・デュヴァールをメンバーに迎えて新作をリリースするなど、活動は継続しています。

Alice In Chains
Alice In Chains
 
 
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